beacon

[選手権]U-18代表・鈴木武蔵がハット!!初出場・桐生一が3発発進

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.2 全国高校選手権2回戦 大社0-3桐生一 ニッパ球]

 第90回全国高校サッカー選手権は2日、各地で2回戦を行い、ニッパツ三ツ沢球技場では大社(島根)と桐生一(群馬)が対戦した。全国選手権初出場の桐生一は、アルビレックス新潟入団が内定しているU-18日本代表FW鈴木武蔵(3年)のハットトリックで3-0と快勝し、初陣を飾った。明日3日の3回戦では奈良育英(奈良)と対戦する。

 “武蔵シフト”がはまった。風下に立った前半は「0-0でもいいかなと思っていた」(小林勉総監督)という桐生一だったが、苦しいロングボールにも鈴木が抜群の身体能力を生かしてボールをおさめ、起点となる。高い位置からのプレッシャーも効き、ショートカウンターで大社ゴールを襲った。

 狙いどおりの形で先制点を奪ったのは前半27分。素早いリスタートから右サイドに展開し、FW横堀勝也(3年)のスルーパスからDF宮崎陽(3年)が抜け出し、ゴール前にグラウンダーのクロスを送る。これに走り込んだのが鈴木だ。

「(FKが)クイックで始まって、チャンスだと思ってダッシュした」。ジャマイカ人の父を持つ褐色のエースは50m5秒9の俊足を飛ばしてゴール前に飛び込み、右足でゴールに押し込む。苦戦を予想した前半を1-0で折り返すと、後半は鈴木の独壇場となった。

 後半開始45秒、左サイドのMF池田稔樹(3年)からの折り返しにニアサイドに走り込み、右足アウトサイドで合わせる技ありゴール。2-0と突き放すと、後半4分には右サイドからドリブルでPA内に切れ込んだところでMF有藤世紀(3年)に倒され、PKを獲得した。

 普段、チームでPKを蹴るのはMF金田理央主将(3年)だったが、「ハットトリックになるかなと思って蹴らせてもらった」(鈴木)と自らキッカーを務める。落ち着いてGKの逆を突き、ゴール右に決めてハットトリックを達成。後半立ち上がりの5分で3-0とリードを広げた。

「後半の立ち上がりに追加点を取れたのが大きかった」と小林総監督が振り返るとおり、あとは前がかりになる大社をカウンターで突き、着実に得点を重ねるだけ。4-3-3のセンターFWに入った鈴木は厳しいマークを受けたが、「それも想定内。そのほうが周りの選手が空いて、やりやすくなる。(鈴木)武蔵をおとりにして他の選手が活躍する状況が出てくれば、自分たちのサッカーになる」と、理想の試合展開になるはずだった。

 後半6分、左サイドからドリブルで仕掛けた鈴木は一度は倒されながらも再び起き上がり、ゴールへ突進。同14分にも左サイドからの折り返しをPA内で受けると、DFに囲まれながら強引に反転し、左足を振り抜いた。しかし、フィニッシュは枠を捉え切れず、4点目とはならない。後半26分のドリブル突破からのシュートもGKの正面だった。

 計7本のシュートを放った鈴木だったが、シュートシーンでは周囲に味方がフリーでいる状況もあった。小林総監督は「決定機があったのに、無理にシュートを打ったのは反省点。3-0という点差もあったと思うが、敵を引き付けておいて周りを使うべきところで『俺が俺が』となる」と、勝利の立役者にあえて苦言を呈した。

 大社は後半32分、MF青木康平(2年)のスルーパスからFW高橋拓也(3年)が抜け出す決定機をつくった。GKもかわし、無人のゴールを狙った高橋のシュートは枠を外れ、同37分にも高橋のFKに飛び込んだDF中村拓也(2年)が触れば得点という絶好機を迎えた。完封勝利の桐生一とはいえ、危ない場面がなかったわけではない。

 2011年の鈴木はU-17W杯やU-18日本代表の海外遠征などの過密日程と相次ぐ負傷に悩まされた。これまで公式戦で先発したのは群馬県大会決勝の前橋育英戦だけ。小林総監督は「育英戦と今日だけがスタメン。あとは後半からしか使っていない。チームのことを考えると、バランスが悪くなることもある」と指摘する。圧倒的な個の力を持つからこそだが、強敵ぞろいの選手権を勝ち抜いていくには、必要不可欠な存在だ。

「今日の明日で変わるとは思えないが、周りが見える判断力がほしい。これからは(鈴木)武蔵もさらにマークされる。人を使えないと、スタメンもなくなる。相手を引き寄せてくれる仕事はしてくれるので、いなくなるとしんどいけど……」。小林総監督の悩みが解決されたとき、初出場の桐生一は大会のダークホースになるはずだ。

[写真]後半1分、桐生一FW鈴木武蔵が2点目を決める
(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
【特設】高校選手権2011

TOP