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「ラッキーボーイも失礼」、川崎F・小林が2戦連続で10人のチームを救う劇弾

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[6.25 J1第18節 鹿島2-2川崎F カシマ]

 10人の川崎フロンターレが2試合連続で奇跡を起こした。もはや「ラッキーボーイ」の一言では片付けられない。途中出場のFW小林悠が2戦連発となる劇的な同点ゴールでチームに勝ち点1をもたらした。

 1-2で迎えた後半50分、MF中村憲剛の左CKを小林がヘディングシュート。相手DFに当たったボールが再び小林の前にこぼれてきた。「またラッキーみたいな感じで……。たまたまなんですけど、ほんとに自分のところにいい形でボールがこぼれてきてくれる」。右足で蹴り込む同点弾。今季7得点目のゴールが敗色濃厚のチームを救った。

「7点も取れば、ラッキーボーイも失礼でしょ」。中村は成長著しい23歳のFWに感謝した。「今、すごくメンタルがいいんだと思う。今日も『点を取れる気がしていました』って。『そうですか』って感じでしょ(笑)。点を取れるって思っている選手のところにボールは転がるものだと思う。まじめだし、謙虚で、向上心もある。このまま真っ直ぐ伸びていってほしい」とほめちぎった。

 中村が絶賛するのも当然だろう。今季7得点中、5得点が途中出場で決めたもの。前節の清水戦(3-2)も2-2の後半9分にDF井川祐輔が退場し、10人になりながら同32分に投入された小林が出場から4分後に決勝点を決めた。この日も0-2の後半14分にDF薗田淳が警告2枚で退場。2点ビハインドの上、数的不利に立たされる絶体絶命の状況だった。

 後半25分にDF田中裕介のゴールで1点を返し、小林がピッチに入ったのは同32分。10人の状況で4-4-1の左サイドハーフに入り、守備ではサイドのケアに追われながら積極的にゴールを狙った。

 幻のゴールもあった。後半44分、PA内に走り込んだ小林がシュート。GKが弾いたこぼれ球をMF稲本潤一がヘディングで狙い、ポストの跳ね返りを再び小林がシュートした。ゴールネットを揺らしたが、稲本がシュートした瞬間、小林がオフサイドポジションにいたため、得点は認められなかった。

 副審の旗が上がらなかったため、一度は同点ゴールだと思って川崎Fの選手たちも喜びを爆発させていた。しかし、飯田淳平主審が小林のオフサイドを確認し、判定はノーゴール。スタジアム全体が騒然とする中、冷静さを失わなかったのは、救われた格好となった鹿島ではなく、ビハインドの状況は変わらない川崎Fの方だった。

 小林は「自分の最初のシュートのところで決めないといけなかった。フワッと浮かすとか工夫すればよかった。正直、このまま(1-2のまま)終わったら嫌だなと思っていた」と率直な心境も明かす。それでも田中裕から「絶対、もう一回チャンスが来るから」と声をかけられ、集中し直した。「絶対にチャンスが来るんだと信じた。そしたらほんとに来て。決められてよかった」。後半50分の劇弾は選手全員が最後まであきらめず、貪欲に同点ゴールを狙い続けた結果だった。

 連勝は3で止まったが、これで8試合負けなし(5勝3分)。この日の引き分けも展開を考えれば、ただの勝ち点1以上の価値がある。そんな好調なチームをゴールで引っ張っているのが小林だ。

 今季の目標である8ゴールまで早くもあと1点と迫ったが、「もう1点取ってから、また目標を変えたいと思います」と謙虚な姿勢を崩さない。「自分としては出来過ぎぐらいの成績。でも、もっともっと上を目指してやっていきたい」。ラッキーボーイから川崎Fのエースへ。小林のゴールラッシュとともにチームも快進撃を続ける。

[写真]後半ロスタイム、劇的な同点ゴールを決めたFW小林悠がガッツポーズ

(取材・文 西山紘平)

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