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[天皇杯]柏退任の石崎監督、有終の美飾れず準優勝

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[1.1 天皇杯決勝 G大阪1-0(延長)柏 国立]

 「これからはガンバのような強いチームになって欲しいと思う。今日の試合をこれからの糧にして欲しい」。柏レイソルの監督として最終試合となった1日の天皇杯・ガンバ大阪戦を終えて、石崎信弘監督(50)はそう語った。
 柏は前半こそ身体を当てにいく激しいプレスを仕掛け、攻守で主導権を握った。しかし後半に入ると、G大阪の正確なパス回しの前に主導権を握られた。準決勝のFC東京戦で途中出場にして大逆転勝利の立役者となったFWフランサ、FW李忠成を投入するも、切り札にはなれず、試合は延長戦にもつれ込んだ。終了間際、柏はFW播戸竜二に決勝ゴールとなる得点を決められ、儚くも散った。3年間の石崎サッカーの集大成を勝利で飾ることはできず、準優勝で天皇杯の幕を閉じた。
 
 石崎監督が指揮をとった最後の試合、勝って終われなかった選手たちは下を向いた。「ガンバが上手かった。サッカーの質が全然違った。悔しいです」。石崎体制になってから選手として著しい成長を遂げたFW李忠成は、指揮官のファイナルマッチで結果を残せなかった事に悔し涙を流し、言葉少なげにそう言った。また、DF古賀正紘は「監督の為にもタイトルを獲りたかったが叶わず残念です」と俯いた。

 長いようで短い、そして「楽しかった」3年間だった。石崎監督は、05年にJ2に降格した柏を立て直すべく、東京ヴェルディのコーチから06年に柏の監督に就任。就任したシーズンには、明神智和や玉田圭司らチームの主力選手が他クラブへ移籍。苦しいスタートだった。しかし、石崎監督は「辛かった思い出はない」と言い切る。逆に、嬉しかった事は「1年でJ1へ昇格したこと。それから、雰囲気の良いチーム環境でトレーニングや試合が出来たこと」と話した。雰囲気作りに始まりチーム強化に腐心した06年、石崎監督は見事にJ1返り咲きを決めた。そして、J1で迎えた07年は最終順位8位、08年は11位に終わった。「石崎監督、国立で一緒に泣いてくれませんか」。柏での最後の天皇杯となった今大会、スタンドにはいつもそう書かれた応援旗が掲げられた。ファンと共に嬉し涙は流せなかったが、国立で一緒に戦うことが出来た。

 「楽しい3年間を過ごさせてもらった。それはサポーターのおかげ。06年は苦しんだ中でのJ1昇格、08年はなかなか勝てない時にサポーターが支えてくれた。とても感謝しています。これから強くなっていく中でも、今の雰囲気でチームを応援して頂きたい」。最後まで応援し続けてくれたファンにそう伝えた。石崎監督は、09年のシーズンからJ2に降格したコンサドーレ札幌の監督就任が決定済み。また、チームは新たなシーズンへと突入する。目指すべき場所は異なるが、柏レイソルと石崎監督は別々の道を歩き出す。またどこかで出会う日が来るまで、この敗戦を糧に互いの成長は続く。

<写真>この試合で退任する柏の石崎監督
(取材・文 山口雄人)

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