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Jを目指せ! by 木次成夫

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第76回「JFL10節 栃木SC対MIO」
by 木次成夫

栃木は昨季、「J準加盟」を承認されたものの、8位。今季は新加入20人の大補強をしました。うち、大学新卒10人。9節を終えた時点で勝ち点22の3位。1位のファジアーノ岡山、2位の横川武蔵野との勝ち点差は1。対するMIOは勝ち点17の6位。

栃木のスタメンは以下の通り。

GK小針清充(30歳、今季加入=前・仙台、元V川崎など)
右SB岡田佑樹(24歳、今季加入=前・札幌)
CB川鍋良祐(22歳、今季加入=前・青山学院大、浦和Y出身)
CB鷲田雅一(29歳、今季加入=前・山形)
左SB斎藤雅也(22歳、今季加入=前・明治大、FC東京U-18出身)
右MF深澤幸次(23歳、2年目=前・国士舘大)
ボランチ向 慎一(22歳、今季加入=前・法政大)
ボランチ落合正幸(26歳、今季加入=前・川崎F、元・柏など)
右MF佐藤悠介(30歳、今季加入=前・東京V)
FW上野優作(34歳、2年目=前・広島)
FW横山 聡(28歳、2年目=前・湘南)

控えの7人を含めた18人中、新加入=14人。2年目=3人、3年目=1人(久保田勲)。スタメン中、元Jリーガー7人。

対するMIOは、昨季までのメンバーが中心で、スタメン中、新加入選手は2人。

GK田中剛(23歳、前・佐川急便京都=MIOの前身=関西2部)
右SB浦島貴大(19歳、前・北大津高校)
CB石澤典明(22歳、V・神戸からレンタル)
CB田尾知己(24歳、前・ガイナーレ鳥取)
左SB大瀧直也(23歳、今季加入=前・ロッソ熊本、元・山形など)
右MF冨田晋矢(27歳、前・ボルシアフライアルゼンフォーフェン=ドイツ、元・京都サンガなど)
ボランチ金 東秀(24歳=前・大商大)
ボランチ若林令緒(30歳=前・バンディオンセ神戸)
左MF壽 健志(24歳、前・近畿大、G大阪Y出身)
FW幸山聡太(23歳、前・大谷大)
FW アラン(19歳、今季加入=前・日本航空第二高)

栃木は全員がプロで、MIOはプロ2人(アランと石澤)。遠征の疲労も考慮すれば、栃木が快勝しても不思議ではないのですが、結果は栃木が4-3の辛勝。試合後の両監督は対照的でした。勝った栃木の柱谷幸一監督はパフォーマンスの低さを嘆き、「本当に強いチームとはどんなチームなのか、みんなで話し合いたい」と語り、負けたMIOの平岡直起監督は「選手の自信につながったと思う」と、比較的満足気。

1分 1-0 アラン(MIO)
9分 1-1 上野(栃木)
29分 2-1 横山(栃木)
32分 3-1 上野(栃木)
54分 4-1 佐藤(栃木)
57分 4-2 浦島(MIO)
67分 4-3 石澤(MIO)

栃木は、ありがちな「序盤の隙」をつかれて先制点を奪われたものの、その後は、個々のフィジカル能力を生かしたプレーで、得点を重ねました。上野の2得点はヘディング。高さと競り合いの強さは圧巻。横山は、向のシュートをGKがはじいた後の“こぼれ球”を豪快に決め、佐藤は直接FK。深澤の果敢なサイドアタック、岡田の攻守両面でのスピードも目だっていました。

ただ、どちらかというと単調な「堅守速攻」サッカーゆえに、MIOが組織力で挽回できる可能性も感じました。実際、MIOは「前半15分は相手の様子をみるためにロングボールを多用するよう、指示した」(平岡監督)ものの、基本的には持ち前の「ポゼッション・サッカー」を展開。GKの好セーブがなければ、引き分けに持ち込めたかもしれない状況まで追い込むことができました。

