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Jを目指せ! by 木次成夫

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第94回「長野パルセイロ北信越制覇!」
by 木次成夫

北信越リーグは長野パルセイロが3年ぶりの優勝を飾りました。9月7日の最終節結果は、以下の通り。

長野パルセイロ 1-0 松本山雅
ツエーゲン金沢 3-2 ジャパンSC(以下、JSC)
ヴァリエンテ富山 2-3 フェルヴォローザ石川・白山
サウルコス福井 1-0 グランセナ新潟

最終順位
優勝=パルセイロ(勝ち点35)
2位=JSC(同31)
3位=ツエーゲン(同30)
4位=山雅(同27)
5位=グランセナ(同17)
6位=ヴァリエンテ(同10)
7位=サウルコス(同9)
8位=フェルヴォ(同6)

パルセイロは通算10勝2分1敗。55得点(最多)、11失点(最小)。得失点差の差で山雅に次ぐ2位に終わった昨季のチームをベースに、効果的な補強ができたことが、最大の勝因でしょう。中でも2年目のMF貞富信宏(29歳、前アルテ高崎、元・湘南など)とFW要田勇一(31歳、前ジェフ)に加え、CB丸山良明(33歳、前・仙台)とMF土橋宏由樹(30歳、前・山雅、元・甲府)のベテランを獲得した点が“大当たり”。ベテランがセンスを活かして若手中堅を操り、ベテランのフィジカル的衰えは若手中堅がカバーすることで、チーム全体のパフォーマンスが向上したわけです。

例えば、昨季、ストッパータイプのCB籾谷真弘(27歳=2年目、前・草津※写真)の課題のひとつは、丸山の真骨頂であるカバーリング・センスでした。
「他の選手のストロングポイント(長所)を活かすことを考えて、プレーしてきました」(丸山)。

最終節は、山雅ホームのリーグ戦(0-0)、全国社会人選手権北信越大会決勝(パルセイロが2-1で勝利)、天皇杯長野県予選決勝(山雅が2-1で勝利)に続く、4度目のダービーでした。決勝点はPK。全社の試合もパルセイロの先制点はPKでした。つまり、山雅は「同じ過ちをした」ことになります。

シュート数はパルセイロ6(前半4、後半2)、山雅5(前半2、後半3)。中盤の“つぶしあい”あるいは、単調な攻撃がメインで、リスク回避最優先の大雑把なパスも多数。お互いが良さを消しあう展開でした。そんな中、気になったことのひとつが、土橋のプレー。持ち前のパスワークが皆無の一方で、“らしくない”プレーが目立ちました。イエローカードを受けない程度の反則を含めたチャージを再三したのです。

試合後、土橋に「反則、うまかったですね」と声をかけると、「今日は相手のチャンスを未然に“つぶす”ことを最優先で考えていましたから」(土橋)。

改めて、山雅はスゴい選手を手放してしまったと痛感しました。

サイドバックの高野耕平(23歳=今季加入、前・東京学芸大学、鹿島ユース出身)がリーグ戦初スタメンで起用された点も印象的でした。1週間前の天皇杯予選決勝でもスタメンでしたが、その試合は要田ら主力数人をベンチに温存していたため、リーグ優先ゆえの起用だと思っていたからです。

高野は170cm、64kgと小柄ながら、スピーディかつスムーズな攻撃参加が持ち味です。相馬直樹、名良橋晃ら攻撃的SBを輩出したアントラーズの伝統を感じます。昨年は林俊介(現・横河武蔵野FC)、坂本史生(現・山雅)らと共にインカレに出場。卒業後の第一志望はJFL所属クラブだったそうですが、願い叶わず。さらには町田ゼルビア・セレクションに参加したものの、不合格。パルセイロ加入は3月に入ってから。2月中旬に立正大学の練習試合を見た際は「練習生」でした。

