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栃木は13戦ぶり黒星も、水沼「最下位になるわけじゃない」。松田さんへの思いも吐露

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[8.13 J2第24節 横浜FC2-0栃木 ニッパ球]

 栃木SCは横浜FCのプレスに苦しんだうえ、後半29分にはMF落合正幸が退場してしまう不運もあり、ここまで17位の相手に0-2で敗れた。5月22日の愛媛戦以来13試合ぶりの黒星で、不敗記録が12(6勝6分)でストップした。

「久しぶりに先制されて、やっぱりドタバタしてしまった時間があった。記録は意識してなかったです。無敗記録とか、誰も口にしていなかった。途切れたからといって、最下位になるわけじゃない。今日は、精一杯を出し切った結果がこうなりました」

 MF水沼宏太が唇を噛み締めた。立ち上がりから、横浜FCが猛プレスをかけてきたため、ビルドアップに苦しんだ。水沼は「全体として、ちょっとビルドアップのときに、いつもとは違うかなというのがあった」という。上手くパスが前線に入らなかったが、この日はエースのFWリカルド・ロボが出場停止で不在だった。

 水沼は「ロボがいたら(結果が)どうなったかは分からないですけど、きょうは例えば、相手のサイドバックの背後にパスを出したいときに、前が動いてなかったりとか、チームとしてのビルドアップで、合わないところが前半はあった」と多かれ少なかれ、影響があったことを認めた。「もう少し、チームとしてのビルドアップをすることで、もっと簡単にやれたと思う。一人ひとり、ボールを持つ時間が長かった」と課題を口にした。

 ただ、下を向いてばかりではない。後半はリズムを取り戻し、1人少なくなってからも押しこむ場面はあった。シュート数も前半は3対3だったが、後半は8対3で上回った。水沼は「後半、修正できたのはチームとして成長できたこと。前半のうちに気づいて、こうだから、こうしようと前半のうちに修正できれば、上を目指せるチームになる」と前向いた。

 1試合の重みは分かっているつもりだが、1試合の結果に一喜一憂するつもりもない。水沼は「下を向いていても何も始まらない。最後まで諦めないことが、自分たちのいい所で、自分らしさでもある。やり続けるようにしたい」と目標に掲げているJ2昇格に向け、気持ちを切らさないことを強調した。この日、千葉に抜かれたが、勝ち点は37で、まだ暫定4位に付けている。首位のFC東京とも勝ち点差は4。まだこの日が後半戦のスタートで、巻き返すチャンスはいくらでもある。

「ショックはショックだし、本当に悔しい気持ちでいっぱいですけど、くよくよしてたらマツさんに怒られる。マツさんだったら『今は俺のことはいいから、自分のことを全力でやれ』と言うと思う。マツさんに教えてもらったサッカーの楽しさだったり、サッカーに懸ける思い、そういうことをピッチで出せるように、後半戦はやっていきたい」

 水沼は4日に急性心筋梗塞で他界した松田直樹さんへの思いを口にした。横浜FM時代に可愛がってもらい、昨年の栃木移籍の際は、背中を押してくれたという。「移籍を後押ししてくれた先輩の1人です。『コウタは試合に出たほうがいいよ。そのほうが上を目指せるから』と言ってくれた。でも父親がマリノスにいたこともあって『コウタはマリノスにいて欲しいけどな』とも言われました。でも、『試合に出ることが大事だから、頑張ってこい』と言われました」。

 8日に群馬県桐生市で行われた通夜に参列し、松田さんと対面した。2月の宮崎キャンプ中に行った松本山雅FCとの練習試合で会って以来のことだった。「『お互い大変だな。マリノスでは恵まれてたな』と言っていました」。今回は無念にも、無言の対面となったが、改めて水沼は栃木での飛躍、チームのJ2昇格ヘの思いを強くした。

「何かの形で恩返ししたい。全力でピッチを駆け回ることが大事だと思うので、やり続けたいと思います。本当に、マツさんがもうできないサッカーというのをやり続けようと思う。これからも頑張っていきたい」

 水沼は思いの丈を口にした。この日は格下相手に取りこぼしたが、今後、昇格圏内に居続ける自信はある。「まだ、いい位置にいる。やっぱり前半戦、自分たちが頑張った結果がこの位置(前半戦3位)。この結果を自分たちの自信にして後半戦を戦いたい。まだまだ全然わからないので、自分たちのサッカーをして、どんどん勝ちを積み上げていきたい」。松田さんに教わった不屈の闘志を武器に戦い続け、悲願を成し遂げるつもりだ。

(取材・文 近藤安弘)

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