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大黒が技ありヘッドで2発、木村監督は「ハットトリックさせたかった」

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[7.30 J1第19節 横浜FM2-1大宮 日産ス]

 雨の中、応援に訪れたサポーターも満足そうだった。中6日だった大宮を相手に横浜F・マリノスは鮮やかな2-1逆転勝利で勝ち点を40に伸ばし、ひとます首位をキープした。あす31日に仙台戦を迎える得失点差で2位だった柏に、プレッシャーをかけることに成功した。立役者は元日本代表FW大黒将志だ。技ありの2ヘッドをぶち込んだ。

 2本とも“深イイ話”が詰まったゴールだった。ますは後半8分、左CKの好機を得た。キッカーは中村俊輔。大黒はニアに飛び込んでGKの股を射抜いて決めたが、この一瞬に様々な思考が巡っていた。「最初にニアに動いて、もう1回、動き直した。そしたら(DFが)ついてこなかったので、前に入ってニアでヘディングしました」。大黒の持ち味ともいえる、DFラインとの駆け引きが発揮された一発だった。

 このゴールの直前、大黒は右クロスからヘディングシュートを放ったが、GK北野貴之の好セーブに阻まれていた。「前の試合でも止められてたし、いいGKだなと思っていた。(再び止められ)枠ギリギリにヘディングしようと思った。うまくコースを狙っていった」と大黒は、しっかりと叩きつけるヘディングを放った。修正能力の高さがこの同点弾を生み、さらに2点目へとつながった。

 逆転弾となる2本目は後半20分だった。左サイド、DF金井貢史のクロスを中央で受けて狙い済ましてゴール左上に突き刺した。これも瞬時に考えて動いていた。「金井は練習のときから、ニアに速いボールが来る感じではなかなった。真ん中に来るか、ファーに流れて来るかだと思って、ニアに突っ込み過ぎないように考えて走った。DFとDFの間にポジションをとっていた」。位置取りがうまくいき、相手GKの後ろからしっかりとボールを捉えてゴールに突き刺した。

 5月21日の甲府戦以来となる今季2度目の2ゴール発で逆転に導き、今季リーグ戦通算6得点とした。しかし、これに満足しない人がいた。「大黒をフル出場させ? ハットトリックさせたいでしょ、やっぱり」。木村和司監督だ。ストライカーとしての勲章といえる1試合3得点を達成させようと、あえてフル出場させた。そもそも、過去のリーグ戦1勝6分6敗と苦手な大宮を撃破するため、27日のナビスコ杯はあえて先発から外したという。つまり、大黒は他の選手よりも疲労が少なかった。

 しかし……。大黒はその後、何度かあった好機を活かせず。「調子に乗りすぎました。失敗しました」と苦笑いを浮かべた。それでも木村監督は「それ(得点)以上によく働いてくれている。(動き出しや前線からの守備など)ほんとよく気が利くね。普段はボッーとしてるのに、サッカーとなると違うね。こまめだよ」と絶賛した。

 これで最近のリーグ戦8試合を7勝1分。ナビスコ杯を入れても8勝1分と不敗が続いている。「DFが硬いんでね。先制されても誰かが点を取れば勝てる。CBに両SB、それとボランチの小椋が守備を頑張ってくれている。1点取られても(中澤)佑二さんと(栗原)勇蔵なら(2失点目は)大丈夫と信頼している」と大黒は守備が安定しているからこそ、攻撃陣がゴールを奪うことに専念でき、それが白星につながってることを明かした。

 次戦は8月6日に、首位争いを演じている柏と対戦する。日本代表DF栗原勇蔵は「うちもしぶといですよ、今年は。しっかりセットプレーで点が取れてるし、やっぱセットプレーで取れれば、相手もガクッとくるでしょ」と不敵な笑みを浮かべた。攻守ががっちり噛み合っている横浜FM。優勝に向けてまずは次、柏を蹴落とすつもりだ。

(取材・文 近藤安弘)

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