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[大学選手権]「オレはできる!」初出場・専修大が国立ファイナルへ!!

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[12.25 全日本大学選手権準決勝 専修大2-0中京大 西が丘]

 “最強の初出場チーム”専修大が国立ファイナルへ進出! 第60回全日本大学サッカー選手権は25日、東京・西が丘サッカー場で準決勝を行い、関東王者・専修大対昨年度準Vの中京大(東海1)戦はFW大西佑亮(3年=鹿島ユース)とMF仲川輝人(1年=川崎F U-18)のゴールによって専大が2-0で勝利。初出場で決勝進出の快挙を成し遂げた。12年1月5日に国立競技場(東京)で開催される決勝では、2大会ぶりの優勝を目指す明治大と激突する。

「オレはできる!」。弱気な自分を完全に消し去った専大が決勝まで上り詰めた。昨年の関東2部リーグから1部へ昇格したものの、FW高山薫(湘南)やFW神村奨(水戸)らJリーガー4人が抜けて迎えた今季、MF庄司悦大主将(4年=清水商高)は「先輩たちの方が上手いのに2部で。自分たちは1部でできる訳ないと思っている選手がいた」と振り返る。だが「練習のときも向上心を持って厳しくやっていこう」と決めた選手たちは、意識改革のためにチームの合言葉としてMF池田裕樹(3年=清水商高)のアイディアだった「オレはできる!」という言葉を活用。練習時にAチーム全員が両手をつないで円をつくり、「オレはできる!」という掛け声を3度行うようにした。毎日繰り返すうちに自信なさげに声を出していた選手の声も変化。源平貴久監督は「もっとできる、もっとできると。(そして)自分とチームメートに自信を持てるようになった」と口にしていたが、この日も選手たちはやや空回りするほどに満ち溢れていた気迫と自信で中京大を上回り、昨年度準優勝チームをシュート数10-2で圧倒した。

 試合の展開を左右したのはキックオフ後わずか20秒ほどで決まった電光石火とも言える先制ゴールだった。左SB松本陽介(4年=清水商高)の放った滞空時間の長い左クロスを中京大の大型CBの間に入り込んだ167cmMF町田也真人(4年=埼玉栄高、ジェフユナイテッド千葉加入内定)が競り勝って頭で合わせる。ポジション取りの悪かったGKが背走しながらバウンドしたボールをゴール外へかき出そうとしたが、これに身体ごと飛び込んだ190cmFW大西がゴールへ押し込んで貴重な先制ゴールとなった。

 徹底した守備的布陣を敷くことも予想された中京大だが、この失点でゲームプランが崩れて前に出らざるを得なくなる。ただ庄司の好パスから攻撃を組み立てる専大がふだんに比べてつなぐことが少なく、大西をターゲットとしたクロスを多用したこと、また中京大がセカンドボールを拾い続けたことで試合はここから膠着した。ボールを支配する専大だが17分に右SB北爪健吾(1年=前橋育英高)からのパスを受けた仲川が反転から強烈な左足シュートを放つも、FW藤牧祥吾(4年=清水ユース)を起点にサイド攻撃を仕掛けられるなど、中京大に逆襲されてなかなか2点目を奪うことができない。それでも39分、専大は右中間でボールを持った町田が絶妙なアングルでのスルーパス。右サイドからダイアゴナルランでPAへ飛び込んできた仲川が、「得意の角度」という右中間からそのまま右足シュートをゴールへと叩き込んで2-0とした。

 2点目の形こそ良かったものの、専大ベンチは明らかに不満げだった。大西は180cm超の選手揃う相手のCB、中盤相手に奮闘していたが、チームはそれに頼りっ放しに。指摘を受けてようやく選手たちも自分達の「攻撃的な美しいサッカー」からかけ離れたパフォーマンスであることを自覚する。町田は「『面白くないサッカーだ』と言われて。有料試合で見てもらう価値のあるサッカーをしなければならない。止めて蹴るをしっかりとしたサッカーをやって後半の内容は前半より良かった」と振り返ったが、後半は6分に北爪の右クロスに大西が頭で合わせ、19分には町田のスルーパスに仲川が反応。庄司や町田がDFを引き付けてからのヒールパスやダイレクトでのパスワークを見せるなど本来の専大らしいサッカーで主導権を渡さなかった

 ただ、今大会をもって西ヶ谷隆之監督が退任する中京大は後半8分の“切り札”MF中村亮太(3年=中京大中京高)投入からゴールの予感を高める。20分には中村の豪快な右足FKがゴールを捉え、28分には右サイドから切れ込んだMF石川誠也(2年=八千代高)の決定的なラストパスに中村が飛び込む。だが、専大は鈴木雄也(3年=武相高)と栗山直樹(3年=清水東高)の両CBが声を掛け合いながら、小さなミスを修正し、自ら身体を張った守りも見せて中京大を完封する。パスや個人技で中京大の堅守を揺さぶりながら、PAでの判断が遅れるなど3点目を奪うことのできなかった専大だが、それでも後半ロスタイムのピンチをGK朴泰希(4年=千葉U-18)の鋭い飛び出しで防ぐなど相手の追撃を許さずに決勝進出の権利を得た。

 専大は地元・川崎市の川崎Fと提携し、主力選手などが川崎Fの練習に参加。トップクラスの選手と対峙してきたことで大学生相手では自信を持ってパス回しをすることができている。序盤こそ堅守の中京大に距離を詰められて足にかけられたが、町田と庄司を筆頭に仲川、MF下田北斗(2年=大清水高)、MF長澤和輝(2年=八千代高)と技巧派たちが自信を持って繰り出すパスワークを完全に封じることは困難。この日も後半はボールを自在に動かして中京大を振り回した。また見逃すことができないのは、その走力だ。毎日20分超のペース走を徹底して行ってから練習をスタートさせているため、走り負けることがない。準々決勝から中1日で迎えたこの日の終盤に庄司がギアを一段上げてプレッシャーをかけるなど、もうひとつの絶対的な武器が勝利の要因となっていた。

 3戦15発の攻撃力と走力などを備えた「強い」専大の決勝の対戦相手は、関東勢対決となる明治大。庄司は「前からのプレッシャーが速い。でもビビらずいけば攻撃的なサッカーができる。プライドを持って戦えばいい結果につながる」。創部初の全国大会で迎える初の国立。「最強の初出場チーム」が聖地で頂点に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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