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No Referee,No Football

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204cmオーロイ選手への警告、ミリガン選手のロングスローはファウルスローか
[J2第8節 千葉vsF東京]

 ジェフユナイテッド千葉オーロイ選手は、Jリーグ歴代最長身という204cmの高さを武器に開幕戦から2試合連続でゴールを決めるなど大活躍している。一方、24日のFC東京戦では前半9分に警告を受け、2試合連続でイエローカードをもらっている。

 ハイボールに対するポジション取りでオーロイ選手が腕を広げ、左ひじが森重真人選手の顔面に当たったことで中村太主審は警告。オーロイ選手も森重選手もジャンプせず、両者ともに立っている状態だったが、204cmのオーロイ選手が広げた腕は、180cmの森重選手の顔付近まで来た。オーロイ選手にひじで相手を傷つけるような意図はなかった。しかし、結果としてひじが相手の顔に当たれば、やはり警告の対象となる。

 選手の身長差によって審判の判断が変わることはない。背の高さに関係なく、ひじが相手選手の顔に当たるような無謀なプレーは警告の対象である。もちろん、ひじを振って相手を傷つけようとすれば、レッドカードが示される。

 オーロイ選手をはじめ、背の高い選手が背の低い選手とボールを競ると、その意図がなくても、普通に手を広げただけで相手を傷つけることがある。“自然な動き”であるのにファウルになったり、当たった部位によっては警告になったりする。いまいち納得ができないかもしれないが、結果的に相手を危険にさらすようなプレーは避けなければならない。相手を傷つけないようにプレーすることは選手としての義務でもあるし、それを怠ればファウルとなる。

 これはハイボールのときに限ったことではない。地上にあるボールを取るためには、相手を傷つけないようにタックルすることになる。普通のプレーの方法でも、結果的に相手の足を蹴って相手を倒してしまえばファウルになるし、もしそれが相手を傷つけることになれば、警告になることもある。

 この試合でオーロイ選手が決めた先制点は、左サイドのタッチラインから投げたマーク・ミリガン選手のロングスローを直接ヘディングで合わせたものだった。F東京のベンチは、ファウルスローではないかと副審に抗議していた。スタジアムやテレビで試合を見ていたファンの中にも、同じような疑問を持った人がいたかもしれない。

 ミリガン選手のロングスローには何の問題もなかった。以前、このコラムでファウルスローについて取り上げた際、お辞儀をするように頭を下げて投げるスローインはファウルスローだと述べたが、今回のケースといい、日本ではスローインに関して正しく理解されていないように思う。

 競技規則の第15条「スローイン」には、正しいスローインの仕方として「両足ともその一部をタッチライン上またはタッチラインの外のグラウンドにつける」と書かれている。かかとであっても、足の一部がライン上に触れていればファウルスローにはならない。

 ミリガン選手がボールを投げたとき、左足のつま先から半分ほどはタッチラインを越えていたが、かかと部分はライン上に100%残っていた。かかとが浮いてしまっていたらファウルスローになるが、しっかりとグラウンドについている。

 また、右足をタッチラインの手前でつま先立ちのような状態で投げているが、つま先だけでもグラウンドについていれば問題はない。もし右足が完全に浮いてしまっていたのならファウルスローだが、足の一部でもタッチライン上かタッチラインの外でグラウンドについていれば正しいスローインとなる。

 ミリガン選手は左足のかかと部分がタッチライン上でグラウンドについており、右足のつま先部分がタッチラインの外でグラウンドについていた。競技規則通りの正しいスローインだ。

 足がグラウンドについているかどうかは、手からボールを離した瞬間に判断されるもので、ボールを離したあとに足が完全に浮くのは問題ない。投げたあとの反動で足が浮くことはよくあるが、少年サッカーなどでは誤ってファウルスローとされていることが多い。これも競技規則が正しく理解されていないために起きている、誤った適用例と言える。

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