beacon

米本だ!平山だ!F東京が若き力で5年ぶりV!!MVPは米本に

このエントリーをはてなブックマークに追加

[11.3 ナビスコ杯決勝 F東京2-0川崎F 国立]

 ナビスコ杯は3日、東京・国立競技場で決勝を行い、04年大会以来5年ぶり2度目の優勝を狙うFC東京と初優勝を目指す川崎フロンターレが激突した。前半22分、ニューヒーロー賞を獲得したMF米本拓司の強烈ミドルでF東京が先制すると、後半15分にもFW平山相太が追加点を決め、2-0で快勝。満員の国立で5年ぶりの栄冠に輝いた。

 4-4-2のF東京はMF石川直宏が左ひざを痛めて戦線離脱中のうえ、DF長友佑都も右肩痛のためベンチスタート。両翼をもがれた“飛車角落ち”のメンバー構成を強いられた。GKは権田修一で、4バックは右から椋原健太、ブルーノ・クアドロス、今野泰幸、徳永悠平。中盤は梶山陽平と米本拓司のダブルボランチで、右に鈴木達也、左に羽生直剛が入り、赤嶺真吾と平山相太が2トップを組んだ。
 川崎Fも4-4-2のシステムで、こちらはベストメンバーを組んだ。GK川島永嗣、4バックは右から森勇介、菊地光将、伊藤宏樹、村上和弘。谷口博之と横山知伸がダブルボランチを組み、2列目は右の中村憲剛と左のレナチーニョが流動的にポジションを変え、前線に鄭大世とジュニーニョが張った。

 様子見の立ち上がりとなることが多い決勝戦でも、攻撃的なサッカーが持ち味の両チームは試合開始から積極的に攻撃を仕掛け、激しい攻防が展開された。

 前半8分、F東京は米本の右クロスからDFのクリアボールを拾った平山が右足でシュートを狙うも、クロスバーの上へ。川崎Fも同11分、中村の縦パスを受けたレナチーニョが鋭い反転からミドルシュートを放ち、ゴールを襲ったが、ここはGK権田がCKに逃れた。

 両チーム合わせて最初の決定機となったのは前半19分の川崎Fの攻撃。縦パスに抜け出し谷口はいったんはGKとの1対1を防がれたが、こぼれ球を素早く拾ってゴール前に折り返す。ジュニーニョは無人のゴールに蹴り込むだけだったが、シュートは大きくふかしてしまった。

 決めるべきところで決めておかないと、逆にやられる。川崎Fにとっては、その典型的なパターンとなった。F東京は前半22分、米本が平山にくさびのパスを入れると、平山がもう一度米本に落とす。18歳のニューヒーローはマークが甘く、コースが空いているのを見逃さなかった。迷いなく振り切った右足のミドルシュートはぶれながらGKを強襲。川島の手をはじき、ゴールネットに突き刺さった。

 反撃に出たい川崎Fだったが、先制点を取ってしっかり守備組織を整えるF東京を攻めあぐねた。中央からの攻撃が増え、ピッチを広く使ったサイドアタックができなくなった。前半36分にはジュニーニョが中央をこじ開け、強引に右足で狙うも、GKがキャッチ。同45分にもジュニーニョが左足ミドルを放ったが、ゴール左に外れた。

 後半に入っても自分たちのリズムで試合を進めたのはF東京だった。開始1分、左サイドから逆サイドまでボールを展開し、最後は鈴木が右足でシュート。GKがなんとかセーブしたが、F東京の強烈な“先制攻撃”で後半も始まった。

 同点ゴールを目指し、攻撃の圧力を強める川崎Fだが、F東京の守備陣もバランスを崩さない。後半12分、自陣からのロングボール1本で鄭大世が抜け出した場面も、GK権田が体を張って防いだ。

 そして後半15分、前がかりになる川崎Fの裏を突き、F東京が狙い通りの形で追加点を奪った。川崎FのCKをしのぐと、逆にカウンターに持ち込み、羽生が左サイドの鈴木に展開。鈴木はファーサイドまでクロスを送ると、平山が角度のない位置から倒れ込みながら頭で押し込み、2-0とリードを広げた。

 理想的な試合運びを見せるF東京は2点目の直後に赤嶺に代えてDF長友佑都を投入。鈴木をFWに上げ、長友が中盤左サイドに入り、羽生が右サイドに回った。

 2点ビハインドとなり、もう攻めるしかない川崎Fは後半25分、村上に代えてMF田坂祐介を投入。森を左サイドバックに回し、田坂が右サイドバックに入った。

 直後の後半26分にはレナチーニョの横パスを受けた中村が右足で強烈なミドルシュートを放ったが、GK権田がセーブ。逆に同29分、バランスの崩れたDFラインのギャップを突かれ、決定的なピンチを招いた。

 縦パス1本で長友が最終ラインの背後を突き、PA内に突進。GKをかわし、ゴールに流し込もうとしたが、必死に戻った谷口が体を張って防ぐ。さらにこぼれ球を拾った鈴木の右足シュートは右ポストを直撃。F東京としては優勝を決定付けるチャンスを逃したが、川崎Fも命拾いした。

 F東京は後半29分、羽生に代えてDF平松大志を投入し、平松がそのまま右MFの位置に入る。中盤の両サイドに平松と長友というDFが本職の選手を置く守備的布陣で逃げ切りに入った。

 川崎Fは後半34分、レナチーニョに代えてFW黒津勝をピッチに送り込む。田坂が中盤の右、黒津が左に入り、中村がボランチに下がると、最終ラインは右から森、菊地、横山、伊藤に変化。さらに同39分、横山をFW登里享平に交代。伊藤がセンターバックに戻り、登里が左サイドバックに入った。

 できる限りの手を尽くし、攻撃の枚数を増やして最後の猛攻に出る川崎F。後半41分にはジュニーニョの右クロスを鄭大世が打点の高いヘッドで合わせるが、惜しくもクロスバーを叩いた。

 F東京は後半42分、鈴木に代えてDF佐原秀樹を投入。徹底的に守りを固め、川崎Fの反撃を迎え撃った。ピッチ上にF東京はDF登録の選手が7人、川崎FはFW登録が4人。終盤は攻守の構図がはっきり分かれたが、タイトルへの執念が実ったのはディフェンスに全精力を傾けたF東京だった。

 川崎Fは後半44分、再びジュニーニョの右クロスに鄭大世が頭で合わせたが、シュートはゴール右へ外れ、万事休す。最後までF東京の分厚い守りをこじ開けることはできなかった。

 2-0で逃げ切ったF東京は5年ぶり2度目となるナビスコ杯のタイトルを獲得。MVPには先制点を決めた米本が選ばれ、ニューヒーロー賞とのダブル受賞となった。

(取材・文 西山紘平)

TOP