beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第87回「北信越「残り3節」激戦展望」
by 木次成夫

町田ゼルビア(関東1部優勝)に続き、関西リーグ「2チーム」の全国地域リーグ決勝大会出場が決まりました。

7月20日
関西リーグ最終節

アイン食品 1-2 バンディオンセ加古川

優勝=バンディ(勝ち点40、13勝1分け)、2位=アイン(同28)。関西リーグの「地域決勝」出場枠は2チームです。順当な結果ですが、バンディは森岡茂(アトランタ五輪)がシーズン途中で引退発表。今後のチームへの影響が気になりますが……、「地域決勝」に向けて目先の注目は今週末(26日、27日)から“いわば”最終局面に入る北信越リーグです。11節終了時点で、上位3チームに優勝の可能性がある上に、「残り3節」は上位4チームの直接対決。出場枠は「1チーム」ゆえ、熾烈です。

・11節終了時点の順位

首位=長野パルセイロ(勝ち点29)
2位=ジャパンSC(同28)
3位=ツエーゲン金沢(同27)
4位=松本山雅(同18)

昨季優勝の山雅と比べると、パルセイロは大卒3年目(加入3年目)の選手が活躍している点などに、チーム強化の「歴史」を感じます。若手の成長に期待しつつ、彼らだけでは足りない面を、ベテラン元Jリーガー獲得などでカバーし、チーム全体として強化してきたわけです。

例えば、

FW佐藤大典(25歳、前・草津=3年目)
MF塚本翔平(24歳、前・中京大学=3年目)
MF小田竜也(24歳、前・浜松大学=3年目)
DF土屋 真(24歳、前・浜松大学=3年目)

結果的に「想定外」の移籍だったかもしれませんが、町田ゼルビアの主軸の1人、石堂和人(26歳、帝京大学出身)も元・パルセイロです。「仕事とサッカーの両立」という環境の中でも頑張れる選手を“見る目がある”ということでしょうか――。

7月21日、パルセイロはホームの「南長野」で城西大学と練習試合をしました。同大学は昨季、関東大学リーグ2部最下位で、今季、埼玉県リーグに降格。パルセイロ選手をスピードで抜き去るシーンもあったものの、全体的には、ラインぎりぎりまでピッチを“幅広く”使ったり、キープで“いなし”たり、パルセイロの「老獪さ」を実感しました。

その一方で、反則がらみ(勢い余っただけの悪意のないプレーを含む)で、パルセイロ選手が“キレる”シーンも散見。Jリーグでも審判の質は問題になっていますが、たとえ誤審で試合が左右されても、最も損をするのは選手です。地域リーグからJFLを経て、Jリーグ参入を目指すクラブ所属選手にとっては、「サッカーで生活できるかどうか」の瀬戸際という点で、Jリーガー以上に死活問題だと思うのですが……。

学生相手に大人気ないプレーをする“苦い経験”まで考慮して、マッチメイクをしたかどうかは不明ですが、「アイディアマン」のバドゥ監督“ならでは”かもしれません。

前日(20日)の天皇杯県予選準々決勝、アンテロープ塩尻(北信越リーグ2部2位)戦はサブ・メインで4-0の勝利。そして、城西大学戦は主力に加えて、7月上旬にバリエンテ郡山から移籍したGKノグチ・ピント・エリキソンも起用。柏レイソル時代の先輩にあたる薩川(現パルセイロ)コーチの存在も“きっかけ”だったようですが、地域リーグ決勝大会出場に向けて、選手登録上、ギリギリの段階での移籍でした。「日系ブラジル3世」ゆえ、ブラジル人のバドゥ監督とのコミュニケーションも問題ないと思いきや……案の定、試合後、ブラジル語(ポルトガル語)で話をしていました。

チーム状況が良い時は、為すことすべてが“良く見える”のかもしれません。

残り3節」の予定は以下――。

12節
7月26日
ツエーゲン金沢vs.松本山雅(17:30)
7月27日
ジャパンSCvs.長野パルセイロ(11:00)

13節
8月2日
パルセイロvs.ツエーゲン(12:00)
8月3日
山雅vs.ジャパンSC(13:00)

