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[天皇杯]277日ぶりゴールが優勝弾、外し続けた播戸が最後の最後でヒーローに

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[1.1 天皇杯決勝 G大阪1-0(延長)柏 国立]

 優勝を告げるホイッスルが鳴り響くと、ピッチにひざまずき、両こぶしを力強く握りしめた。FW播戸竜二の一撃で、ガンバ大阪がJリーグ発足後初の天皇杯優勝を達成し、アジア王者として来季もACLに出場する権利を手にした。

 ピッチに入ったのは延長後半開始から。「なんとか得点を」という西野朗監督の思いに、その11分後に応えた。FWルーカスのスルーパスをPA内で受けたMF遠藤保仁がゴール前に折り返すと、ボールはMF倉田秋を経由して播戸の足元へ。最初の左足のシュートはDF石川直樹の体に阻まれたが、もう一度左足でゴールにねじ込んだ。

 「ゴールしか見えてなかった。相手にはじかれたけど、最後までゴールしか考えてなかった。いい当たりじゃなかったし、ミートしなかったけど、1回こぼれてもう1回っていうのは自分らしいかな。きれいには決められないんで」

 ゴールを確認すると、雄たけびを上げながらベンチへ一直線。指揮官、チームメイトと一緒に喜びを爆発させた。「(西野監督には)“ヒーローになってこい”みたいな感じで送り出された。期待されている中でずっと応えられてなかった。恩返しというか、やっと期待に応えられたし、あそこ(ベンチ)に行けばみんなと喜べるから」とはにかんだ。

 「外したらどうしようとか考えず、無心で蹴れた」。播戸は、劇的ゴールの瞬間をそう振り返った。公式戦での得点は昨年3月30日のJリーグ東京V戦(2-1)以来、なんと277日ぶりだった。今季得点はリーグ戦ではその1点のみ。その他の公式戦でもACLのグループリーグで2得点を決めていただけだった。今季4ゴール目がチームを優勝に導く決勝弾。背番号11が、最後の最後で“男”になった。

 「振り返れば、9割9分は苦しかった」という08年シーズンだった。5月に肝機能障害で入院し長期離脱。9月3日のナビスコ杯で復帰するまで、119日間も要した。復帰後はコンスタントに試合に出場していたが、ゴールを奪えない時期が続いた。クラブW杯でも天皇杯でも決定機にシュートミスし、天を仰ぐ姿ばかりが目立った。「自分が点を取れるのかって自問したこともあった」と明かす苦しい日々。それでも自分を信じ続けた。

 「ずっと取れずに外していたけど、自分を信じること、自分のやるべきことをやるということを最後まで続けてきた。(12月29日の準決勝の)横浜FM戦もダメだったけど、次の試合は09年になるから、新しい年になるから取れるやろって」。先発から外されても腐ることなく、じっと出番を待ち、与えられた15分という短い時間の中で大仕事をやってのけた。

 「今日点を取って喜ぶために苦しんだのかな。みんなには申し訳ない。120分出てる選手もいるのに、俺は15分だけで、その中で点を取って、こうやってインタビューを受けたり、みんなから“おめでとう”って言われるんだから」。そうチームメイトに遠慮したように見せながら、最後は「申し訳ないけど、やっぱりいいポジションの選手やな」と屈託なく笑った。終わりよければすべてよし。苦しみ抜いたシーズンを最高形で締めくくり、09年を最高の形でスタートさせた。

<写真>劇的な決勝点を決めたG大阪FW播戸
(取材・文 西山紘平)

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