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ルーニー劇場、電光石火の2発に「エキサイティングなゲーム」

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[12.18 クラブW杯(FCWC)準決勝 G大阪3-5マンチェスターU 横浜]

 嵐のような4分間だった。後半29分にFW山崎雅人のゴールで2-1と1点差に迫られると、赤い悪魔が突如目覚めた。1分後の後半30分にFWウェイン・ルーニー、同33分にMFフレッチャー、同34分には再びルーニー。わずか4分で3得点のゴールラッシュでG大阪の夢を打ち砕いた。

 まさに“ルーニー劇場”だった。この日の先発はFWテベスに譲り、後半28分からの登場。そのわずか1分後にゴールを許したのだから、気が気ではなかった。失点から1分後、フレッチャーのフィードに後方から走り込み、鮮やかなステップでDF中澤聡太を振り切ると、左足で冷静に流し込んだ。4-1の後半34分にもMFギグスのスルーパスに抜け出し、右足でダメ押し。出場から6分間で2得点。6万7618人の度肝を抜いた。

 「エキサイティングなゲームだった」。顔を紅潮させた“悪童”は「自分がベンチから見ている時間も、プレーしている時間も、チームとしてベストな90分だったと思う」と胸を張った。「こういうクラブにいれば、常にチャンピオンになることを期待されるし、実際にチャンピオンになれるチャンスもある。(昨シーズン)イングランドのチャンピオンになり、欧州のチャンピオンになり、今度は世界のチャンピオンになる。すべてのタイトルを獲るつもりだ」と鼻息を荒くした。

 前半はG大阪のプレッシャーに苦しめられ、劣勢の時間帯もあった。それでもセットプレーから2得点。2-0とリードを広げた後半は余裕の試合運びでそのままゲームを終わらせようとしていた。そのさなかの山崎の一発。これがマンチェスター・Uの闘志に火をつけ、本気にさせた。その中でもG大阪の選手が「ルーニーが入って攻撃のテンポが変わった」と口をそろえるほど背番号10の存在感は別格だった。昨季はFWクリスティアーノ・ロナウドのアシスト役に回ることも多かったが、元来は生粋のストライカー。セカンドトップの位置から飛び出し、一瞬のタイミングでゴールを陥れるスナイパーのような動きにG大阪の守備陣はまったく対応できなかった。試合後、ルーニーとユニホーム交換したDF山口智は「最初は交換するつもりなんてなかったけど、ルーニーひとりにあれだけやられたんで…」と苦笑いするしかなかった。

 21日の決勝では南米代表のLDUキト(エクアドル)と対戦する。ルーニーは「正直、あまりよく知らない。ただ、南米のチャンピオンなら強くて、質の高いプレーをするだろう」と語った。プレミアリーグ、FA杯、欧州CLの3冠を達成した98-99シーズンのチームも超えると言われる史上最強の赤い悪魔が、その底力を見せつけた準決勝。あとは99年大会以来の世界一へひた走るだけだ。

<写真>投入後6分で2得点を挙げたマンチェスター・UのFWルーニー
(取材・文 西山紘平) 

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