「本来なら、4-0くらいで勝たなければいけない試合だったと思う。相手がキープしている際、守備の選手がアラートになっていない。実力ではなく、メンタル面の問題」(柱谷監督)

“MIOの狙い”に対するケアが足りなかったという意味でしょう。実際、4-2になった後、向が退場になり、10人になったとはいえ、守りきれば十分な状況とはいえ、若林を基点にしたMIOの“パス回し”に対して、栃木が効果的打開策を見出せなかった点は、意外でした。“ほぼ”アマチュア・チームの方が、“できること”と“できない”ことを考慮した上でベターなプレーを実践するという点で、「プロらしい」試合運びをしたのですから。MIOの3点目は“CKがらみ”でしたが、CKにいたったのは、ジェフ戦同様に後半に投入された内林広高、木島徹也らのドリブル突破を含め、MIOらしいサッカーを実践したからこそ。FC岐阜で地域リーグも経験している新人「元Jリーガー」監督ならではの、“やりくり上手”采配とも、いえるかもしれませんが……。

ところで、この試合の観衆は4317人。例えば、同じ6日に開催されたJ2では、

水戸(00年昇格)対湘南2653人
岐阜(今季昇格)対鳥栖4347人
徳島(05年昇格)対草津3247人
愛媛(06年昇格)対山形3917人

料金が違うため、一概には比較できませんが、昨季JFL1位の観客数を記録した栃木ならではの“人気ぶり”です。ただ、大補強後の“勝負の年”、その上、この試合の会場だった栃木グリーンスタジムと宇都宮駅間のシャトルバスは無料ということを考慮すると、“伸び悩み”という気がしないでもありません。

ピッチ・コンディションが良い上に、陸上競技トラックがないので、見やすさも上々。運営ボランティアは快活かつ親切で、J参入への思いも伝わってきます。課題は、スタジアム・グルメがイマイチなことと、喫煙スペースが狭すぎること程度なのですが……。

せっかく、相対的に優れた選手を集められるまでクラブが成長したのですが、是非、盛り上がりという点でも「栃木は格が違う」という結果と共に、J参入を果たしてほしいです。そのためにも、例えば、小中高など子供が「プレーする」スケジュールを調整してでも、試合を「見る」機会を増やさないのは“もったいない”と思います。身近な大人のプレーは勉強になるでしょう。また、真岡高出身の上野優作、佐野日大出身の小林成光(30歳、2年目=現在ケガで離脱中)ら「地元の宝」も、戻ってきているのですから。

▼Jを目指すクラブの動向

●東北リーグ1部
(1節、3日)
古河電池FC(昨季8チーム中6位) 0-2 ビアンコーネ福島(今季昇格)
グルージャ盛岡(昨季優勝) 1-1 FC秋田カンビアーレ(今季昇格)

●東北リーグ2部南ブロック
(2節、4日)
福島ユナイテッドFC(昨季2位) 2-1 バンディッツいわき(今季昇格)
*福島ユナイテッドは、旧・ペラーダ福島(昨季2位)

●関東リーグ
(5節、4日)
町田ゼルビア(昨季優勝) 5-1 Y.S.C.C
*ゼルビア5連勝=首位 

●関西リーグ
(4節、3日)
三洋電機洲本 1-6 バンディオンセ加古川(昨季優勝)
*バンディ4連勝=首位

●中国リーグ
(3節=3日、4節=4日)
3節
日立笠戸 1-2デッツォーラ島根 
マツダSC 2-4 レノファ山口

4節
宇部ヤーマン 1-1 デッツォーラ島根
レノファ山口 6-2 日立笠戸
*島根は、旧・セントラル中国。首位=レノファ(勝ち点10)。2位=デッツォーラ(同7)

●四国リーグ
(4節、4月27日、5月4日)
ヴォルティス・2nd(昨季優勝) 6-1 ベンターナAC
南国高知FC 5-1 徳島コンプリール
しまなみFC 0-6 カマタマーレ讃岐(昨季2位)
*讃岐4連勝=首位


▼JFLの結果&順位は↓
JFL前期:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
「リスト&記事リンク」

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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