beacon

Jを目指せ! by 木次成夫

このエントリーをはてなブックマークに追加

第98回「JFL後期10節 MIO対Honda」
by 木次成夫

 上の写真は、10月5日のJFL、MIOびわこ草津対Honda FC戦のひとコマです。JR草津線利用促進キャンペーンの一環で、「乗って増やそう ふるさとのダイヤ」――。

 去る9月、MIOは滋賀県知事が会長を務める「滋賀県草津線複線化期成同盟会」から、JR「草津線複線化サポーター」を委嘱されました。ちなみに、草津線は滋賀県草津市の草津駅から三重県伊賀市の柘植(ツゲ)駅までのローカル線です。

 MIOは草津市が本拠のクラブですが、同市内に競技場がないため、JFL昇格を果たした今季、湖南市・市民グラウンド陸上競技場をホームで使用しています。最寄り駅は、草津線三雲(ミクモ)。Honda戦は、キャンペーンの一環で、“草津線を利用すれば”入場無料でした。試合前、三雲駅で担当者が無料チケットを配布。駅から競技場まで、臨時バスを用意したものの、あいにくの雨(小雨)ゆえか、通常便のバスだけで、ほぼ十分だったようですが……。地域自治体とクラブの連携という点で、面白い策だと思いました。

 今季、MIOの試合を見るのは5度目(ホームは2度目)。“行きたくなった”最大の理由は、9月19日付けで発表された監督交代でした。

新監督
東(あずま)広樹(前コーチ)

 前監督の平岡直起氏は強化部副部長に就任。ちなみに、同部長は昨季途中まで監督だった中尾幸太郎氏です。

 MIOは今季、平岡「新人」監督のもと、好調な開幕スタートをきり、4節終了時点では4位、前期13節終了時点でも5位と大健闘。戸塚哲也・前監督のポゼッション重視スタイルを引き継ぎつつ、「新人」ゆえの“怖いもの知らず”風、攻撃的采配は魅力的でした。

 しかし、前期14節以降は勝利に見放され、後期4節のジェフリザーブズ戦で0-3と完敗したのを最後に、指揮権は東コーチ(当時)に移行。4連敗→1勝→2連敗の状況だったとはいえ、開幕から通算すれば7勝4分10敗。後期3節のアルテ戦で、いわば“策を弄した末に”1-3で完敗した後、“ふっきれた”かのような言葉を残して去った平岡氏に期待していたのですが(連載86回参照)……。成績不振に陥った期間は、チームの主軸であるMF若林令緒の怪我と重なっている上に、ジェフ戦で若林が復帰したにも関わらず……。

 成績低迷というよりは、“出足が良すぎたゆえに”低迷に見えるだけで、昇格1年目の「小クラブ」としては十分に健闘しているのに……とは、思いました。

 東・新監督は、現在26歳。京都パープルサンガユース→阪南大学→しまなみFC(四国リーグ)→06年=MIO加入(07年からコーチ)。「(今季途中から)守備が破綻する試合が増えていたたで、まずは守備を修正することを重視しました。(Honda戦は)カウンター狙いのサッカーです」(東監督)。

 結果は2-4でMIO敗退。

<得点経過>

20分 0-1(Honda)DF安部裕之(29歳、前・国士舘大学)

33分 0-2(Honda)MF新田純也(30歳、前・清水市商業)

40分 1-2(MIO)若林=FK

45分 1-3(Honda)FW柴田潤一郎=(26歳、前・磐田ユース)

55分 2-3(MIO)アラン(19歳、前・日本航空第二高校)

88分 2-4(Honda)FW川島大樹(25歳、前・東海大学)

 勝敗を分けたのは、試合を通した集中力と、チーム完成度の差。いわば、JFL随一の古豪と、「1年生」の差。とはいえ、東監督の“狙い”も随所で活きた試合でした。例えば、MIOの2点目は若林のパス→サイドアタッカー大江勇詞(22歳、前・神戸)のセンタリング→アラン(19歳)のヘディング。その後も、何度かチャンスがあったのですが……。68分にFW木島徹也(25歳=今季加入、前・岐阜)が2枚目のイエローで退場になった点も痛かったです。

 MIOは東氏が指揮するようになって以降、2分→1勝(刈谷)→3連敗。厳しい状況が続いていますが、最下位との勝ち点差を考慮すれば、未だ大健闘中。例えば、後期6節で分けた栃木SC監督の柱谷幸一氏が国内最高峰のS級ライセンス保持者なのに対して、東氏はC級。昨年の今頃は「バイトとコーチの両立」だったことを振り返ると、堂々と采配をしているだけでも賞賛したいほどです。ちなみに、試合後にスタッフと共に荷物整理など撤収作業をする点は、コーチ時代と変わっていません。

 この試合の観衆は465人(主催者発表)。例えば、前期7節(試合前時点で7位)のアルテ高崎戦は1860人で、後期8節(同11位)の横河武蔵野戦は384人。Honda戦前は13位という成績を考慮すれば、“底は脱しつつある”という印象です。クラブ公認ボランティアカメラマンがアウェーも取材し、ホーム開催時はグラウンドの片隅で即席写真展をするなど、関係者の地道な努力の賜物でしょう。ちなみに後期10節で最多観衆はカターレ富山横河対武蔵野の4431人、最少はアルテ高崎対ソニー仙台の144人でした。

<後期10節終了時点の順位>
1位=Honda FC(勝ち点57)
2位=栃木SC(J準加盟=52)
*栃木は後期5節以降2分け4連敗。
3位=ファジアーノ岡山(J準加盟=49)
4位=カターレ富山(J準加盟=48、+18)
5位=横川武蔵野FC(48、+12)
6位=ガイナーレ鳥取(J準加盟=44、+18)
7位=FC刈谷(44、+14)
8位=流通経済大学(42)
9位=ソニー仙台(40)
10位=ニューウェーブ北九州(J準加盟=38)
11位=TDK SC(35)
12位=佐川印刷(33)
13位=SAGAWA SHIGA FC(32)
14位=MIOびわこ草津(30)
15位=ジェフリザーブズ(25)
16位=FC琉球(23)
17位=アルテ高崎(17)
18位=三菱水島FC(14)

*「4位以内」争いという点で、注目カードは以下――。

▼11節(10月19日)
Honda対カターレ
▼12節(10月26日)
ガイナーレ対武蔵野
▼13節(11月1日)
栃木対ガイナーレ
▼15節(11月15日)
武蔵野対ファジアーノ
▼16節(11月23日)
ファジアーノ対栃木
▼17節=最終節(11月30日)
カターレ対ファジアーノ


JFL結果&順位表

▼「Jを目指すクラブ」情報は↓
「リスト&記事リンク」

※本コラムは毎週火曜日更新予定です。ぜひ感想やあなたの地元クラブの情報をこちらまでお寄せください。

TOP