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ヤング魂 by 長谷川望

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[特別編]手倉森誠監督(U-22日本代表)中篇「さまざまなスポーツから身に付くサッカーに必要な空間認知能力」
by 長谷川望

「育成」に関して定評があり、2016年のリオデジャネイロ五輪の本大会出場が期待されているU-22日本代表を指揮する手倉森誠監督。さまざまな評価を受けるリーダーはいるが、私はこの指揮官を「経験の将」と呼ぶのがふさわしいと思う。時折、笑顔を交えながら日本を代表する経験の将は、日本人選手の特徴や世界との差を事細かく説明してくれ、聞けば聞くほど吸い込まれるような手倉森ワールドがそこには存在する。数多くの経験をもとに「育成」について語るインタビュー第2弾!!

サッカーに役立つ能力
 以前、子供の体力向上を支援しているレクリエーション協会への取材で、小学生のうちは幅広くスポーツをやり、中学生くらいから専門的に競技に打ち込むのが望ましいという話を聞いた。手倉森監督はサッカーに必要な「空間認知能力」は、他のスポーツで磨くことが出来ると教えてくれた。

「サッカーのヘディングは背が高い人が強いと思われがちですけど、空間認知能力が優れている人が強いのです。たとえば、野球でキャッチボールをすると、どんどん遠投になるにつれて山なりのボールに取ります。これは、ボールをヘディングで捉えるのと同じなんですよ。『大きいボールがきたな』という時、プロ野球選手は空間認知能力が優れているため、ボールの落下地点に向かって半身で走ってボールを取りに行きます。空間認知能力が劣っている人は、後ろ向きで下がるんですよ。だから、小学生のときに野球やバレー、バスケットなど他の球技をやるのは、空間認知能力が身に付けるためにやっぱり大事なんですよ」

空間認知能力が高い選手は!?
 正確なパス、空中戦での強さ、ダイレクトシュート、また周りの状況を正しく判断できることで早いプレーにも繋がる空間認知能力。サッカーだけではなく、特に球技には欠かせない能力だと言える。手倉森監督から見てどのような選手が空間認知に優れているのだろうか。

「サッカーで言えば岡崎慎司選手(レスター・シティ)。どんなボールに対しても反応が早く、日本代表選手のなかでもプレーが早いですよ。あとは長友佑都選手(インテル)。違う競技で言うと野球のイチロー選手なんかは天才ですよね。あとはバスケットボールのマイケル・ジョーダン。海外サッカー選手では、マラドーナやメッシが空間認知能力に非常に長けています。サッカーでもわざとバウンドしたボールをコントロールさせたりします。これが上手くなると足だけでなくて、ボールが浮いているうちに胸や腿でコントロールしに行ったり出来るようになりますね。私はそれを12歳くらいまでに身に付けないといけないと思います」

ボールに触らないでコントロール
「判断を早くする、プレーを早くするというのは、自分がこっちの方向に進みたいという時に、どれだけ手数をかけずにボールを持ち、向きたい方向に向かえるかです。まず『ボールを触りたい』というのは、子供の頃に身に付いてしまうものですけど、ボールを触らないでコントロールする方法というのも教えなければいけないんですよ。ボールのスピードを見て、真っすぐ来たボールを、股を通して振り向く、これは反転という運動にもなります。こういう事を細かく教えてあげると、子供にとってサッカーはもっと面白くなると思いますよ」

 自身がサッカー少年だった頃は、このようなことを「デモンストレーションして教えてもらえたことが良かった。指導者にとても恵まれた」とも話していた手倉森監督。足だけではなく、身体を上手く使いながらボールを受けるという身のこなしを、育成年代から身に付けることがサッカーの上達に繋がるのではないだろうか。

(9月15日公開の後篇につづく)
(前篇はこちら)


◆著者プロフィール◆長谷川望(はせがわ・のぞみ)
1987年生まれ。福島県出身。ロンドン五輪で女子レスリング金メダリスト伊調馨を取材。2020年東京五輪を見据え、サッカーを中心にスポーツの育成年代を精力的に取材している。フジテレビ『とくダネ!』、TBS元旦スポーツ祭り『2013年にかけるアスリートたち』、WOWOW『金曜カーソル』などテレビ番組でも活躍中。
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