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前柏の栃木CB渡部が守備に得点に奮闘、「必ずJ1に行きたい」

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[6.12 J2第16節 湘南0-2栃木 平塚]

 栃木SCが湘南を2-0で下し、2位に浮上した。好調の要因としてエースFWリカルド・ロボやFW崔根植、MF水沼宏太やパウリーニョなど協力攻撃陣に目が奪われるが、湘南戦を含めて3試合連続の完封勝ち。DF渡部博文を中心とした最終ラインが安定してきたことも要因だ。

「今日はみんなで我慢して体を張れた。時間帯で何をしないといけないかもわかっていた。湘南は乗っている高山を生かした攻撃を狙っていたけど、裏のスペースに行かせないようにしたし、アジエルをそんなに好き勝手にプレーさせなかったと思う。中盤もDFもいい守備ができたからだと思う」

 渡部の表情には満足感であふれていた。後半24分には、MF鈴木修人のハイボールからバックヘッドでチームの2点目をゲット。なんとDFながら今季3得点目で、リカルド・ロボと共にチームの得点王だ。「僕のこれまでのアシストは全部、修人くん。いいボールをくれるので、きょうも来ると思って走った。完封と得点、どっちがうれしい? ゴールのほうがうれしいかもしれないです」と笑顔を見せた。

 この日、湘南のキーマンは好調のルーキーFW高山薫と、大黒柱のMFアジエルだった。「高山選手がいまの湘南の攻撃を牽引している選手でしたし、高さよりもスピードを消そうという狙いでした」と松田浩監督が会見で明かしたが、栃木は高山のスピード対策としてCBに、高さが売りの大和田真史から小柄ながらスピードがある大久保裕樹を入れた。渡部は新パートナーとうまく協力してゴールに鍵をかけた。

 先輩のアドバイスもしっかりと聞いたことがプラスになった。「起点は全部アジエルからと聞いた。アジエルにボールが入ったときには、前でも裏でも動ける準備していた。そこを集中を切らさずにできた」と渡部。4試合ぶりに先発し、ボランチを務めた元湘南(2009年在籍)の鈴木修人に“傾向と対策”をすべて聞き出し、それを実線して見せた。

 当然、聞いただけで成功するわけではない。渡部がしっかりと理解し、自分ではもちろん、周りを動かしながら遂行する能力があったからこそだ。松田監督も「全体として非常にうちらしいカチッとした試合をやってくれたという気がします。いつも準備していることを、しっかりみんなディシプリンを持ってやってくれた」と称えた。

「試合の戦い方で、相手の分析をしっかりして、相手の嫌がる部分、イライラさせる部分を栃木の守備ができている。いい守備からの、いい攻撃が徹底できている。まずは守備からというのが今年の勝因だと思う。僕たちの守備で、前の選手が気持ちよくできるように心がけています」と渡部は好調の要因を口にした。それを支えている一人が、今年、柏から加入してきた渡部だといえる。

「柏では『勝つメンタリティー』を学んだ。試合にはそんなに出てないけど、いい経験になったと思っています。柏ももちろん応援してますけど、いまは栃木でやってるんで必ずJ1に行きたい。自分の評価も高めたい」。昨年は大学屈指のCBとして柏に入団しながらリーグ戦2試合出場に終わった渡部。栃木では全10試合に先発し、ゴールも決めている。これからも最後尾で体を張って守り、栃木の躍進を支えていく。

(取材・文 近藤安弘)

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