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長崎は元横浜FMやF東京の佐藤が先制点をお膳立て、今後も「倒れるまで頑張ります」

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[10.10 天皇杯2回戦 東京V7-1長崎 駒沢]

 JFLで3位と好調のV・ファーレン長崎は前半20分に先制に成功したが、その後に大量失点し、東京ヴェルディに1-7の逆転負けを喫した。佐野達監督は「J2屈指の得点力を誇る相手に対し、本当はボックスに全員入って守るとか、ブロックを作って守るのがセオリーだと思うが、真っ向勝負で戦った。先制点は良い形で取れたが、その後のセットプレーの3発がすべて。こういう相手にセットプレーで失点すると、なかなか厳しい」と振り返った。

 FWマラニョンらタレント豊富な東京V攻撃陣の鋭いドリブルやパスワークは何とかギリギリの所で防いでいたが、前半22分の1-1同点弾、同38分の逆転弾、後半10分の3失点目と、いずれもセットプレーでやられてしまった。課題としている部分だけに、悔しい失点となった。ただ、これは2013年に目指すJ2昇格に向け、大きな財産になる。佐野監督も「真っ向勝負で戦って足りないところもわかってきた。また切り替えてJFLの戦いに備えたい」と前向きに語った。

 JFLリーグ戦で4位に以内に入り、なおかつスタジアムや経営面がクリアすればJ2に昇格できるが、長崎はホームスタジアムの問題があるため、今年はJリーグ入会予備審査の申請を見送った。クラブ側は来年に全ての条件をクリアし、2013年にJ2昇格することを目標にしている。チームもそこに向けてプロ契約選手を揃え、着実に力をつけている。あとは行政や長崎県民の力を借りて、少しでも早くJ2基準を満たしたホームスタジアムを用意してもらうことだ。

 そんなチームを牽引するのが、横浜FMやFC東京などで活躍したMF佐藤由紀彦だ。この日も背番号「10」を背負って先発。先制点の起点になるなど存在感を発揮した。トルシエ監督時代には日本代表候補にも選ばれた“右サイドの貴公子”も今年で35歳。佐藤に試合を振り返ってもらいつつ、親友だった故・松田直樹さんのこと、自身の今後について聞いた。

-先制しましたが、残念な結果に終わりました。試合を振り返っていかがでしょうか?
「ヴェルディはすごく良いサッカーをするし、強いと思いました。2年後にJ2を目指すにあたって、この結果をしっかりと受け止めて、もう一回、謙虚に自分たちを見直す良いチャンスになったと思う。下を向いていてもしようがないので、みんなでやっていこうと話し合った」

-先制点の際は自ら潰れてゴールをお膳立てしました。
「良い形で自分のボールを持っていってくれたので良かったです。でも、そのあとの戦い方が良くなかった。うちはセットプレーからの失点が課題ですが、今日も4点取られた。ああいうところは良くなかったですね。JFLでは、ああいう(キックの)精度はない。うちはJ2仕様と言うか、J2に上がって通用するためのサッカーを目指しているので、ほんとに今日はサッカーの怖さをヴェルディから学びました」

-佐野監督も話していたが、引いて守るような作戦は取らなかった。
「真っ向勝負で挑みましたね。監督は、今日で言えば、7点取られたら8点取れという感じの人。見ている人もそのほうが面白いと思うからと。今日は課題がすごくはっきりしました。チャレンジしないで負けていたら、課題は見つかりにくかったと思うけど、課題がハッキリした。そこから逃げずに、これからJFLでやっていきたいと思います」

-現在JFLは3位。昇格条件の4位以内が達成できそうな位置にいますが、スタジアム問題もあって今年はJ2に昇格できません。
「自分たち現場は『条件が合わないだけで上がれなかった』というところに持っていくしかない。『4位以内に入っていないじゃないか』と言われたら、それは僕らにとって一番きついことなので。きちんと4位以内に入ることが、長崎の行政を動かすことになると思う。『現場はいつでも準備できているよ』という風にしないといけない。長崎の人たちの後押しが必要なので。今は3位ですけど、今年は4位以内にしっかり入りたい。『僕らは準備できているよ』というのを見せたいですね。そこが唯一のモチベーションです」

-今日はFC東京時代のユニホームを着たファンも応援に駆けつけていました。横浜FM時代も含め、昔からのファンは佐藤選手のコンディションや今後の状況が気になっていると思います。
「サッカーをできる喜びというのを体現したいという気持ちが、より強くなっていますね。自分は怪我なく、ここまで続けられている。倒れるまで頑張ります」

-このまま長崎でJリーグを目指す方向でしょうか?
「もちろんです。長崎というチーム以外では考えていない。そうできればと思っています」

-今年は親友の松田直樹さんが他界されました。松田さんの分も、という思いもあるのでしょうか?
「そうですね。うーん、まだこう、アイツのために、というところまでは精神的に戻っていないのは確かです。それでも人生は続くので、前に進むしかないと思っています。それも含めてアイツが望んでいると思う。今日みたいな試合をしてたら、アイツにほんと『だせー』と言われると思う。そこは常に意識して、オフザピッチの部分でも、オンザピッチの部分でも、強い気持ちを出していきたい」

-佐藤選手は09年からJFLの長崎に加入し、経験を活かしてチームをJ2に昇格させようとしています。もしかしたら今年、松田さんがJFLの松本山雅FCを選んだのは、佐藤さんの影響もあったのでは?
「そうですかね、まあ、カテゴリーがどこにせよ、同じサッカーバカというか、サッカーのことしか頭にないやつだった。サッカーと真正面で向き合うことで、アイツも喜ぶのかなと思います」

-横浜FMの中村俊輔選手などはJリーグ優勝を松田さんに捧げることを公言していますが、佐藤選手もいろんな思いがある。
「俺の場合は、もう、死ぬ気でやることですね。それがアイツも一番、喜ぶと思うし、もちろん優勝とかも大事ですけど、魂を込めてプレーしたいですね」


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