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ACL痛恨敗戦にも一条の光…初先発でサプライズ的活躍の浦和MFエカニット「個人的には満足できていない」

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MFエカニット・パンヤ

[11.8 ACLグループJ第4節 浦項 2-1 浦和 浦項]

 無念の逆転負けを喫した浦和レッズだが、ケガ人続出の苦しい状況に一条の光が差し込んだ。アウェーでの浦項戦、立ち上がりから勢いよく敵陣に攻め入る流れを作ったのは、この試合が浦和での公式戦初先発だったタイ代表MFエカニット・パンヤだ。

 4-2-3-1のトップ下に位置し、キックオフと同時にアグレッシブなハイプレスを披露。何度も高い位置でボールを奪うことに成功した浦和は、攻撃陣が次々とチャンスをつくり、相手守備陣を脅かした。

 エカニット自身も9分には自陣に下がっていたところから相手守備の裏を突く浮き球のパス。10分にはドリブルで持ち運んで巧みにターンから枠内シュート。浦和の最終ラインのクリアが曖昧になった場面ではしっかりとカバーに入り、ピンチの芽を摘んだ。

「いつスタメンと言われても準備はできているので驚きはなかった」。そう話す通りの生き生きとしたプレーぶりだった。

 最大の見せ場となったのは先制点をアシストした前半36分だ。荻原拓也がカットしたボールを小泉佳穂がつなぎ、左サイドへスルーパス。裏に抜けたエカニットが受け、冷静に中を見てパスを出すと、ホセ・カンテが強烈なシュートを打ち、これが決まった。

「(小泉)佳穂から良い縦パスが入ったときに、自分が相手の後ろのラインを抜ける動きをするようにという指示があった。顔を上げたらカンテが見えたのでその瞬間にパスを出した。決まって良かった」と振り返った。

 タイのムアントン・ユナイテッドから7月に期限付き移籍で浦和に加入したエカニットは、10月のハノイFC戦で途中出場して既に初ゴールを記録しているが、ACL優勝経験もある強豪の浦項を相手に見せた好プレーはサプライズ的でもあった。

 ただし、試合に負けてしまったため笑顔はなし。「個人的には満足できていない。まだまだいろいろなことができたと思うし、チームの力になりきれず、悔しい」と険しい表情を浮かべた。

 課題も浮き彫りになった。「フィジカルがみんなと比べて劣っている」と語るように、後半18分には足をつってその場に座り込んでしまった。治療のためにピッチ外に出ている間にVAR発動からPK、失点と状況がめまぐるしく変わったことも無念さを助長したようで、「今後は力をつけてフィジカルもつけて何分でもできるようなプレーをしていきたい」と厳しい口調で誓う。

 この日はタイ代表の発表もあり、久々に選出された。浦項に敗れて二重の歓びとはならなかったが、「今日の試合は負けたので悔しいが、後ろを向いても何も始まらない。J1リーグ、ACLに関わらず全試合にフォーカスして勝利を手にできるようにチーム全員で改善していきたい」とまずは浦和での活躍を期していた。

(取材・文 矢内由美子)
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矢内由美子
Text by 矢内由美子

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