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Jを目指せ! by 木次成夫

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第104回「全国社会人選手権“特別編”最終章」
by 木次成夫

長野パルセイロ「優勝」
松本山雅「4位」

 長野パルセイロと松本山雅FC。長野県の2チームが対照的な結果に終わりました。とはいえ、身近なライバルがいるからこそ、お互いに切磋琢磨して、成長するのだろうと、改めて、痛感しました。振り帰ると――。

<05年>
パルセイロ=北信越リーグ1部優勝
山雅=同2部優勝

<06年>
パルセイロ=リーグ3位
山雅=同2位。(優勝=ジャパンSC)

<07年>
パルセイロ=リーグ2位
山雅=優勝

<08年>
パルセイロ=リーグ&全社優勝
山雅=同4位&天皇杯4回戦進出

10月22日 全社決勝
長野パルセイロ 2-1 NECトーキン

<得点経過>
5分 1-0(パルセイロ)
藤田信=左CK→土橋宏由樹がクロス→ヘッド

20分 2-0(パルセイロ)
佐藤大典=スローイン→藤田が流して→右足ダイレクト

79分(=後半39分) 2-1(NECトーキン)
小倉浩志(24歳、前・中央大学)=直接FK→ヘッド

 結果的に1点差の勝利でしたが、内容的には“地域リーグ随一の魅惑的パスワーク”の片鱗を見せて、パルセイロの貫録勝ち。その上、ベテランを含めて、多くの選手が上々のコンディションで大会を終えました。最大の勝因は「今季は丸山(良明、34歳、前・仙台)と土橋(宏由樹、30歳、前・山雅)が加わり、ベテランと若手がうまくミックスしたチームになった」(バドゥ監督)。実際、準決勝と決勝を見て、2年目の貞富信宏(29歳、前・アルテ高崎)と要田勇一(31歳、前ジェフ)を含めた“4大重鎮”の動きが良い点に驚きました。

 ちなみに丸山いわく「北信越リーグ後、約1ヵ月間、フィジカル強化中心のトレーニングをしてきたので、実は、キツかったんですけどね(笑)」

 開幕時と比べると、成長著しい若手・中堅が複数いる点も、チーム力アップの要因です。中でも際立っているのは、1年目の左MF高野耕平(23歳=今季加入、前・東京学芸大学)と右MF高田一憲(22歳=今季加入、前・国士舘大学)。この2人が、サイドの攻防を有利に進めることができたゆえに、流動的攻撃サッカーができたといっても過言ではないほど。バドゥ監督いわく「私にできることは、限られています。ベテラン選手が彼らの成長を促した面もあります。チームはファミリーですし……」。

 同監督いわく、今大会の成果のひとつは「(大会期間中、約1週間)選手たちが一緒に生活できたこと」。……即、納得。確かに、アマチュア選手が多いJFL以下のチームにとっては、1週間レベルの共同生活は貴重な機会です。普段は仕事とサッカーの両立で、3日間以上の合宿なども至難ですから。コミュニケーションを深めるだけでなく、例えばベテランの生活ぶり(調整方法など)は、若手・中堅の参考になるはずです。

 全国地域リーグ決勝大会(11月22~24日=予選ラウンド=鳥取、高知、北九州、28~30日=決勝ラウンド=沖縄県石垣島)出場チーム中、現時点で最高の状況と言っても過言ではないでしょう。

10月22日 3位決定戦
ホンダロック 1-0 松本山雅FC

 山雅の夢は、かないませんでした。

63分 1-0(ロック)
谷口研二(27歳、171cm、前・日章学園高校=宮崎県)=左CK→ヘッド。

 どちらかというと、山雅が試合を優勢に進めていたのですが、セットプレーを含めて“ゴール前を横切るボール”への対応が安定しない「弱点」が、露呈してしまいました。攻撃面では、準決勝NECトーキン戦の途中以降同様、ドリブル突破をする今井昌太が反則を含めたボディ・コンタクト倒されるシーンが散見したのが、試合を象徴していたと思います。チーム状態が良い時は、倒される寸前にパスを“つなぎ”、得点の可能性が“より”高いチャンスを演出できましたから。もちろん、今井個人ではなく、チーム全体の問題ですが……守る側にとっては、「つぶせば済む」状況は相対的に楽です。

 山雅が「サッカーの質」でホンダロック、そしてNECトーキンに劣っていたわけではありません。ただ、両チームには“企業サッカー部”らしい、安定感がありました。ホンダロックの決勝戦スタメン中、主将でボランチの南光太(29歳、前・プロフェソール宮崎=02年JFL)ら7人はJFL所属時(05~06年)からのメンバーで、他の4人は“大卒1~2年目”世代。NECトーキンは山雅戦スタメン中3人が“大卒1年目”世代。
例えば、トーキンFWで準決勝の山雅戦で1得点を決めた佐藤幸大は富士大学出身です。

 つまり、日本トップクラスの大学以外にも、地域リーグ強豪クラブに“ふさわしい”選手は多数いるということであり、大学サッカー全体的なレベルが上がってきているということでしょう。

 果たして、山雅は今後、どういう方向に進むか――。3位決定戦後、例えばファンに数秒間、頭をさげた「大卒2年目」の金澤慶一(写真左、2年目)と阿部琢久哉(1年目)を見て、多くの選手が「来季も、いたい」クラブであってほしいと思いました。今季のメンバーよりも優れた選手は日本各地に多数いても、彼ら以上に「JFLへの思い」が強い選手は、いないはず。また、地域リーグ最大数を誇る(であろう)ファンを含めて「情」と「濃い経験」こそ、山雅最大の武器でしょうから――。

 天皇杯4回戦=対神戸戦(11月2日)が残っているのは、幸いです。目下の目標である「J1クラブ」との差が、様々な点で、わかるわけですから。これ以上はないリスタートと言えるでしょう。


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