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なでしこ効果?決勝点の柏・澤「日本中が澤ブームに乗っている」

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[9.10 J1第25節 柏2-1名古屋 柏]

 澤はなでしこだけじゃない。柏レイソルのMF澤昌克が緊急出場で大仕事をやってのけた。7月9日の仙台戦(1-0)以来、10試合ぶり今季2点目が値千金の決勝点。「なでしこジャパンの澤(穂希)もいますが、レイソルの澤もお願いします」と報道陣を笑わせると、「日本中が澤ブームに乗っているので、同じ流れに自分も乗っちゃおうかなと」と白い歯をこぼした。

 ゴールの予感がした。1-1で迎えた後半25分、DF酒井宏樹が右サイドからアーリークロス。GKとDFの間を通すグラウンダーのボールをGK高木義成が前にこぼしたところに澤が詰めていた。「酒井のセンタリングが自然と自分のところに転がってくる感じがして、スーッと中に入っていった。GKの前でバウンドして、取りにくいボールだった。弾くんじゃないかなという気がしたら、ほんとに弾いて。走っていてよかった」。相手GKのファンブルを逃さず、右足で押し込んだ。

 出番は突然やってきた。前半19分、左肩を痛めたMFレアンドロ・ドミンゲスに代わって出場。試合開始から間もないアクシデントにアップする時間もなかった。「試合前にやったアップのぬくもりが残っていて、少し動いたらほぐれた。余熱みたいな感じで。ちゃんとアップしといてよかった」と笑ったが、準備している間の前半17分にチームは失点。立ち上がりから名古屋の勢いに押され、しかも1点ビハインドという難しい状況だった。

「なかなか試合に入り切れない自分がいた。それでもボールが来たときはしっかりキープして、少しずつ試合に入っていけるようになった。後半はチームと一緒に自分も流れに乗れた」。1点リードを奪ったことで逆にペースが落ち、徐々に運動量が落ちていった名古屋に対し、澤投入とタイミングを同じくして柏が盛り返していった。

「自分はレアンドロと正反対のプレースタイルで、アシストするわけでも、素晴らしいシュートを打つわけでもない。自分にできるのはボールを動かしながら走って、仲間にスペースをつくること。犠牲になるようなプレーというか、走って、疲れている選手を助けたり、セカンドボールを拾ったりするのが自分」

 チーム全体の運動量を上げ、フリーランニングでスペースをつくり、自らバイタルエリアでパスを呼び込んではリズムを生んだ。後半は完全に柏のゲームとなり、後半20分にFW田中順也のゴールで追い付くと、その5分後に澤が決勝点を決めた。

 2試合連続の逆転勝利で順位は3位に浮上。首位・G大阪との勝ち点差は3のままだが、J1復帰1年目でのリーグ制覇も現実的な目標となってきた。「開幕してから1試合1試合を積み上げて、気づいたら優勝戦線で争っている。優勝を漠然と考えるより、1試合1試合やることをやって、勝ち点を積み上げることで、優勝の2文字も見えてくると思う」と澤は冷静に言う。

 勝ち点4差にG大阪、横浜FM、柏、名古屋がひしめく優勝争い。柏は上位勢との対戦を残していないが、次節18日の第26節には横浜FM対G大阪、10月15日の第29節には名古屋対G大阪、11月19日の第32節には横浜FM対名古屋の直接対決があり、他の上位陣がつぶし合う可能性もある。「残りの3チームは直接対決が残っている。自分たちは自分たちのサッカーをやり通すだけ」。相手を気にすることなく、目の前の試合で勝ち点3をつかみ取る。それが初優勝への道につながっていくはずだ。

(取材・文 西山紘平)

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