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8戦ぶり復帰の楢崎が好守連発、闘莉王との“頭脳プレー”でピンチしのぐ

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[9.18 J1第26節 鹿島1-1名古屋 カシマ]

 帰ってきた守護神がゴール前に仁王立ちした。名古屋グランパスのGK楢崎正剛が7月31日の福岡戦(3-0)以来、8試合ぶりに復帰。1失点は喫したものの、被シュート20本という劣勢の展開の中、再三の好セーブで最少失点に食い止めた。

「試合から何試合も遠ざかっていた。最初は集中して入らないといけないと思ったし、多少緊張はあったけど、すんなりやれたと思う」。8月6日の練習中に負傷し、右腓骨筋腱脱臼で離脱。49日ぶりとなる公式戦の舞台に「変なプレーはできないし、みんな期待して見てると思うし。ピッチの中でもそういう視線を感じるので、若干緊張するけど」と苦笑いしたが、その安定感はさすがだった。

 前半12分、CKのピンチに鋭い反応でヘディングシュートをかき出すと、同23分のMF遠藤康のミドルシュートも弾き返す。後半32分、CKをパンチングしたこぼれ球をPA外からMF増田誓志に鮮やかなダイレクトボレーを叩き込まれ、1失点したが、相手のシュートをほめるべきだった。

「攻められていたけど、ずっと失点してなかった。その中で先に取られて、ガクッときたけど、助けてくれた」。失点から5分後にDF田中マルクス闘莉王が同点ゴール。終盤は再び猛攻を浴びたが、後半43分の増田の強烈ミドルをしっかりと弾き、2点目は許さなかった。

 後半ロスタイムのラストプレー。PAわずか手前の位置でFKを与えたが、“頭脳プレー”でピンチを逃れた。キッカーはMF野沢拓也。2月の富士ゼロックススーパー杯で直接FKを決められている相手だったが、キックの直前、闘莉王が楢崎に声をかけた。楢崎が明かす。

「『壁を越えてきたら俺が守るから』って闘莉王が言ってきた。だから俺は壁がない方を守った」

 野沢のキックは壁を越えてきたが、狙いどおりゴール目前で闘莉王がヘディングでクリア。ボールはゴールラインを割り、タイムアップのホイッスルが鳴った。

「あいつがいなくても、俺も触れたかもしれないけど」。楢崎は笑いながらも「(FKのポイントがゴールまで)近かったから、闘莉王も戻れる距離だった。そのへんは頭を使ってやったつもり」と胸を張った。

 試合は1-1のドロー。「勝ちたかった」という楢崎の言葉は本音だろうが、試合内容を考えれば、妥当な結果でもあった。「自分は自分のプレーに集中してやったつもりだけど、そればっかりになって、チームにいい影響を与えられたかは分からない。負けなかったことは良かったけど、勝ち点をもうちょっと積み重ねないといけない」。残り8試合となったリーグ戦。復帰戦を勝利で飾ることはできなかったが、頼もしい守護神が戻ってきたことは、連覇を狙う王者にとって、これ以上ない追い風だ。

(取材・文 西山紘平)

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