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「僕が一番悔しかった」、チョ・ヨンチョルが鮮やかに復活弾

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[7.10 J1第3節 鹿島1-2新潟 カシマ]

 まさに千両役者だ。アルビレックス新潟のMFチョ・ヨンチョルが復帰戦で決勝点。自らの復活ゴールでチームに勝ち点3をもたらした。

 1-1で迎えた後半43分、MF田中亜土夢の右CKをニアサイドでDFがクリア。右サイドでこぼれ球を拾ったFWミシェウがリフティングでボールを浮かしながらゴール前にクロスボールを送ると、ニアサイドに飛び込んだのがチョだ。

「ミシェウがすごくいいボールを上げてくれて、触ればゴールというボールだった。ミシェウを信じて走ったし、ミシェウも僕の動きを見てくれていた」

 完全にフリーの体勢からヘディングでとらえ、ゴールネットを揺らす。「GKとDFの間を狙っていたけど、あそこまでフリーになるとは思わなかった。あれを外していたら大変なことになっていた。逆に緊張しました」と照れ笑いを浮かべたチョの今季2得点目が劇的な決勝点になった。

「久しぶりに試合に出られて、今までの悔しさとか大変なときを思い出して、頑張るしかないと思った。頑張った結果、勝利をつかめてうれしい」

 流暢な日本語で勝利を喜んだチョにとって、今シーズンは苦難の連続だった。今季5戦目となった5月7日の大宮戦(0-0)で開始直後に右太腿裏を肉離れし、長期離脱。大宮戦まで2勝3分と開幕から無敗を守っていたチームは、エースの離脱で歯車が狂い出した。

 そこから悪夢の9戦未勝利(4分5敗)。チョもその間に復帰し、2試合に先発したが、6月15日の名古屋戦(0-4)で再び右足を故障。苦しむチームの力になることができず、五輪アジア2次予選に臨むU-22韓国代表も辞退するなど、今季2度目の離脱を余儀なくされた。

「みんな悔しかったと思うけど、僕が一番悔しかった。試合に出られなくて、サッカーができなくて、すごく悔しかった」。この日が6試合ぶりの復帰戦。後半20分から途中出場すると、水を得た魚のようにピッチを駆け回った。

「暑かったし、前半からなかなか攻撃ができなくて、守備の時間が多かった。みんな疲れている印象だったし、流れを変えたい気持ちだった。久しぶりの試合だったし、無理してガンガンいくより、周りを使うイメージだった」

 得意のドリブル突破を狙ったのは後半25分のワンプレーぐらい。それ以外はシンプルにボールをはたき、スペースを埋め、チームのために動き、中3日の連戦で疲労のある仲間を助けるプレーを心がけた。

 その中で飛び出した劇的な決勝点。「復帰戦でゴールを決めた感想は?」と聞かれると、「まだ分からない。家に帰ったら分かるのかも。まだそんなに喜びは感じてない」と、いまだ夢見心地のようだった。「ケガ人もどんどん戻ってきているし、今日の勝利が自信になる。次もアウェーだけど、しっかり勝ちたい」。最も頼もしい男の鮮やかな復活劇。ここからの巻き返しを予感させる勝ち点3となったのは間違いない。

(取材・文 西山紘平)

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