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"格上"だったオーストラリア、悲しく響く「W杯ベスト4」

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[6.17 W杯アジア最終予選 オーストラリア2-1日本 メルボルン]

 これが本当にW杯でベスト4を目指すチームなのか。岡田ジャパンの最終予選初黒星は、あまりにもあっけなかった。最終予選無失点を誇っていたオーストラリアから初ゴールを奪ったことも、何のなぐさめにもならない。

 「よかったです。でも、負けて悔しい」。ゴールについて聞かれたDF田中マルクス闘莉王は一言だけ言葉を発し、足早にバスに乗り込んだ。試合後は悔しさのあまり涙を流したといい、目は真っ赤に腫れ上がっていた。

 2失点はいずれもセットプレーから。流れの中で崩されたわけではないが、パワーと高さを前面に押し出したオーストラリアの猛攻に耐え切れなかった。何より自分たちの目指すべきパスサッカーや流動的な攻撃を出せなかった現実が重くのしかかる。

 MF中村俊輔やMF長谷部誠、MF遠藤保仁ら主力を欠いていたとはいえ、それは相手も同条件だった。とにかくパスが回らず、ポゼッションを握れない。運動量が少ないからパスコースもないし、数的優位もつくれない。小柄な選手が並ぶ攻撃陣はアジリティーを生かして突破したかったが、1対1だけでは苦しい。数的優位をつくって崩したいはずが、そうした連動性はかけらも見られなかった。

 「一発を狙ったり、単調なときが多すぎる。だから押し上げの時間が足りない。ポゼッションして、後ろからもどんどん出て行くことができれば。それができないと、通用しない」。FW玉田圭司はそう課題を挙げた。

 6日のウズベキスタン戦(1-0)、10日のカタール戦(1-1)と、同じような試合が続いている。中盤で後手を踏み、守勢を強いられ、ポゼッションができない。いずれの試合も1得点を決めることはできたが、それ以上が続かず、失点だけが1点ずつ増えていった。

 格下相手であれば耐え切れても、相手が強くなれば甘くはない。セットプレーとはいえ、きっちりと2得点を奪ったオーストラリアの方が日本よりも“格上”だった。

 アジアではトップクラスの力を持っているオーストラリアだが、W杯本番では良くてベスト16というチームだろう。FW岡崎慎司は「オーストラリアはアジアでは強いけど、世界ではそこまで強くない。そんなところに負けていたら上には行けない」と厳しい表情で話した。W杯で対戦する相手のレベルは最低でオーストラリア。グループリーグで同組に入る3チームはすべてそれ以上と考えていい。

 アジア予選は突破できた。だが、それだけでは世界で勝てない。岡田武史監督の繰り返す「ベスト4」という言葉が悲しく響く。そんな絵空事の前に、まずはW杯で「1勝」できる強さをあと1年で身に付けなければならない。

<写真>試合後、力なくサポーターに挨拶する日本代表
(取材・文 西山紘平)

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