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Jを目指せ! by 木次成夫

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第78回「関東リーグ7節 町田ゼルビア対日立栃木ウーヴァSC」
by 木次成夫

開幕前、町田ゼルビアは以下2項目の「ゼルビア 2011年宣言」を発表しました。

●2011年、私たちはJリーグ昇格を実現します
●まちに元気、子どもたちに夢と希望を運びます

新加入選手はクラブ史上初の「プロ契約」(以下3人)を含めて10人。

MF山口貴之(34歳、前・鳥栖。町田市出身、読売ユース→元・ヴェルディ川崎など)

FW蒲原(カモハラ)達也(24歳、前・鳥栖。国見高校→国士舘大。昨季は途中からレンタル先のFC琉球でプレー)

FWジョズエ・ソウザ・サントス(20歳、前・鳥栖)

“最大の期待”山口は怪我などで出遅れていますが、チームは開幕7連勝でリーグ前半戦を終えました。

5月18日
前期7節
町田ゼルビア(昨季優勝)3-2 日立栃木ウーヴァSC(同2位)

2位のホンダ・ルミノッソ狭山との勝ち点差は、すでに9。昨季以上に魅惑的かつ攻撃的サッカーができつつある点は、往年の天才MF“戸塚監督ならでは”でしょう。

ゼルビアのスタメンは以下の通り。

GK白子哲平(24歳、前・帝京大)
右SB森川宏雄(24歳=今季加入、前YKK AP)
CB雑賀(サイカ)友洋(24歳=2年目、前・法政大)
CB小池央祐(24歳、前・専修大)
左SB津田和樹(25歳、前・甲府)
左MF酒井 良(30歳、前・草津)
ボランチ柳崎祥兵(23歳=2年目、前・駒澤大)
ボランチ石堂和人(26歳=2年目、前・松本山雅←長野エルザ=現・パルセイロ)
右MF蒲原(カモハラ)達也
FW奨・津季22歳=今季加入、前・桐蔭横浜大=07年関東大学2部14チーム中10位)
FW山腰泰博(22歳=今季加入、前・神奈川大=07年関東大学2部優勝)

1-0 40分
 山腰(アシスト奨・
2-0 61分
 山腰(アシスト酒井)
3-0 82分
 奨・アシスト柏木)
3-1 88分
 舘澤(ウーヴァ)
3-2 89分
 五十嵐(ウーヴァ)

白子、小池、津田、酒井、そして交代出場して1アシストを記録したFW柏木翔一(23歳、前・帝京高校)は、06年関東リーグ2部優勝当時からのメンバーです。昨季と比べて「最大の驚き」は、右でもプレーできる“左サイドアタッカー”石堂と“トップ下”などで持ち味を発揮した柳崎をボランチに置いた点。戸塚監督いわく「そうしたほうが、いろいろなことができるんですよ」。

基本的には両サイドを広く使い、相手陣内深くまで切れ込み、結果として生じる「ゴール前のスペース」を狙うスタイルです。酒井、蒲原に加えて、奨瑤睥哨汽ぅ匹妊廛譟爾任④襪燭瓠∈魑┐鉾罎戮襪函◆箸い辰修Α瀕・暗・砲覆蠅泙靴拭L・蠅痢嵌瑤喀个掘廖∋街・痢屮櫂献轡腑縫鵐亜廚覆鼻△修譴召譴離札鵐垢盡悊い討い泙后・發舛蹐鵝◆肇僖垢了兇蕕掘匹覆鰭坩堕蠅別未發△蠅泙垢・◆箸修譴枠・古咯紂匹箸盡世┐泙后・n
7節を終えて、山腰7得点(リーグ1位)、奨遙掬凄同3位)、柳崎4点(同6位)。石堂5アシスト(同1位)、奨遙乾▲轡好幡同2位)、蒲原3アシスト(同4位)。

客観的に見れば、守備面の脆さが課題ですが、いわば「JFL昇格請負人」の戸塚監督らしい「チーム作り」だとも思います。同大会の難しさは、短期決戦ゆえに体力と“ノリ”が大事な上に、90分で勝負がつかない場合は、PK戦に突入する点です。PK勝利=勝ち点2、PK敗退=同1。つまり、守備重視スタイルが功を奏する可能性もありますが、だからこそ相手守備陣を打ち破るサッカーを目指す策も“アリ”。

06年大会
1位=TDK(勝ち点7=1勝&2PK勝)
2位=FC岐阜=戸塚監督(同6=2勝1敗)
3位=ファジアーノ岡山(同4=1勝1PK敗&1敗)
4位=V・ファーレン長崎(同1=1PK敗&2敗)

07年大会
1位=ファジアーノ(勝ち点6)1勝&1PK勝1PK敗
2位=ニューウェーブ北九州同4)1勝1PK敗&1敗(得失点差+2)
3位=現・MIOびわこ草津=戸塚監督(同4)1勝1PK敗&1敗(得失点差0)
4位=現・バンディオンセ加古川(同4)2PK勝1敗(得失点差-2)

