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[選手権予選]0-0延長戦を「楽しむところ」と完封!鹿島入りの逸材CB植田が全国へ!

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[11.23 全国高校選手権熊本県大会決勝 ルーテル学院0-1大津 KKウイング]

 0-0で延長戦に持ち込まれた重圧のかかる展開を、注目DFは楽しんでいた。「苦しいとは思っていないです。(1点も取られてはいけないプレッシャー)そういうところがDFの楽しむところだと思っている」。その言葉通りに100分間全く動じずにライバル・ルーテル学院を完封。試合前にチームメートから腕に書き込まれていた「責任!」という文字を見ながら戦った大津のU-19日本代表CB植田直通主将(3年)は、試合終了の笛が鳴り響くと、雄叫びを上げながらその腕を突き上げて優勝を喜んだ。

 J10クラブの争奪戦の末に鹿島アントラーズ入りを決めた逸材DFだ。元テコンドー全国王者という異色の経歴を持つ植田は、チームメートが怯むような外国人の厳しい当たりも平然と対応。空中戦に絶対の自信を持ち、抜群のスピードも備えるCBは昨年のU-17W杯でブラジル、アルゼンチンなど世界の強豪と互角以上に渡り合ってチームを世界8強へ導き、自身の評価も高めた。

 高校生ながら1、2学年上の世代であるU-19代表にも選出されているDFは、この日も格の違いを見せつけるようなプレー。スペースへのボールに冷静に対応すると、空中戦ではことごとく相手のロングボールを跳ね返し、その打点の高いヘッドで何度もスタンドをどよめかせていた。

 世界での経験が本人の自覚を高め、チームをひとつ、ふたつ上のレベルへと引き上げている。どん欲に成長を目指し、無言でチームを引っ張る主将について平岡和徳監督は「彼が目指しているところが、ふつうの高校生では意識できないところ。経験まで含めてですけれど、そういう人間が近くにいるのといないのとでは与える影響力だったり、求める試合内容だったり当たり前のレベルがどんどん上がっていきますよね。彼が無言で引っ張っていくスタイルがあると思う。(彼自身)成長している理由は謙虚さだったり学ぶ向上心だったり、仲間を大事にするというところ。人間らしさがこのチームに大きなエネルギーをつくっているのかもしれない」と評価。練習参加したJクラブや年代別代表で得た経験をチームの全国進出に結びつけた。

 相手をシュート3本に抑えた試合でも満足しないことが彼のいいところ。「ひと安心しました。自分たちの目標が3冠(新人戦、総体、選手権)であとひとつ(決勝を)勝とうということが目標だった」と目標を達成したことについてホッとした表情も見せたが、自身のプレーについては「自分はまだフィードの部分にしても、ヘディングにしてもまだまだ高くできると思っている。もっともっと練習してレベルアップしていきたいです」と課題ばかりが口をついた。どんな時でもどん欲に上を目指す姿勢を変えるつもりはない。

 全国大会では日本一を勝ち取るために一戦一戦、自分のプレーを出しきることだけ。その中で楽しみにしていることもある。「U-17ワールドカップで一緒だった青森山田の室屋(成)とか、(野洲の望月)嶺臣とかと久しぶりに会って対戦してみたいです。(U-17代表の練習では何度も対峙しているが)練習ではなく、公式戦で。何もさせたくないです」。野洲と青森山田が初戦で戦うため、両者と対戦することはできないが、昨年世界舞台でともに戦った戦友と準決勝で相まみえる可能性がある。注目DFは今冬、優勝候補に挙げられているライバルたちもねじ伏せて、タイトルとともに「開幕スタメンを狙っている。安心して見てもらえるプレーをしていきたいです」という鹿島からプロの世界へ飛び込む。

(取材・文 吉田太郎)

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