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Jを目指せ! by 木次成夫

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第82回「JFL16節 栃木SC対ファジアーノ岡山」
by 木次成夫

 15節を終えた時点で、栃木SCは首位(勝ち点35)で、2位=Honda(同34)、3位=ファジアーノ岡山(同30)。リーグ随一の戦力で優勝を狙う栃木に対して、昇格1年目のファジアーノは昨季の主力がベース。相対的に地味な補強でリーグに臨んだにも関わらず開幕6連勝を飾る好スタートをきったものの、最近5試合は1勝3敗1引き分けと失速気味でした。アマチュア選手もいるチームゆえ、連戦の疲労が要因なのかもしれません。

 試合開催の6月15日は栃木「県民の日」。マッチデープログラムのキャッチコピーは、“一万人で唱おう県民の歌”。そんなわけで、観客数という点でも注目の「Jリーグ準加盟クラブ」対決でした。

 結果は、2-1で栃木が勝利。観衆は7253人。開幕の対FC琉球戦、6338人を上回る今季最高の入り。ちなみに、同じ日に開催されたカターレ富山対MIOびわこ草津は3526人でした。

 栃木はボランチ落合正幸(27歳、新加入=前・川崎)と右SB岡田祐樹(24歳、新加入=前・札幌)が出場停止で、スタメンは以下の通り。

GK小針清允(31歳、今季加入=前・仙台)
右SB赤井秀行(23歳、今季加入=前・流通経済大)
CB鷲田雅一(29歳、今季加入=前・山形)
CB川鍋良祐(22歳、今季加入=前・青山学院大)
左SB斎藤雅也(23歳、今季加入=前・明治大)
右MF高安亮介(24歳、2年目=前・国際武道大)
ボランチ鴨志田 誉(22歳、今季加入=前・神奈川大)
ボランチ向 慎一(23歳、今季加入=前・法政大)
左MF佐藤悠介(30歳=主将、今季加入=前・東京V)
FW上野優作(34歳、2年目=前・広島)
FW横山聡(28歳、2年目=前・湘南)

 対するファジアーノは、以下。

GK李 彰剛(23歳、前・阪南大)
右SB尾崎雄二(22歳、今季加入=前・桃山学院大)
CB伊藤琢矢(34歳、前・佐川急便東京)
CB木村允彦(23歳、今季加入=前FC岐阜)
左SB野本安啓(24歳、前ニューウェーブ北九州)
右MF妹尾隆佑(22歳、今季加入=前・大阪学院大)
ボランチ小野雄平(22歳、前・徳島)
ボランチ喜山康平(20歳、東京Vからレンタル2シーズン目)、
左MF川原周剛(28歳=主将、前・三菱重工水島)
FW朝比奈祐作(25歳、前・東海大)
FW小林康剛(28歳、今季加入=前・徳島)

 ファジアーノのスタメン中、今季加入選手は4人。ちなみに、伊藤、川原、朝比奈は06年全国地域リーグ決勝大会にも参加しています。経費削減のため、岡山から栃木への移動はバス。疲労を軽減するため、13日(金)の夜に岡山を出て、14日(土)に栃木入りしたとはいえ、「全員プロ」の栃木がコンディション的に“はるかに”有利だったのは、いうまでもありません。

後半14分 栃1-0岡
得点=佐藤(PK)
 CB鷲田のロングパス→右MF高安が受けてPA内にドリブルで侵入→ファジアーノDFファール→PK→佐藤が決める。

後半29分 栃1-1岡
得点=小林
 喜山が左サイド深い位置からクロス→小林がヘディング。

後半34分 栃2-1岡
得点=稲葉久人
 佐藤のクロス→後半出場の稲葉(23歳、今季加入=前・法政大学、栃木県小山市出身)がヘディング。

 栃木を勝利に導いたのは、「個の強さ」でした。後半のシュートは2本。つまり、得点に至った2回のシーンだけ。補強の成果が出たともいえますが、ファジアーノの健闘も賞賛すべき試合だったと思います。落ち着いたポゼッションをベースに、栃木の武器であるスピードを封じる様は、いわば“格下の見本”。この何試合かFW喜山がMFで起用されている点が気になっていたのですが、ボールを裁いた後に前線に上がるスタイルは、得点に至ったプレーを含めて、効いていました。

