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[戦評]大会を通して見える攻撃重視の「トレンド」(鹿児島城西vs宇都宮白楊)

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[1.3 第87回全国高校サッカー選手権大会3回戦 鹿児島城西(鹿児島)7-1宇都宮白楊(栃木) 市原臨海]

田村修一の「視点」

 鹿児島城西(鹿児島)のサッカーはシンプルで、力強かった。特筆すべきは判断の速さ。判断が速く、プレーが非常にスピーディーなため、シンプルな攻撃でも宇都宮白楊(栃木)のDFは付いていけなかった。九州のチームの特徴であるフィジカル、スピードもある。ただ、一昔前の国見(長崎)のようなフィジカルを前面に押し出した走り勝つサッカーとは一線を画している。早く前に蹴るというシンプルさは共通しているが、そこに判断力が伴っている。テクニックと判断力が、プレーの速さにつながっていると思う。

 全得点に絡んだ大迫勇也(3年)はフィニッシャーとしての力を持っている。シュートの振りが速く、小さい。2点目はGKの動きをよく見て、GKが体勢を崩すまでためてから蹴った。こうしたゴール前での落ち着きも含め、高校生離れした能力を持っているのは間違いない。

 ただ、今大会は全体として守備が弱い印象がある。初戦で姿を消した市立船橋(千葉)に以前のような組織的な守備がなかったのが象徴的で、どのチームも守備より攻撃にバランスを置いている。オフェンス重視になって、それにディフェンスが追いついていない感じを受ける。

 これが今の高校サッカー界のトレンドなのだろう。欧州ではすでにそうした傾向がある。日本の場合、守備から入るチームづくりが多かったが、考え方が少しずつ変わってきているのかもしれない。良い、悪いは別として、サッカーというのはこうして攻撃、守備にバランスが振れながら進歩していくものなのだと思う。

<写真>攻撃重視が今大会のトレンド。FW大迫勇也(右)が引っ張る鹿児島城西は象徴的なチームだ

(取材 フットボールアナリスト田村修一)

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