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大ブーイングにも動じず、決勝PKの大久保「静まり返るのが気持ちいい」

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[8.6 J1第20節 浦和2-3神戸 埼玉]

 耳をつんざくような大ブーイングさえ快感だった。ヴィッセル神戸は2-2で迎えた後半ロスタイムにPKを獲得。蹴るのは後半11分から途中出場していたFW大久保嘉人。3万人を超える大観衆からのブーイングを背中に浴びながら、落ち着き払っていた。

「ブーイング? 逆に気持ちいいです。決める自信はあったので。静まり返るのが気持ちよかった」

 助走でフェイントをかけながら、GKが先に動くのを確認して逆を突く。転々とゴール右に吸い込まれるキックが決勝点になった。

 右足首痛を抱え、時間限定での出場が続いている。この日が4試合連続の途中出場。「まだインステップでシュートを打てない。インサイドなら打てるけど」。シュートを“封印”されながら、懐の深いボールキープでチームを落ち着かせ、鋭いスルーパスでチャンスをつくる。出場直後の後半12分にはMF松岡亮輔、同14分にもFWポポに絶妙なスルーパスを通し、立て続けに決定機を演出した。

「自分で点を取ろうとは思ってない。勝ってる時間帯の試合の運び方がチームに浸透してない。自分が落ち着かせる役目をしないといけない」。あえて黒子に徹し、チームのためにプレーする。「それでもパスをつないで3回ビッグチャンスがあった。あれが最初からできれば、もっと楽な戦い方ができる」。今の自分にできることをする。それがパサーとしての大久保の良さを最大限に引き出している。

「今日は裏もあったし、CBの前も空いていた。取りに来ても激しくないし、キープできる。取りに来い、取りに来いって思ってた。来たら(パスを)出すし、そういう楽しさはあった」

 シュートを打てないフラストレーションを抱えながらも、コンディション自体はよく、体もキレている。これでチームも2連勝。勝ち点2差だった浦和を順位でも抜き、12位に浮上した。“絶口調”の大久保は10日の韓国戦に臨む日本代表メンバーにも言及し、挑発的なコメントを残した。「左足だけでも入れるでしょ。浦和の選手で入れるぐらいなら」。“悪童”ぶりを見せ付けた大久保の完全復活も近そうだ。

(取材・文 西山紘平)

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