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Jを目指せ! by 木次成夫

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第88回「劇的“北信越ラスト3節”その1」
by 木次成夫

北信越リーグは11節終了時点で、
首位=長野パルセイロ(勝ち点29)
2位=ジャパン・サッカーカレッジ(同28)
3位=ツエーゲン金沢(同27)
4位=松本山雅(同18)

そして、12節――。
7月26日
ツエーゲン 2-5 山雅
試合模様は最新NEWS

ツエーゲンの敗因は「2戦目ゆえの難しさ」、つまり「山雅の学習効果」だったと思います。6節、山雅ホームでの対戦は、ツエーゲンが0-3で完勝していました。“相対的に優れた個”を生かしたスピーディなサッカーは、“格が違う”と感じたほど。中でも、華麗なミドルシュートを決めたMF木村龍朗(24歳、前・広島)とFW奈良安剛(25歳、昨季途中に山雅から移籍)は際立っていました。

しかし、この試合、木村は“ほぼ”持ち味を発揮できず。焦って飛び込まず、かといって、相手をスピードに乗せないように“微妙な”距離感を維持するなど、山雅守備陣の「修正」が功を奏したわけです。ツエーゲンの出来には、ボランチ山田智也(28歳、今季加入)が累積警告で出場停止だったことも影響したのでしょう。全体的な”ボール散らし”という点で単調でした。

<得点経過>
●21分 0-1(山雅=柿本典明)FKをヘディングでジャストミート
●29分 1-1(ツエーゲン=奈良←権藤勇介)。“流れ”の中で決めた、ツエーゲンらしい得点
●35分 2-1(山雅=今井昌太←吉田賢太郎)ツエーゲンDFがカットするかと思いきや、パスが通り、今井が絶妙のシュート。
●50分 2-2(ツエーゲン=オウンゴール)“きっかけ”はツエーゲンCB中尾真耶“得意の”ロングスロー。
●54分 2-3(山雅=川田和宏←高沢尚利)ボランチ・コンビが演出した、今までの山雅では想像できないほど見事なプレー。
●62分 2-4(山雅=高沢←今井)今井のドリブル突破から。
●89分 2-5(山雅=小澤修一=交代出場)カウンター攻撃からラストパスを、落ち着いて――。

山雅のFW吉田賢太郎いわく「団結力の勝利」。中でも印象的だったのは、右SB坂本史生(23歳、今季加入=前・東京学芸大学)。トラップミス後、体を張ってイエローカード(警告)を受けたプレーを含め、“今までの苦い経験”を無駄にしていないと思いました。相手との力関係を状況の中で判断して、ベストのプレーを選択しているということですから――。

攻撃陣で目立ったのは、1得点1アシストを記録した今井。「もともとスピードはリーグ随一。いかに緩急をつけるかが課題でした」(山雅の吉澤英生監督)とはいえ、この試合では見事、持ち味を発揮。相手のチャージを受けながらも粘って、内から右サイド前方へ“えぐる”ドリブルで“かわし”、アシストにつながるラストパスを出したプレーは圧巻でした。

ちなみに、この試合は同日開催の「北國花火金沢大会」とコラボし、「‘08ツエーゲンカーニバル」と題して、大々的に開催されました。花火大会開始の19時45分に合わせて、キックオフは17時30分。キャッチコピーは、

“打ち上げよう! 勝利と花火!! 1万人でツーゲン金沢を応援しよう!”

結果、観衆4184人(公式発表)。6節のパルセイロ戦(1794人)を凌ぐ今季最高でした。

7月27日
ジャパンSC 3-1 パルセイロ
試合模様は最新NEWS

ジャパンSCはアルビレックス新潟のアマチュア育成組織です。トップチームは03年、06年リーグ優勝。04年、05年は2位。昨季は最終節のホームで、山雅と引き分け、勝ち点差2の3位(2位はパルセイロ)。チームとしては「JFL昇格」が目標です。

元Jリーガーも複数所属しています。例えば、
GK諏訪雄大(22歳、今季レンタル加入=前・新潟←柏Y)
DF数馬正浩(26歳、前・仙台)
FW宇野沢祐次(25歳、今季加入=前・福岡←柏)
FW富岡英聖(24歳、今季加入=前・甲府)

宇野沢も富岡も、去る1月のJリーグ合同トライアウト(第2回)に参加していました。スカウト陣にはジャパンSCスタッフの名前も、ありました。その時、宇野沢は「Jリーグが無理なら、Jを目指すクラブでプレーしたい」。つまり、“企業チームは避けたい”ということです。

「試合に出られるチームの方が成長につながると考えて、移籍しました。今は“契約選手”で、授業に出なくても良いのですが、C級ライセンス取得のための指導法の授業は受けています」(宇野沢)

