beacon

横浜FMが5年ぶり首位浮上も…中村俊輔「なんで上にいるんだろう」

このエントリーをはてなブックマークに追加
[7.17 J1第5節 大宮1-1横浜FM NACK]

 首位浮上にも笑顔はなかった。06年のJ1第4節終了時点以来、5シーズンぶりとなる首位に立った横浜F・マリノス。しかし、連勝が5でストップするドローでの首位浮上に喜び切れなかった。

 木村和司監督は「すっきり勝って1位になりたかった」と消化不良の表情を見せ、先制点のFW小野裕二は「結果は出ているけど、内容的にはまだまだ」と厳しい。FW渡邉千真も「今のままじゃだれも満足していない。手応えは個人的に全然ない。今日も負けなくてよかったという試合」と、押し込まれながら何とか勝ち点1を拾った試合内容に不満を隠さなかった。

 なぜ自分たちが首位に立ったのか。まるで選手自身が戸惑っているかのようだった。MF中村俊輔は「なんで今、上の方にいるんだろうな。確信がないまま勝っている」とまで言った。

 リーグ戦は17試合を消化し、ちょうど折り返しに入った。連勝は5で止まったが、10勝4分3敗。勝ち点34で柏に並び、得失点差で上回った。半信半疑のまま、5年ぶりの首位に立った。

 オフに選手の多くが入れ替わり、DF小林祐三、MF谷口博之、FW大黒将志といった主力選手も今季から加入したばかり。圧倒的な強さで連勝を飾ってきたわけではなく、ぎりぎりの試合を勝ち切って勝ち点を積み上げてきた。3日の川崎F戦(2-1)、9日の磐田戦(2-1)は2試合連続の逆転勝利。前節13日の山形戦(2-1)も後半ロスタイムの劇的ゴールで何とか競り勝った。

 勝負強さのベースにあるのはDF中澤佑二、DF栗原勇蔵という鉄壁のCBコンビ。さらに、この日も再三のビッグセーブでチームを救ったGK飯倉大樹の成長も大きい。選手たちもディフェンスには自信を持っている。しかし、渡邉が「ずっと守っているだけじゃ今日の最後みたいにやられることもある。2、3点取らないと落ち着いた試合ができない。攻撃で自分たちのリズムをつくりたい」と、攻撃面で課題を口にする。

 中村は「毎試合毎試合、課題が出る。でも、課題が出て勝つから、いい方向にいっている。だからこそ今日も勝ちたかった」と言った。一戦一戦、新しい課題が出て、それを消化し、次につなげる。その中で結果も付いてくる。好循環が今の横浜FMにはある。「練習からコミュニケーションが取れているし、いい雰囲気がある。選手の仲もいい。仲がいいからといって、怠けることもないから」。練習で中村がミスをすると、若手からも「あれ、俊さん?」という“突っ込み”が遠慮なく入るという。「俺がミスしたら、普通はシーンとするけどね。そういう雰囲気で今はやれている」。ベテラン、中堅、若手に関係なくコミュニケーションを取り、お互いが要求し合い、高め合ってきた。

 選手がだれ一人として現状に納得することなく、首位に立った。ならば選手が満足できるまでに成長したとき、どんなチームになっているのか。首位に立っても、まだまだ発展途上にあり、伸びしろもある。「最後までこの順位でいたいね」と木村監督。“未完成”の状態で首位に躍り出た横浜FMが“完成形”に近づいたとき、7年ぶりのリーグ制覇も現実味を帯びてくる。

(取材・文 西山紘平)

TOP