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[選手権]実力伯仲の攻防戦、大津が前回準V校破る!(大津vs藤枝東)

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[1.3 第87回全国高校サッカー選手権3回戦 大津(熊本) 3-2 藤枝東(静岡) 三ツ沢]

 ニッパツ三ツ沢球技場の第2試合では3回戦屈指の好カード、全国高校総体4強の大津(熊本)と昨年度の全国選手権準優勝の藤枝東(静岡)が戦い、大津が3-2で競り勝った。大津は初の4強をかけて、5日の準々決勝(三ツ沢)で鹿島学園(茨城)と戦う。
 
 息が詰まるような、緊迫した攻防戦だった。逃げ切ろうとする大津を必死の形相で追いかける藤枝東の藤色のユニフォームが徐々に飲み込んでいく。FW黒木一輝、MF西田直斗(ともに3年)の両エースのアベックゴールなど大津の3-1リードで迎えた後半34分、藤枝東はセットプレーの流れからゴール前で粘り強くボールをつなぎ、最後はオーバーラップしていたDF岡崎太一(3年)が右足でゴールを破る。これで1点差。残り6分、藤枝東は188cmのFW新井成明(3年)にボールを集め、前線へなだれ込もうとする。
 昨年度の準優勝メンバーでもある藤枝東・岡崎が「自分たちがやってきた中で一番いいのサッカー」で藤枝東は攻め続ける。だが大津も譲らない。DF藤本大主将、DF比嘉大祐(ともに3年)の両CBらが必死にボールを跳ね返し、ゴールを許さない。試合終了間際、大津の勝利か、同点PK戦か、それとも・・・。実力校同士が互いのプライドと“生き残り権”をかけた戦い。ワンプレーごとに応援団からの歓声と悲鳴にも似た叫び声がスタジアムに響き渡っていた。

 試合は4分が掲示されたロスタイムへ突入。何とか相手PA付近へボールを運びたい藤枝東に対し、敵陣でボールキープして時間を使いたい大津。“わずか”1点のビハインドを追う藤枝東はMF小林勇輝主将(3年)の「気持ちを強く持て!」という声が藤色軍団を鼓舞する。そして42分、藤枝東は右クロスにパワープレーで前線へ上がっていた岡崎が頭から飛び込んだ。だが、ボールはゴール右外へ。そして表示の4分が過ぎ、試合終了を告げる笛が鳴り響くと、藤色のユニフォームはバタバタとピッチに倒れこんだ。その後ろでは大津の青いユニフォームが歓喜の雄たけびを上げていた。立ち上がることのできない藤枝東の選手たちに大津イレブンが駆け寄り抱き起こしていたが、藤枝東イレブンの涙は止まらなかった。

 大津の藤本は「勝った瞬間、とてもうれしかった。絶対勝つという気持ちが相手を上回ったと思う」と興奮冷めやらぬ表情で喜びを語った。そして報道陣からロスタイムが4分あったことを聞かされると「4分もあったんですか? そんなに感じなかった。試合に集中して、入り込んでいたので・・・。藤枝東も昨年決勝で負けた雪辱を晴らそうと必死だったと思います。勝ってよかった」と胸をなでおろしていた。

 試合は開始から互いがスキルの高さを披露。ダイレクトパスやワンツーでの崩しにスタジアムが湧いた。その中で大津は前半に黒木、西田のゴールで2点を先取し、後半10分に1点差に迫られながらも再び引き離すなど相手に1度もリードを与えなかった。対して藤枝東の小林主将は「決定力、サイドからのクロスの精度とか勝つために必要な要素で相手の方が上だった。これは認めないといけない」と涙で瞼を真っ赤に腫らしながら敗戦を受け入れていた。

 強豪校対決を制した大津の平岡和徳監督は「苦しい試合だった。よく勝ってくれた。簡単に勝てる相手ではない。持っている力が全部出たと思う」。そして「サッカー王国に勝てた。熊本にとっての財産を得られた」と喜んだ。今年の大津は全国総体でチーム史上初の4強入りを果たしたチーム。平岡監督はさらなる期待をこめて夏場に35試合の対外試合を組んで鍛え上げてきた。平岡監督がチームバスを運転した総距離はわずか1ヶ月間あまりで3150kmにも及んだという。そのトレーニングで身についた力でつかんだ勝利。今冬、優勝を目指して東上してきた九州の雄は「新たな歴史」を作るための、大きなの難関を乗り越えた。

<写真>前半25分、大津・西田がチーム2点目のゴール
(取材・文 吉田太郎)

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