“契約選手”とは、事実上のプロ。プレーで報酬を得られ、その上、“授業を受けられることは、将来的にも良いことでは?”と、宇野沢に問うと「そう思います。例えば、諏訪はパソコンの授業を受けていますよ」。

パルセイロ戦の得点経過は、以下の通り。
●21分 1-0(ジャパン=MF池川修平、19歳、今季加入=前・静岡学園高校)
パスワークでパルセイロ守備陣を崩した末のゴール。
●50分 2-0(ジャパン=FW明堂和也、22歳、前・アルビレックス新潟シンガポール)※写真
パルセイロDF籾谷真弘(27歳、前・草津)と対峙した後、スピードで振り切って、シュート。昨季も主力だった選手ならではの実力を見せつけました。
●80分 2-1(パルセイロ=PK=FW要田勇一=31歳、前・千葉)
●84分 3-1(ジャパン=FW蒲谷広樹=交代出場、24歳、今季加入=前・長野パルセイロ←草津←中京大学←横浜FM Y)

観衆586人(公式発表)。うち、一見して約半数はパルセイロ・ファン。「バス7台をチャーターするなど、アウェーとしては過去最高数です」(パルセイロ関係者)。しかし、結果は、ジャパンSCの完勝。パルセイロは“慣れない”人工芝に戸惑い、持ち味を発揮できませんでした。

同校グラウンドは、砂状のゴムチップを撒いてコンディションを調整するタイプの人工芝です。学生が日々、練習に励んだ結果でしょうが、ムラもあります。バウンドの仕方を含めて、ボールの動きは独特です。例えば、パルセイロMFの土橋いわく「軸足の感覚を含めて、対応が難しい」。パルセイロは近隣の千曲市に昨年完成した人工芝グラウンドで練習するなど、対策もこうじましたが、「ピッチの質が全然違います」(土橋)。

つまり、あまり効果は、なかったようです。実際、チーム全体的に、ボールコントロールで戸惑っている最中にプレスを受け、ボールを奪われるシーンが散見しました。ただ、ピッチを言い訳にできる点で、パルセイロ選手の「気持ちの切り替え」は簡単かもしれませんが……。

首位=ジャパンSC(31)得失点差+30
2位=パルセイロ(29)+42
3位=ツエーゲン(27)+35
4位=山雅(21)

次節(13節)は――、

8月2日 パルセイロ対ツエーゲン
8月3日 山雅対ジャパンSC

パルセイロ「引き分け」以下、山雅敗退(ジャパン勝利)→ジャパンの優勝。
パルセイロ勝利(ツエーゲン敗退)→ツエーゲン優勝の可能性消滅。
2試合とも引き分け→ツエーゲン優勝の可能性消滅。
パルセイロ敗退(ツエーゲン勝利)&ジャパン「引き分け」以下→優勝争いは最終節に持ち込み。
パルセイロ引き分け&ジャパン敗退→優勝争いは最終節に持ち込み。

▼Jを目指すクラブの動向

● 東北リーグ1部
(10節、27日)
グルージャ盛岡(昨季優勝)5-0 古河電池FC
*首位=グルージャ(8勝2分け)

● 北信越リーグ1部
(12節、27 日)
サウルコス福井 2-3 フェルヴォロ-ザ石川・白山FC
グランセナ新潟 5-1 ヴァリンテ富山

5位=グランセナ(勝ち点14)
6位=ヴァリエンテ(同7)
7位=サウルコス(同6)
8位=フェルヴォ(同3)

● 北信越リーグ2部
(12節、27日)
アンテロープ塩尻 2-3 新潟経営大学 
*首位=上田ジェンシャン(勝ち点31)、2位=CUPS聖籠(同23)、3位=アンテ(同23)

● 中国リーグ
(27日)
NTN岡山 1-1 レノファ山口
デッツオーラ島根 2-1 宇部ヤーマン
首位=レノファ(勝ち点28)、デッツオは4位(同20)

● 九州リーグ
(14節、27日)
沖縄かりゆしFC 2-1 V・ファーレン長崎
三菱重工長崎 0-5 ホンダロック
ヴォルカ鹿児島 0-2 新日鐵大分
九州INAX 2-1 OSUMI NIFS 
ヴァンクール熊本 0-1 海邦銀行SC

順位
首位=ホンダロック(同39)
2位=V・ファーレン長崎(勝ち点36)
3位=沖縄かりゆし(同35)
4位=新日鐵(同28)
5位=ヴォルカ鹿児島(同25)
6位=海邦銀行(同18)
7位=ヴァンクール(同15)
8位=INAX(同11)
9位=三菱重工(同3)
10位=OSUMI(同0)


▼JFLの結果&順位は↓
JFL:結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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