beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第91回「全国社会人選手権・北信越大会」
by 木次成夫

8月15日から17日まで、全国社会人選手権・北信越大会が開催されました。出場6チーム。全国大会(以下、全社と略。10月17日―22日=新潟県)出場枠は「3チーム」。開催県代表のサウルコス福井(北信越1部)と昨年度優勝の松本山雅は1回戦シード(準決勝から出場)。結果は、以下の通りです。

15日=1回戦 
ツエーゲン金沢 1-2 長野パルセイロ
富山新庄クラブ(富山県1部) 1-5 CUPS聖籠(北信越2部)

16日=準決勝
CUPS 1-5 松本山雅
サウルコス 0-1 パルセイロ

17日=3位決定戦
サウルコス 2-0 CUPS

17日=決勝
パルセイロ 2-1 山雅

大会前、最も注目していたのは、1回戦ツエーゲン対パルセイロでした。ツエーゲンはリーグ3位が“ほぼ”確定しているため、JFL昇格への道は“全社経由”しかないからです。対するパルセイロはリーグ“残り1節段階で”1位。とはいえ、最終節で2位に落ちる可能性もあるため、全社出場も“決めておきたい”状況でした。

結果は、リーグ13節、アウェーのパルセイロ戦同様、ツエーゲンは先制したものの、1-2の逆転負け。決して悪い状況ではないにも関わらず、それどころか、惜しいシュートもあったにも関わらず、“惜しい”から“次は入る”というポジティブ思考ではなく、“また、駄目か”というネガティブ思考になったとしか思えない展開も同様でした。2-2の状況から3失点したリーグ12節、ホームの山雅戦からメンタル面で「負の連鎖」が続いていたということでしょうか。

・得点経過(40分ハーフ)
前半8分 1-0
(ツエーゲン=権東勇介=主将=25歳=前・水戸)
*アシスト=永井健太(25歳、前・栃木)。永井の突破力と、ボランチ権東の攻撃センスが活きた、ツエーゲンらしいゴールでした。

後半20分 1-1
(パルセイロ=佐藤大典=25歳=前・草津)
*土橋宏由樹(30歳、前・山雅=元・甲府など)からのパスを受けた大塚靖治(24歳=前バンディオンセ神戸=現・加古川)のシュートをGKがはじき、こぼれ球を佐藤がダイレクト

延長前半4分 2-1
(パルセイロ貞富信宏=29歳=前・アルテ、元・湘南など) 
*アシスト=佐藤。右サイドからパスを受けたボランチ貞富がフリーでシュート。ツエーゲン守備陣の集中力欠如としか思えない展開でした。

ツエーゲンの敗因は、経験豊富な4人のベテラン、つまり、土橋と貞富のボランチ・コンビ、CB丸山良明(33歳=前・仙台)、FW要田勇一(30歳=前・千葉)を軸にしたパルセイロに比べて、チーム全体的に「若かった」ということに尽きると思います。

FW奈良安剛(25歳=前・山雅、元・札幌など)、MF権東、MF木村龍朗(24歳、前・広島)、MF米山大輔(26歳、前・C大阪)ら主力の多くは、昨年の天皇杯でロアッソ熊本(当時JFL)、FC刈谷を破り、J2水戸に0-1の善戦をした際のメンバーです。CB中尾真那(19歳、前・広島)、MF山田智也(29歳、前・栃木)、FW永井健太(26歳、前・栃木)ら今季加入した選手も相対的に実力派です。

にもかかわらず……。体力で劣るはずのベテランたちの術中に“はまり”、走らされ、翻弄され、集中力を失い、いわば自滅。チーム作りの難しさも痛感しました。例えば、Jリーグ合同トライアウトで、パルセイロは丸山、ツエーゲンは中尾を見出しました。身体能力という点では、中尾の方が“はるかに”上です。

ただ、見方をかえると、ツエーゲンはパルセイロ以上に、来季以降が期待できる選手が揃っているということ。スポンサーもファンも「3~4年後は逆転してやる」くらいの心意気で、クラブを支援してほしいものです。

ところで、パルセイロ、山雅に次ぎ、3チーム目の全社・出場権を得たサウルコス福井は、今大会が開催されたテクノポート福井スタジアムをホームにしているクラブです。06年発足のNPO法人「福井県にJリーグチームを作る会」に当時、北信越2部所属のFC金津が賛同して、07年からサウルコス福井として活動開始。昨季は2部2位で、入れ替え戦の末に1部昇格。今季は、8チーム中7位が“ほぼ”確定しています。つまり、再び、入れ替戦出場が濃厚という状況です。ちなみに、対戦相手は2部2位で、CUPSが“ほぼ”確定しています。

スポンサー獲得などで苦労しているということでしょうが、チームは現在、世代交代と強化の過渡期ゆえ、良い形で乗り切ってほしいものです。高校サッカーで有名な丸岡高校出身者を中心にした30歳前後が主力のチームに若手・中堅が加わった点は、「Jを目指す」効果でしょう。例えば、MFの末廣俊一(25歳)は丸岡高校出身で、信州大学を経て、昨季サウルコス入り。高校時代は現・山雅の鈴木亮平(前・山形)と同学年。大学サッカー部に物足りなさを感じ、留年した“5年”次にパルセイロの前身である長野エルザに所属した経験があります。故郷で就職する道を選んだ年に、福井県内で「Jを目指す」動きが本格化した点は、偶然ながら、最高のタイミングでした。全力でサッカーをする点では同じでも、クラブとして「Jを目指す」目標があることは、“大人の余暇”プラスアルファの“やり甲斐”、モチベーションにつながるのはないでしょうか。

ちなみに、サウルコス主将の野村雄宇は丸岡高校が全国選手権でベスト4進出という快挙を達成した際のメンバーです。ちなみに同年の優勝は本山雅志擁する東福岡で、準優勝は中田浩二、貞富(パルセイロ)擁する帝京でした。

地元の英雄が、地元の夢のために、地元で頑張る「事実」は、スポーツとしての絶対的レベルは低くても、見知らぬスーパースターが五輪で活躍するのとは違った価値があると思うのですが……。

残念ながら、例えばサウルコスがパルセイロに敗れた翌日の地元新聞に掲載された今大会記事は、見出しスペースを含めて11字24行相当しか、ありませんでした。スポーツ面は7ページあり、福井ミラクルエレファンツ対信濃グランセローズ戦を含めた野球のBCリーグ記事は4分の1ページ以上あったのですが……。ちなみに、“丸岡高校出身の鷲田雅一(前・J2山形)擁するJFL首位の栃木SCはHonda(2位)に敗退”という記事は、ありませんでした。

せっかく「県立丸岡高校」という北信越では随一の軸があるのに“もったいない”です。
02年W杯でメキシコ代表がキャンプをしたスタジアムのピッチ・コンディションが非常に悪い点も“もったいない”と思いました。凹凸がある上に、踏み込んだ感触にもムラがり、短く刈られているとはいえ雑草も混じっている「事実」には、唖然。公共利用優先で運営するなら、約2万人収容のスタンドは無駄ではないでしょうか。


<写真説明>テクノポート福井スタジアムの「サウルコス支援自動販売機」。利益の一部がクラブ支援に使われる契約形態で、近年、日本各地のクラブが設置活動をしています。



JFL結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
「リスト&記事リンク」

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

TOP