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Jを目指せ! by 木次成夫

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第75回「JFL前期8節 MIO健闘中」
by 木次成夫

上のツーショットは、MIOびわこ草津のMF浦島貴大とFWアランです。

浦島貴大(19歳、北大津高校卒=2年目)
「滋賀県内では同学年の乾貴士(野洲高校→横浜Fマリノス)と並ぶスターだった」(MIO関係者)とか。Jリーガーを夢見て、複数のクラブの練習に参加したものの、プロ契約には至らず、大津市内の実家から通えるMIO入り。スポーツ推薦などで大学進学という選択肢もあったはずですが、本人いわく「勉強が嫌いなんです(笑)」。昨季はMIO唯一の高卒1年目ながら、シーズン途中から主力に定着し、主にボランチ、右SBでプレー。勤務先は酒屋。全国地域リーグ決勝大会「決勝ラウンド」2日目のニューウェーブ北九州戦ではゴールを決めて、チームを勝利に導くなど、JFL昇格に大貢献しました。“MIOの存在”は浦島にとって幸いでしたが、“浦島の存在”はMIOにとっても、幸いだったわけです。

FWアラン(19歳、日本航空第二校卒=石川県=1年目)
8節終了時点で6ゴール(得点ランク4位)。もはやエース的存在です。生まれはブラジルのリオ・デ・ジャネイロで、日本留学の“きっかけ”は「(高校の)セレクションです。合格したのはFW、MF、DFそれぞれ1人だったんですが、合計150人くらい参加しました」(アラン)。来日当初は、日本語はいうまでもなく、食事面でも苦労したそうですが、今や178cm、72kg。“自分の意見がしっかりといえる”点では、並みの日本人よりも上だと感じるくらい日本語も上手です。

「1日に6時間、日本語を勉強したこともありました」(アラン)

高校3年時は、全国選手権石川県予選ベスト8で鈴木大輔(07年U-17日本代表、現・アルビレックス新潟)擁する星稜高校と対戦し、ロスタイムに失点を喫して、0-1で敗退。JFLチームを選んだ理由は、「1年目から試合でプレーできるチームの方が成長できると思いました。Jリーグ・チームに入れたとしても、外国人は3人しか試合に出られません」(アラン)。

4月29日の対ジェフ・リザーブズ戦、浦島はスタメン出場して後半27分に交代。アランはヒザが本調子でないこともあってか、後半開始時から交代出場。2人のプレーを見て、浦島の「1年間」は無駄ではなかったし、アランの選択も正解だと思いました。また、MIOのように「上を目指す」地方クラブが増えてほしい、とも――。浦島やアランのようにチャレンジしたい選手は各地にいるでしょうから。

ジェフ・リザーブズはチーム名の通り、ジェフ千葉の「予備軍」です。MIO戦のスタメン平均年齢は20、1歳。6人がトップ・チームからの登録変更。他、前・ユース2人、前・ジュニアユース1人(FW金井涼太=15歳)。いわば「若きエリート」揃いですが、この試合を見る限り、“教えられたサッカーをしようとしすぎて、意外性が足りない”という印象を持ちました。例えば、“元Jリーガーではない”MIOのボランチ、若林令緒(30歳)が独特のセンスでゲームメイクしたのとは対照的。ただ、見方をかえれば、老獪なベテランの存在こそ、サテライト・リーグよりもJFLなど社会人リーグの方が若手の成長につながる(かもしれない)要因なのでしょう。

試合はMIOがロスタイムにPKを決めて、0-1で勝利を飾りました。“運が良かった”というよりは、ドリブル突破が得意な選手を次々に投入した平岡直起“新人”監督の采配が大当たり。(試合写真は最新NEWS)

ハーフタイム
左SB枡田雄太郎→FWアラン(MF壽健志が左SBへ)
後半23分
MF大江勇詞→MF内林広高
後半27分
右SB浦島貴大→MF木島徹也=今季加入=前・FC岐阜(MF金東秀が右SBへ)

人工芝での練習が多いためか、慣れない“整った天然芝”でのパス・スピード調整に戸惑いが感じられましたが、ドリブラーの層が比較的厚い点が功を奏しました。金、壽ら複数のポジションをこなす上にスタミナも抜群な選手も複数いるMIOならではの采配ともいえます。

いずれにせよ、8節を終えて6位は大健闘。とはいえ、今後は……選手の蓄積疲労が懸念材料です。ジェフ戦は前日に開催地の千葉県成田市に入りましたが、経費削減のため、新幹線など電車は利用せずに、大型バスをチャーター。片道約6時間の長旅でした。次節(5月3日)、ホームのFC琉球(13位)戦の後には、アウェーで栃木SC戦(5月6日)が控えています。疲労のピークに、現在2位の「全員プロ・チーム」と戦うわけです。その上、栃木SCは、4月27日=アウェー(流通経済大=カシマ開催)→5月3日=ホーム(ジェフ)→6日=ホーム(MIO)。つまり、「近場の往復」後にホーム2連戦。MIO選手たちは、「行きは新幹線を利用する予定」(関係者)だそうですが、4月29日に試合をした点を含めて、明らかに不利です。

ちなみに、首位の横河武蔵野FCは27日=アウェー(ソニー仙台)→5月3日=ホーム(流経大)→6日=アウェー(ジェフ)→10日=ホーム(栃木)。運が良いとしか言いようがありません。

ところで、MIOはアウェー試合前夜、選手とスタッフに規定の「夕食代」を支給しています。これも、経費削減策だとか。確かに、ホテル内レストランなどを団体予約するよりは、安くすませることは容易でしょう。夕食がてらのミーティングができないとか、栄養バランスなどの管理ができないなどデメリットはありますが、選手からすれば“アウェーの町を歩く”ほうが楽しいかもしれません。JFL昇格したということは、“日本各地を旅行する”ということですし――。例えば、飛行機で移動した上に「名物の牛タンを食べた選手もいた」(関係者)アウェーのソニー仙台戦(4節、3月30日)は1-3の快勝でした。

ということは、栃木では餃子を食べて……? もしかしたら、MIO最大の武器はハングリー精神よりも、“疲労を含めて、新たなステージを楽しむ”メンタリティなのかもしれません。

▼Jを目指すクラブの動向

●東北リーグ2部南ブロック
(1節、27日)
クレハ 1-5 福島ユナイテッドFC
※福島ユナイテッドは、旧・ペラーダ福島(昨季2位)

●関東リーグ
(4節、26日)
東邦チタニウム 0-3 町田ゼルビア(昨季優勝)
※ゼルビア4連勝 

●関西リーグ
(3節、27日)
バンディオンセ加古川(昨季優勝)5-0 神戸FC1970
※バンディ3連勝。河野将悟(新加入=前ジェフリザーブズ)がハットトリック

●中国リーグ
(2節、27日)
NTN岡山 3-1 デッツォーラ島根 
JFE西日本 1-2 レノファ山口
※島根は、旧・セントラル中国(昨季2位)

●九州リーグ
(4節、27日)
三菱重工長崎 0-6 V・ファーレン長崎
OSUMI NIFS 0-1 ホンダロック
沖縄かりゆしFC 2-1 新日鐵大分
ヴァンクール熊本 1-2 ヴォルカ鹿児島
九州INAX 0-1 海邦銀行SC
※V・ファーレン、ホンダロック、ヴォルカは4連勝


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JFL前期:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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