パルセイロは選手総勢22人の少数精鋭で、うち3人がGKです。バドゥ監督は今まで「ベテラン4人組」と籾谷を軸にしつつ、全員を公式戦出場で起用してきました。リスク覚悟で、チーム全体のモチベーションを高め、バックアップメンバーの成長を促してきたわけです。リーグ優勝前から、“その後”のことも考えていたということかもしれません。全国地域リーグ決勝大会は短期決戦ゆえ、選手層の厚さは重要な要素ですから。

この試合、高野は期待に応えるプレーを披露しました。ユース時代から親元を離れて寮生活をしてきたからでしょうか、メンタル面も逞しいようです。ちなみに現在は「ガソリンスタンド勤務です」(本人)。

ところで、山雅は全社(10月18日―22日、新潟県開催)経由で地域リーグ決勝大会出場を目指すわけですが、厳しい組み合わせになりました。九州リーグを制した沖縄かりゆしFCと2回戦で、JSCと3回戦で戦う可能性があります。とはいえ、昨季の全社を制したMIOびわこ草津も強豪との連戦でしたから、幸いかもしれません。大会後、MIO代表の田村忠義氏いわく、「初戦から全力で行くしかなかったことは幸いでした。チーム全体に勢いがましたから。体力的に5連戦もつか心配でしたが、なんとかなるものですね」。

ただ、どのような結果になるかは別にして、山雅は来季以降に向けて、練習場などクラブのインフラを整備していくことが必須だと思います。パルセイロが「社団法人 長野市開発公社」運営管理の天然芝ピッチとクラブハウスを優先的に利用しているのに比べると、山雅の環境は“はるかに”劣っています。昨季はヒザの古傷で苦しんだ土橋が今季、活躍できたのは、練習環境の差も影響しているでしょう。丸山にしても、ゼルビア関係者から「町田出身だから戻ってきてほしいという思いもあったけど、土のグラウンドでは、あいつには無理だろうと思った」という話を聞いたことがあります。

また、長野県の冬から春先の気候も考慮すると、人工芝ピッチの室内練習場を確保できないチームが大幅な補強をするのは無理があるとも思いました。今季、山雅が開幕から出遅れた要因のひとつは、開幕前の練習が十分にできなかったこと。それは、リーグ後半戦の出来からも明らかではないでしょうか。


▼Jを目指すクラブの動向

●東北2部南
福島ユナイテッド 9-0 中新田SC
コバルトーレ女川 7-0 七ヶ浜FC
*首位=ユナイテッド(10連勝)、2位=コバルトーレ(6勝3敗)

● 関東リーグ1部
(14節=最終節、7日)
日立栃木UVA 0-4 町田ゼルビア
*優勝=ゼルビア(勝ち点=38=12勝2分け)、2位=UVA(同26)

● 中国リーグ
(7日)
レノファ山口 5-0 デッツォーラ島根
*首位=レノファ

● 四国リーグ
(12節、7日)
カマタマーレ讃岐 2-1 南国高知FC
*首位=カマタマーレ(勝ち点34=11勝1分け)、2位=ヴォルティス・2nd(10勝2分け)。

●九州リーグ
(6-7日)
17節
V・ファーレン長崎 10-0 ヴァンクール熊本
三菱重工長崎 1-1(PK5-4) OSUMI NIFS
ヴォルカ鹿児島 1-1(PK3-4) 九州INAX
ホンダロック 2-1 新日鐵大分
沖縄かりゆしFC 2-0 海邦銀行SC
18節=最終節
V・ファーレン長崎 3-3(PK4-5)ホンダロック
OSUMI NIFS 0-4 沖縄かりゆしFC 
海邦銀行SC 2-2(PK5-4)ヴォルカ鹿児島
九州INAX 1-3新日鐵大分
ヴァンクール熊本 4-3三菱重工長崎
順位
優勝=沖縄かりゆし(同47)
2位=V・ファーレン長崎(勝ち点46)+66
2位=ホンダロック(同46)+48
4位=新日鐵(同31)
5位=ヴォルカ鹿児島(同28)
6位=海邦銀行(同21)
7位=ヴァンクール(同20)
8位=INAX(同15)
9位=三菱重工(同9)
10位=OSUMI(同4)


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※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

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