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J1初ゴールがミラクル決勝弾の澤、「額を拭いて乾かしといて良かった」

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[7.9 J1第3節 柏1-0仙台 柏]

 まさにミラクル。その瞬間、ファン・サポーターが総立ちとなり、絶叫がこだました。2位の横浜FMが勝っていたため、引き分け以下で首位陥落という状況だったが、“代役アタッカー”が一気に“天国”に押し上げた。4分のロスタイムも終わりを告げようとしていた後半49分、柏レイソルのMF澤昌克が劇的な決勝ヘッドを叩き込んだ。

「ゲームみたいというか、ドラマみたいというか」。アシストを決めたDF酒井宏樹がそう振り返ったが、まさに“ミラクルヘッド”だった。右サイドで、酒井は途中出場のMF水野晃樹からパスを受けると、得意の右足を振り抜いた。ボールはファーサイドに飛んでいったが、走り込んだのは澤だった。「ドフリーできた。額を(ユニホームで)拭いて、乾かしといて良かったです!」。

 背番号「8」はしっかりと叩きつけてワンバウンドでゴール左隅に突き刺した。これが実は記念すべきJ1初ゴール。ゴール後は右手の親指をくわえながら、左手を天に突き刺した。昨年12月に生まれた長男のためのパフォーマンスを披露し、喜びを爆発させた。

 今節は司令塔のMFレアンドロ・ドミンゲスが出場停止。代役として澤に出番が回ってきた。4月29日の甲府戦以来となるリーグ戦12試合ぶりのスタメン出場。ナビスコ杯を含めると13試合ぶりで、気合が入りまくっていた。そんな中で自らのJ1初ゴールで勝ち点3をもたらし、首位キープに導いた。澤は「チームは調子がいいけど、自分は外で見る機会が多くて……。チームが調子がいいのは、心から嬉しかったけど、やっぱりピッチに立つことが仕事なので、自分がピッチに立って結果が出せたことが嬉しい」と笑顔を見せた。

 2008年夏にペルーのシエンシアーノから鳴り物入りで柏に加入した。リベルタドーレス杯本戦を経験したアタッカーとして日本代表入りも期待されたが、度重なる足首の負傷で思うような結果を残せなかった。08年は出場0で、09年はリーグ戦9試合出場無得点。J2だった昨年は26試合2得点の結果を残したが、満足できるものではなかった。

「試合に出られない時期もありましたが、あの頃の悔しさをぶつけて(練習を)やっていた」と澤。この日のゴール後は真っ先にベンチに駆け寄ったが、「試合に出たくても出られない選手がいる。毎日戦っている友。一緒に喜びたかった」。一緒に居残り練習をするなど、互いに支えあってきた控え選手たちと喜びを分かち合いたかったことを明かした。

「3年越しですね。決められてよかった。今日はやっと胸を張って帰れます。いままでは(寝ている子供を起こさないように)鍵の音がしないように開けてたんですけど、きょうはガチャっと帰りますよ」。澤は幸せそうな笑顔を何度も浮かべた。ペルー時代は、最優秀外国人選手賞を獲得し、ペルー代表入りまで打診されたアタッカー。この日のJ1初ゴールをきっかけに、あの頃のような輝きを取り戻すつもりだ。

[写真]決勝点を決めた澤(中央)

(取材・文 近藤安弘)

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