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ブラジルサッカー通信 by 藤原清美

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ネイマールのスポーツマン教育
by 藤原清美

 先週のブラジルサッカーメディアは、サントスのFWネイマールの話題で持ち切りだった。ただ、話題はいつものようなスーパーテクニックでも、ゴール後のパフォーマンスでもない。ネイマールに対するスポーツマン教育だ。
 事の発端は、15日のブラジル全国選手権アトレチコ・ゴイアニエンセ戦。試合終盤、ネイマールが倒されて得たPKを、自分で蹴ろうとしたところ、監督がマルセウをキッカーに指名した。それに腹を立てたネイマールが、監督に暴言を吐き、手にしたピッチボトルを、ピッチに投げつけた、というもの。マルセウがキッカーというのは、試合前から決まっていたことだった。
 監督への暴言は、チームメイトやサポーターからも批判された。試合翌日、彼は記者会見を開いて「家に帰ってから自分のしたことを考えて、完全に間違った態度だと分かった。サッカーを愛するすべての人に謝りたい。もう2度としない」と、小さな声で、神妙に語った。心から反省しているようで、本当にしょんぼりしていた。

 しかし、クラブは厳罰を下した。給料30%カットだけでなく、無期限の戦力外通告をしたのだ。ネイマールはチーム練習からも外され、19日の試合に出られなかった。今後については、20日にクラブ首脳陣と監督が会議を持つ。
 これほど厳しく対処されたのは、彼が “ネイマール”だからだ。彼は、欧州のビッグクラブが争奪戦を繰り広げる大型新鋭。そのドリブルやフェイントを駆使したテクニックとプレースタイルで、国内でも一躍アイドルとなった。しかし、最近はマークについた対戦相手と小競り合いを起こしたり、交代を命じられてピッチを降りた後に、その不満を言葉を選ばずに報道陣にぶちまけるなど、ピッチでの態度に批判が集まることが続いた。
 今回の暴言では、メディアがサッカー界の著名人や、スポーツ心理学者達の意見を紹介し続けている。そのコメントを聞けば、みんながネイマールに期待していることは間違いない。そして、みんなに共通するのが「類まれな才能を持ち、一気に人気と大金を手にした18歳の若者に対する、今後のメンタル面の教育の必要性」だ。 今年の上半期、一緒にサントスを盛り上げたFWのロビーニョとアンドレが、移籍で去った。最強コンビの司令塔パウロ・エンリケ・ガンソが、ケガで長期離脱している。自分自身はチェルシー移籍を蹴るという、大きな決断をしたばかりだ。おごりもあるだろうが、いろいろな気持ちが混ざり、思うように行かない時には、爆発してしまう。ブラジル代表のマノ・メネゼス監督も「成長過程にある彼に、正しい道を示さなければならない」と、ネイマールのスポーツマン教育について語っていた。これから彼も必ずや、年齢や経験と共にいろいろ学んでいくはずだが、彼の周囲の人達にも頑張って欲しい課題だ。

※本コラムは毎週木曜~金曜更新予定です。このコラムの感想をこちらまでお寄せください。

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