おそらく(間違いなく)、戸塚監督が目指しているのは、運に左右されにくいサッカーです。守備面で脆い要因のひとつは、CB雑賀がセンスで勝負するタイプゆえか、時に淡白なプレーをする点。つまり、雑賀に“反則の上手さ”が加わればベストかもしれません。とはいえ、雑賀を擁するゆえに攻撃的かつ魅惑的サッカーができるとも言えます。また、時には失点しつつも、成長中の選手が美学を貫く方が「子どもたちの夢と希望」に、つながるとも思います。言い方をかえれば、審判を欺いてでも「勝てば官軍」だとすれば、教育上、問題ではないでしょうか。

だからこそ、今後、期待したい選手を“あえて”あげるとすれば……、法政大学で雑賀の「1年先輩」だった森川です。YKK在籍2シーズン、リーグ戦出場2試合(昨季は0試合)。アローズ北陸とのチーム統合(カターレ富山)により、昨季終了後に戦力外通告。富山県出身ゆえ、相対的に短いサッカー“選手”人生よりも、故郷随一の大企業で社員を続ける選択をしたほうが得策だという判断をしても“しかるべき”だったと思います。しかし、森川は「サッカーを余暇で楽しむ」安定した生活よりも、サッカー選手としてチャレンジする道を選びました。戦力外通告を受けたのは「リーグ終了後」(森川)、つまり12月ですから、究極の短期的決断です。現在は、クラブの下部組織を運営しているNPO法人AC町田の職員として、サッカースクールのアシスタント・コーチをしていますが、事前の約束ではなく「ゼルビアに入ってから決まった」(森川)とか。

一見、無謀とも思える選択をしてしまうのが、サッカーの魅力であり、怖さかもしれません。

ちなみにゼルビアはトップチーム在籍選手中、町田市及び隣接した神奈川県相模原市出身選手、9人。町田ゼルビアの前身であるFC町田の下部組織出身、7人。森川ら近隣の大学出身者も多数います。クラブ代表の守屋実氏は「町田から羽ばたいた選手が戻ってこられるようなクラブにしたい」そうですが、その夢は徐々に実現しています。

今後の課題は、トップチーム強化と同時に、いかにファンを増やせるか。ウーヴァ戦の観衆は約2500人(ゼルビア発表)。地域リーグ随一ですが、入場料は無料。プロ監督、プロ選手などで増大した運営費は、主に“将来に期待する”スポンサー料で、まかなっているわけです。

それぞれのセンスが活きている点では日本随一のB級グルメ的(将来的にはA級になりえるかもしれない)“ドリームチーム”だと思うからこそ、ゼルビアを見たことがない町田近辺の方々は“もったいない”と思います。「大東京の部分」ゆえに、いわば地方「全県区」クラブよりも報道が少ない点に「周知の限界」も感じますが、大事なことは強いチームを作ること以上に、より多くの人が「サッカーのある生活」を相対的に楽しいと思える文化を創ること。町田は戦後に発展したニュータウン的要素が強い町ゆえに、大げさではなく「日本の未来」という点でも、ゼルビアには期待しています。

▼Jを目指すクラブの動向

●東北リーグ1部
(18日)
グルージャ盛岡(昨季優勝) 4-0 仙台中田SC
ビアンコーネ福島(今季昇格)1-5 NECトーキン
*首位は3連勝のトーキン。1試合未消化のグルージャは1勝1分け。ビアンコーネは1勝2敗

●東北リーグ2部南ブロック
(4節、18日)
福島ユナイテッドFC(昨季2位) 5-1 中新田SC 
※福島ユナイテッドは、旧・ペラーダ福島(昨季2位)=開幕4連勝

●北信越リーグ
(4節、18日)
フェルヴォローザ石川・白山FC 0-4 松本山雅FC
ヴァリンテ富山 0-4 長野パルセイロ
サウルコス福井 1-4 ジャパン・サッカーカレッジ
グランセナ新潟 0-5 ツエーゲン金沢

順位
1位=ツエーゲン 4勝(得失点差20)
2位=パルセイロ 4勝(得失点差15)
3位=ジャパンSC 3勝1敗
4位=山雅 2勝2分け
5位=グランセナ 1勝1分け2敗
6位=サウルコス 1分け3敗
7位=ヴァリエンテ 4敗
8位=フェルヴォ 4敗

●北信越リーグ2部
(4節、18日)
日精樹脂工業 1-2 アンテロープ塩尻 
※アンテ4連勝

●関西リーグ
(6節、17日)
バンディオンセ加古川(昨季優勝)2-1 FC京都BAMB1993
*バンディ6連勝=首位

●中国リーグ
(6節、18日)
デッツォーラ島根 1-2 レノファ山口
※島根は、旧・セントラル中国(昨季2位)。首位=レノファ(勝ち点14=4勝2分け)。2位=宇部ヤーマン(今季昇格)、3位=デッツォーラ

●四国リーグ
(6節、18日)
カマタマーレ讃岐(昨季2位)7-0 三洋電機徳島
*讃岐6連勝=首位

●九州リーグ
(6節、18日)
ヴォルカ鹿児島 0-1  V・ファーレン長崎 
沖縄かりゆしFC 1-2 ホンダロック 
ヴァンクール熊本 2-4  新日鐵大分 
九州INAX 2-1 三菱重工長崎
海邦銀行SC 2-1 OSUMI NIFS  
※ホンダロック6連勝=首位。V・ファーレンは5勝1PK敗退。勝ち点差2。6月8日の直接対決が注目です


▼JFLの結果&順位は↓
JFL前期:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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