最終節を前に、優勝が決まる可能性は、例えば以下――。

パルセイロと山雅が2連勝すると、パルセイロの優勝が決まります。

JSCが2連勝し、ツエーゲンが山雅に敗れて、パルセイロと分けると、ジャパンの優勝が決まります。

また、ツエーゲンとJSCが2連勝した場合、パルセイロ優勝の可能性は消滅します。

14節(最終節)
9月7日
パルセイロvs.山雅(13:00)
ツエーゲンvs.JSC(13:00)

パルセイロにとって「最悪のシナリオ」は、山雅に敗れて、優勝を逃すことでしょうから、“山雅に頑張ってもらい、最終節前に優勝を決めたい”というのが本音かもしれません。

リーグ13節と14節の間には天皇杯予選と全国社会人選手権・北信越大会(8月15日―17日、福井県開催)があります。注目は15日の一回戦、ツエーゲン対パルセイロ(勝者は16日の準決勝でサウルコス福井と対戦)。北信越の全社・出場枠は「3チーム」。共に“絶対に負けられない”状況での対戦になるかもしれません。

ところで、パルセイロと城西大学との練習試合は「コーチどうしが知り合い」ゆえに実現したとか。お互いにとって、メリットのあることだと思いました。

学生にとっては、「地域リーグ」は将来の選択肢のひとつでしょうし、近隣に大学が少ないパルセイロにとっては、待望の練習相手です。夏休み合宿かと思いきや、日帰り遠征でしたが……。山雅(松本市)にもいえることですが、自治体も協力して、学生の合宿招致をすれば、地域活性化と同時に、パルセイロの強化にもつながるのではないか、と思いました。

そもそも、地球温暖化が問題の昨今、サッカーに限らず、相対的に過ごしやすい気候を「有効利用しない」のは“もったいない”です。21日の長野市も暑かったですが、日陰あるいは、夕方以降の相対的心地よさは、首都圏などとの比ではありません。高層ビルが相対的に少ない(エアコンの室外機が密集していない)ゆえに、街中でも“自然の風”のありがたさを感じました。日本政府が本気で地球温暖化を憂えているのであれば、高層ビル建築規制をすべきだし、ベストのプレーを期待するのであれば、夏の五輪は北京や東京ではなく、長野(あるいは北海道)開催が“気候上は”ふさわしいとすら思ったほどです。

もしかしたら、日本全国の「Jを目指すクラブ」に、関係者が日常生活では気づきにくい「地元の武器」が、あるのかもしれません。一般社会人を含めて、収入だけが生活基盤を置く絶対的な理由ではないはずです。また、クラブ関係者とファンが選手を「品定め」する一方で、選手も“ファンを含めたクラブ環境”を見ているはずです。言い方をかえると、選手が「夢と現実」のハザマで高いモチベーションを維持できるかを含めて、「Jへの道」は、「地域の総合力」も問われるのではないでしょうか。

(写真説明)篠ノ井駅付近の商店街沿いに多数あった、パルセイロを応援する“ノボリ”。昨季と比べて、地元との密着を感じさせる光景

▼Jを目指すクラブの動向

●天皇杯福島県予選
4回戦=19日
準々決勝=20日

19日=4回戦
バリエンテ郡山(県3部) 1-2 相馬SC(東北2部南)
福島ユナイテッド(東北2部南) 7-0 クレハ(東北2部南)

20日=ベスト8
福島ユナイテッド 7-0 尚志高校
アビラーション(県2部) 6-1 ビアンコーネ福島(東北1部)

準決勝は8月30日(アビラーション対ユナイテッド、バンディッツいわき対相馬SC)で、決勝は同31日。「Jを目指す」アビラーション(いわき市)大健闘

●天皇杯石川県予選
20日=準決勝

ツエーゲン金沢 8-1 金沢学院大学
*決勝は8月31日、対北陸大学

●天皇杯香川県予選
20日=準決勝

カマタマーレ讃岐 2-0 多度津クラブ
*決勝は8月30日、対高松大学



▼JFLの結果&順位は↓
JFL前期:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
「リスト&記事リンク」

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

TOP