 16節終了時点で、上位の順位は以下の通り。
1位=栃木(勝ち点38)
2位=Honda(同35)
3位=ファジアーノ(同30)
4位=横河武蔵野(同30)
5位=カターレ富山(同26)
6位=ニューウェーブ北九州(同26)
7位=ガイナーレ鳥取(同24)
8位=FC刈谷(同24)
9位=MIOびわこ草津(同24)

 栃木は12勝2敗2分け。うち9勝は1点差。勝負強いです。ファジアーノを含め、「J準加盟クラブ」カターレ、ガイナーレ、ニューウェーブのJリーグ参入圏「4位以内」争いも熾烈になってきました。

 成績だけ見ると、ファジアーノは“痛い敗退”でしたが、クラブ運営のコストパフォーマンスという点では、上々の結果で現在に至っていると思います。例えば、14節のホーム、対ジェフリザーブズ戦では観客3625人。ニューウェーブ、MIOびわこ草津の昇格3チームでは、ダントツの集客を誇っています。

 岡山県は6月1日に知事が「財政危機宣言」をしました。つまり、自治体の金銭的支援は期待できない状況ですが、“厳しい環境下でも未来に向けて頑張る”象徴的存在として、自治体側から“金のかからない”コラボ策をアプローチできないものか……。“もったいない”と思います。

 その一方で、栃木SC経営陣はJリーグ参入後、どんなチーム作りをしようと考えているのか、気になります。“夢の参入”後、成績的にも経営的にも苦戦しているクラブが複数ある中、“そうならない”ための策を考えているのか否か。もちろん、健全経営のJ2クラブとして、“良き見本”になってほしいのは言うまでもありません。

 クラブ史上最高の強さを享受している今季、いかにファンが増やせるかが、将来のカギを握るのではないかと思います。例えば、今季、大卒新人が多いということは、あと数年は成長が期待できるということですから、J2で低迷したとしても“なじみのある選手を信じて一緒に戦いたい”と思うファンが多ければ、それが理想的なのかもしれません。

 スタジアム整備も重要だと思います。栃木グリーンスタジアムは宇都宮駅から無料シャトルバスがあります。タクシーだと約3000円。アクセスは悪いものの、陸上競技用トラックがないため、観戦する側からすると“見やすい”です。芝生席のバックスタンドとゴール裏を改修すれば、日本随一の臨場感を味わえるスタジアムになると思います。

 問題は「規定で、火器を使った調理ができない」(関係者)ためか、例えば、宇都宮名物の餃子を売っていないこと。日本各地には「火器を利用できる」競技場もあるわけですから、Jリーグ参戦に向けて、自治体レベルで熟慮して、改善してほしいです。“販売用スペースが足りない”のであれば、スタジアム周囲の道を利用するなど、スタジアム・グルメを充実させる策はあるはずです。また、“飲食も楽しみたい”というファンが満足できる環境を用意できないとしたら、ビジネス面でもマイナスです。アウェー・ファン、選手、関係者が例えば、“お土産餃子”を買って帰ることができるようになれば、素晴らしいと思います。

 新スタジアム建設を目指す(利権に期待する)方々にとっては、余計な意見かもしれませんが……。

▼Jを目指すクラブの動向

●東北リーグ1部
(15日)
古河電池FC 1-7 グルージャ盛岡(昨季優勝) 
* グルージャは5勝1分けで首位

●関東リーグ
(後期3節、15日)
さいたまSC(昨季6位) 1-1 町田ゼルビア(昨季優勝)
*ゼルビアは通算8勝2分け(勝ち点26)で首位ながら、痛恨の引き分け。2位はYSCC(勝ち点19)

●関西リーグ
(9節、15日)
バンディオンセ加古川 4-3 阪南大クラブ
*バンディ9連勝

●中国リーグ
(15日)
日立笠戸 0-6 レノファ山口 
デッツオーラ島根 2-3 NTN岡山
*島根は、旧・セントラル中国。首位=レノファ(勝ち点23=8勝2分け)。島根は5位(勝ち点11)

▼JFLの結果&順位は↓
JFL前期:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
「リスト&記事リンク」

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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