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ブリスベン・ロアーFW「FC東京は勝ち進むだろう」

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[5.2 ACL GL第5節 F東京4-2ブリスベン・ロアー 国立]

 ブリスベン・ロアーのアルバニア代表FWベサード・ベリシャはFC東京に2-4で敗れ、決勝T進出の可能性が消滅した試合後にも胸を張った。「ポゼッションという面では、我々はFC東京にも負けなかったと思う。彼らも1タッチ、2タッチでプレーしようとしていたが、カウンターに出る時間帯もあった。でも、我々はパスをつないで点を取りに行く戦い方を最後まで実行できた。簡単なミスをしないとか、そういう経験の面で差が出たけれど、内容は悪くなかった」。

 ブリスベン・ロアーは、4月22日に行われたAリーグのグランドファイナルで2-1と勝利している。この結果、2年連続でオーストラリア王者に輝いた彼らは、オーストラリアのサッカー界に新たなスタイルを根付かせようとしている。

 これまでオーストラリアのサッカーと言えば、ロングボールを放り込み、屈強なフィジカルを生かしたキック&ラッシュ・スタイルが主だった。だが、ブリスベン・ロアーは最終ラインから徹底的にボールをつないでいくスタイルを採用している。F東京のMF高橋秀人も「相手もビルドアップしてくるチームで、必ずしもパス回しの面で(F東京が)優位性を保てたわけではない」と認めるように、ブリスベン・ロアーがボールを回す時間帯も長かった。

 やろうとするサッカーが、日本のクラブ相手にできたこと。彼らにとって、それは勝ち点に等しい大きな収穫だった。「僕たちはなかなか日本や韓国、中国のクラブと戦う機会がない。FC東京もACLは初出場だったと思うけど、同じ初出場でも僕たちよりは経験がはるかにあるチームだった。こういう機会から多くのことを学ばなければいけない」とベリシャが言えば、キャプテンのDFマシュー・スミスも、「ACLの初戦でFC東京に対して、何もできなかった。あのときに比べれば、パスもつなげたと思うし、やっていることが浸透し、質も高まってきたと思う」と、自分たちは成長できたと話す。

 とはいえ、終盤にはオーストラリア選手特有の強さを生かし、ハイボールを送る戦い方を採用してもよかったのではないか。そう聞くとベリシャは「それは違う」と答えた。「僕たちはどんなときでも、このスタイルで点を取りに行きたいと思っている。もちろん、監督が代わったりすれば、やることも変わるかもしれないけどね。でも、常にパスをつなぎながら点を取りに行く、このやり方を貫くことが大切だと思う」と、現時点で自分たちのストロングポイントに頼らず、徹底してパスをつなぐ戦い方にこだわりたいという考えを語った。ラド・ヴィドシッチ監督も「私たちが10人で引いて守れば、FC東京にとってより難しい試合になったかもしれません。でも、そうはしませんでした。私たちはパス主体のサッカーをやっていくんですし、どうプレーするかを学んでいるところです」と、目先の勝利ではなく、先を見据えていることを強調した。

 F東京が、どこまで勝ち進むと思うかという質問に対し、ベリシャは「大会のかなり先まで勝ち進むだろう」と即答した。「規律があって、フェアなチームだ。プレースタイルはすごく好きだよ」と、自分たちと似たサッカーを展開する日本の首都チームを評し、さらなる躍進を予想した。

 今大会の敗退は決まったブリスベン・ロアーだが、彼らはすでに来季のACL出場権を獲得している。「ここからオーストラリア・サッカーのイメージを変えていきたい」と意気込みを語るラド・ヴィドシッチ監督の下、彼らがどのような成長を遂げているか。今後のACLを見る上での新たな楽しみになるだろう。

(取材・文 河合 拓)

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