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[総体]「見ている人に感動と勇気を」初戦PK勝利の大阪桐蔭、劇的V弾で米子北沈める

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平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技(秋田)
[7・29 全国高校総体2回戦 米子北1-2大阪桐蔭 仁賀保グリーンフィールド]

 秋田県で開催中の平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技は29日、2回戦16試合を行い、にかほ市の仁賀保グリーンフィールドの第1試合では09年準優勝の米子北(鳥取)と大阪桐蔭(大阪2)が対戦。 後半34分にJ注目のFW田中淳一(3年)が決めた劇的な決勝ゴールにより、大阪桐蔭が2-1で勝利した。大阪桐蔭はあす30日の3回戦で鹿児島代表の神村学園と対戦する。

 スタイルは違うがともに全員サッカーを掲げる強豪同士の「我慢比べ」を制したのは、大阪桐蔭だった。1-1で迎えた試合終了直前、大阪桐蔭は縦パスで右サイドのスペースを突くと、絶妙な飛び出しで抜け出した田中が得意の左足とは逆の右足を振りぬく。距離を詰めながらコースを切ろうとしたGKの横を抜けたボールはそのままゴールへと吸い込まれ、大阪桐蔭はヒーローを中心に歓喜を爆発させた。

 全員の力で奪ったゴールだった。前半8分に豪快な左足シュートも決めている田中だが「ボクは守備が得意じゃない。でもみんな、ボクが走っていない分も走ってくれた。ボクはようボール取られたけれど、最後みんながつないでくれた。羽座からいいパスが来て、ボクはそれを決めただけ。よう粘っていい勝利だった」とヒーローは仲間たちを何度も讃えていた。

 大阪桐蔭はMF俵石直哉(3年)とMF中村真輔(3年)がテクニックで違いを生み出し、足の振りが一段階抜けている田中のシュートが次々とゴールを襲った。SB紀田宰(3年)がそのスピードでサイドを駆け上がり、局面では細かいパス交換からシュートへ持ち込む。ボクサーを目指してボクシングの名門・大阪帝拳ジムに所属していた異色の経歴を持つ永野悦次郎監督の下で磨かれた多彩な攻撃を繰り出す「ボクシングスタイル」のサッカー。ただ運動量、タフさで上回っていたのは米子北だった。

 米子北は攻守の切り替え速く、自陣に網をつくってボールを奪うと2、3人の動きをシンクロさせて一気にシュートにまで持ち込んでくる。そして隙あらば前線から相手DFをチェイス。前半21分に奪った同点ゴールは、10番FW小笹晃(3年)が前線からCBにプレッシャーをかけて奪ったボールをそのまま縦へ持ち込み、左足でゴールを破るファインゴールだった。さらに前半32分には左サイドを駆け上がったMF花本敏生(3年)から中央のスペースを突いた小笹を経由して、3人目の動きで飛び込んできたポイントゲッター、FW真木基希(3年)が決定的な右足シュート。後半29分にも抜け出した青木翔太(3年)のシュートがクロスバーをかすめるなどトレーニングされたカウンターのキレ味は強烈で、また守備は強固だった。

 互いにミスできない状況のまま進んだ熱戦。それを勝利したのは試合を決める仕事をしたエースを擁し、勝利への執念でわずかに相手を上回った大阪桐蔭だった。05年創部で08年全国総体8強、09年全日本ユース選手権16強など急激に力をつけてきた大阪桐蔭だが、以前全国大会に出場したときと違うのは、個々に頼るのではなく、「共同して組み立てていこう」という姿勢。永野監督は「きょうみたいな試合で独りよがりのサッカーをしていたら絶対にやられている。ひとつのことを全員で最後までやりぬくという部分が最後に形になった」と目を細めていた。

 PK戦を制した旭川実戦に続く劇的な勝利をおさめた選手たちには誓いがある。主将の中尾元基(3年)は「目標は全国制覇。そして、東北でやっている意味を考えて、被災している人に元気、勇気を与える源になること。PK戦だったきのうも、きょうもボクたちのプレーを見て喜んでもらえたと思う」。劇的勝利で感動を与えた大阪桐蔭。「今を真剣に」というスローガンを持つチームは、これからも一秒一秒を大切に戦い、「絶対にあきらめない」全員サッカーでの勝利によって東北の地で新たな感動を生み出す。

[写真]後半34分、田中の決勝ゴールを喜ぶ大阪桐蔭イレブン(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)

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