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U-22落選をバネに水沼が執念のシュート、「結果にこだわる。成長するために」

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[6.12 J2第16節 湘南0-2栃木 平塚]

 栃木SCが湘南を2-0で下し、4位から2位に浮上した。前半12分にFWリカルド・ロボが味方のシュートのこぼれ球から今季3得点目、チームのリーグ戦通算100得点目を決めて先制に成功。試合の主導権を握ったが、若きアタッカーの執念が実った。

 PA右でロボのパスを受けたMF水沼宏太がドリブルで仕掛けて右足を一閃。「シュートを打ってリズムを作ることが大事だと思っていた。積極的に打っていこうと思った。バウンドさせてGKが取りづらいボールを意識していた」という言葉通り、低くて速いボールを蹴り込んだ。これは、さすがのGK西部洋平もキャッチできなかった。

「きょうのモチベーションに関しては、チームとしてすごく高かった。水戸戦に引き分けていたのもあった。雨の戦い方ができていた? チームとして前に放り込んで、セカンドを拾って、そこから仕掛けようとしていた。それが1試合通してできた」

 勝ち点1差で迎えた2位の湘南との対戦とあって、気合が入っていた。相手は昨季はJ1で、最近は3勝3分と6試合負け無しと好調だった。J1昇格を目標とする栃木にとって、倒しておかなければいけない相手。それだけに、チーム全体でモチベーションが高かったが、水沼はそれ以上だった。

 水沼はこの日、両軍あわせて2番目タイの3本のシュートを放った。数字以上に闘志あふれるプレーを随所に見せた。「60mくらいダッシュして、そこまで力を使えても、最後で使えなかったら何も意味がない。気持ちを乗せて、しっかり体で押し込むくらいの感じで行かないと」。本人は決めきれず悔しがったが、前半43分にはカウンターの際に、守備に戻っていたのにもかかわらず、猛ダッシュでゴール前に走り込みシュートまで行った。もちろん、守備面でも右MFとしてしっかりサイドをケアした。チームを勝たせたいという思いと同時に、もう一つ、発奮材料があった。

「落ちたことは悔しいです。でも、あとは選ばれた人に日本を代表して頑張ってもらって、最終予選、そこに選ばれるように自分は頑張るだけ。落ちたことで自分は開き直って、これからどんどん結果にこだわらないといけないと思い始めた。成長するために、ポジティブに考えたい。(外れたことは)良くはないんですけど、そう思い込ませるしかない。いまは栃木でプレーしているので、そこで結果を残すことに専念したい」

 10日に発表されたU-22日本代表のロンドン五輪アジア2次予選、クウェート代表戦のメンバーリストに自身の名前はなかった。1日の強化試合オーストラリア戦のメンバーから漏れていたため覚悟はしていたが、それでも悔しさがこみ上げてきた。昨年11月のアジア大会では背番号「10」を背負い、金メダル獲得に大きく貢献した自負があった。だが、気持ちを切り替え、前を向くよう何度も自らに言い聞かせた。そして今は、栃木のJ1昇格だけを考えている。その先に、ロンドン五輪があることを信じて-。

「松田さんが監督になってからやっているサッカーというのが、一人一人体現できている。今年から入ってきた選手も、何人も試合に出ていますけど、その中でも栃木らしサッカーができている。1試合を通して、それができているのが勝因。本気でJ1を目指していかないと、これから先はないと思う。チーム全員がJ1昇格ということを心に秘めて、ピッチで表現できるように練習から競争して、1年間通してやれれば、J1に行けると信じています」

 水沼の口から何度もはっきりと『J1昇格』という頼もしい言葉が飛び出した。ここまで10試合を終えて6勝2分2敗の勝ち点20で2位。首位の千葉とは2差だ。J2は首位から9位の熊本まで勝ち点6差と混戦模様だが、湘南を撃破したように、栃木には地力が付いてきている。栃木をJ1に、そして自身もロンドン五輪に。水沼は貪欲に栄冠をつかみに行く。

(取材・文 近藤安弘)

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