beacon

[選手権]苦難乗り越えて国立に立った尚志「胸を張って」福島へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.7 全国高校選手権準決勝 尚志1-6四日市中央工 国立]

 憧れの舞台で勝利することは簡単ではなかった。リスクを負って反撃に出たところを逆に突かれて連続失点を喫した。ただ尚志は東日本大震災よって福島県の人々が苦しんだ11年度に県勢初の全国選手権4強進出、そして国立競技場でのプレーを果たし、福島県のサッカーの歴史に大きな大きな1ページを刻んだ。

 3月11日を境に環境は激変した。福島第一原発事故の影響によってサッカー部は一時解散となり、練習再開後も屋外でのトレーニングは2時間限定。雨が降ればそれも中止となった。先が見えない日々に新1年生3人が入学を辞退。ただその中でも地道に強化してきたチームは夏の全国高校総体では8強へ進出し、全国リーグの高円宮杯プレミアリーグを戦い抜いた。そして選手権での躍進。厳しい戦いの連続だったが選手権で3勝を挙げた。

「ウチがペースを握った時に得点できなかったのが痛かった。イケイケになったところではまってしまった」(仲村浩二監督)この日は悔しい敗戦となったが、0-4の後半37分には交代出場の10番FW福永裕大(3年)のアシストから「絶対に1点取り返すという気持ちだった」というMF山岸祐也が右足で豪快に「国立初ゴール」を叩き込んだ。

 全国大会の期間中も被災地代表として常に注目を浴びて落ち着かない毎日。それでも「福島に勇気と感動を与えよう」と一丸になって戦って壁を破った。3年生たちにとってはこれが最後の試合となったが、仲村監督は被災地の代表として地元に勇気を与えた選手たちに「福島に元気を与えることができた。これから一生懸命生きて、貴重な経験を人生に活かしてほしい」とエール。主将のSB三瓶陽(3年)は「(不安はあったが)3年間このメンバーでやってこれた。うれしいし、誇りに思っている。1年生のときの目標は全国制覇でしたけど、やりきった感はあります」。国立進出で満足はしていなかった。だからこそ敗戦は悔しかった。涙が止まらなかった。ただ「胸を張って帰ろう」という指揮官の言葉と誇りともに尚志は福島へ凱旋する。
 
(取材・文 吉田太郎)

▼関連リンク
【特設】高校選手権2011

TOP