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長友と北嶋のゲキに応えた林、「生きるか死ぬかくらいの気持ちだった」

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[8.20 J1第22節 柏3-2福岡 柏]

 やっとこの日が来た。満面の笑みで両手を広げ、福岡戦用という“飛行機パフォーマンス”を披露しながら、ゴール裏のサポーター席の前に走り寄った。柏レイソルのFW林陵平がJ1初先発初ゴールを決めて3-2勝利に貢献。チームを2位浮上に導いた。

 2-1で迎えた後半22分だった。PA左をFW工藤壮人が突進し、左足でシュート性のキックを繰り出した。これに林がニアサイドに飛び込む。左足でのファーストタッチはゴール前の混戦で相手選手に当たったが、こぼれ球を右足で押し込み、記念すべきJ1初ゴール。これが結果的に決勝弾となった。

「きょうは結果が大事だった。自分の人生がかかった試合。生きるか死ぬかくらいの気持ちだった。それで、こぼれてきたんだと思う。サッカーの神様が、あそこでこぼれ球を出してくれました」

 エースFW北嶋秀朗が怪我で離脱。同じく長身でポストプレーもできる林に、今季5試合目での初先発が巡ってきた。そもそも、これがJ1初先発だった。「3日前くらいからスタメンだとわかり、今までで一番、しっかりとコンディションを整えました」。前述のコメントにもあるように、気合が入りまくっていた。

 2009年に明大から東京V入り。ルーキーイヤーながら6得点を記録し、2010年に柏に完全移籍した。期待通り24試合10得点という成績を残してJ1昇格に貢献した。そして迎えた今季。林は「自分がエースになるという気持ちだった」と自身の飛躍に期待してキャンプに臨んだが、ベテラン北嶋と急成長したFW田中順也からポジションを奪えず、それどころか開幕戦ベンチ外という悔しさを味わった。その後もここまで4試合の出場のみで、それもすべて途中出場だった。

 8月上旬の日本代表候補合宿に選ばれた田中が負傷により、6日の横浜FM戦から離脱。しかし、林に先発のチャンスはこなかった。そして今節から北嶋が怪我で離脱。ようやく林に白羽の矢が立った。サポーターは北嶋&田中という“15得点2トップ”が不在で、攻撃面を不安視していたが、林は「それを言われたくないと思った」と逆にエネルギーに替えて戦った。

 2人のゲキに応えた。8月の上旬、負傷した右肩治療のために緊急帰国したインテルDF長友佑都と東京・六本木で食事をした。長友は明大時代からの親友で、当時からお互い切磋琢磨してきた間柄だ。「お互いがんばろうという話をした。長友は『怪我をしたけど、またここから成長したい』と言っていた。何か言われた? オマエもがんばれよと言われました」と林。世界で戦う親友との時間が、出番がなく沈んでいた心に大きな刺激となった。

 もう一人は北嶋だ。この日の試合前、クラブハウスで会い、声をかけられた。「点を取るか、取らないか。点を取れば100点、点が取れないと0点だぞ。俺が怪我をした分、がんばれよ」とハッパを掛けられた。同じポジションながら普段からアドバイスをくれ、期待もしてくれているという大先輩からの“FWはゴールがすべて”というメッセージ。「絶対に点を取りたいと思った」と林はさらに思いを強くし、それに応えてみせた。

 首位の名古屋が仙台に敗れたため、2位に浮上した。勝ち点は首位に浮上したG大阪と同じ44とした。次節は中3日で、そのG大阪と対戦する。ここも北嶋は出られないため、林の頑張りが大事なる。「ここまで何もしてこなかった。これからチームの役に立つように頑張りたい」と決意を新たにした。北嶋&田中が不在でも“林がいる”-。G大阪戦でもゴールを決めてサポーターに認めてもらうつもりだ。

(取材・文 近藤安弘)

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