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[クラブW杯]“大人”になった元浦和エメルソン「努力とリスペクトが重なると成功が生まれる」

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[12.16 クラブW杯決勝 コリンチャンス1-0チェルシー 横浜]

「みんなニホンジン?」

 コリンチャンスを世界一に導いた立役者の一人、FWエメルソンが取材エリアにやってきたのは、試合終了から2時間近くが経過したころ。ブラジルメディア、欧州メディアの大半が引き上げたあとだった。辛抱強く待ち続けた大勢の日本人メディアを前に、“エメ”は日本語でそう言い、ちゃめっけのある笑顔を浮かべた。

 世界一を決めた横浜のスタジアムは、奇しくも05年5月15日、浦和時代に戦った最後のリーグ戦(対横浜FM)が開催された場所だ。

 あれから7年半。驚異的なスピードと飽くなきシュート意欲を武器に、浦和時代にJ1で100試合71得点を挙げたエメルソンは「今日は難しい試合だった。相手は技術的に高く、タフなチームであり、戦術的にも強く、クオリティの高い選手がそろっていたから」と、厳しい試合を振り返った。

 前半はチェルシーにボールを支配される時間帯が多く、コリンチャンスに時折訪れるカウンターのチャンスも、ことごとくつぶされた。

 エメルソンにも何度かチャンスはあったが、前半22分には右サイドを抜け出したもののダビド・ルイスに追いつかれてボールを奪われ、同28分にはゴール正面でフリーで打ったシュートがバーの上を大きく超えた。

 だが、今のエメルソンは以前とは違う。チテ監督が「今回の勝利はチームワークがもたらしたもの。歯車がうまく動いて組織的にできた」と言うように、エメルソンも守備のタスクをこなしながら攻撃を挑み、ときにはカッカする相手を冷静にいなしながらファウルを誘うような老獪さも見せた。結果、1-0で勝利を収めた。

「僕が最初に日本に来たときはまだ若く、ここで多くのことを学んだ。今、自分の子どもの教育方法は日本で学んだやり方。僕は4か国で過ごしてきたが、日本が一番いいところだ」

 浦和時代の登録生年月日(81年9月6日)より3年早い78年9月6日生まれ(34歳)、国籍カタールで出場したエメルソン。「努力とリスペクトが重なると成功につながるのです」といういぶし銀の言葉を置き土産に、最後にもう一度日本語で「ありがとう、また来年!」と言い、手を振りながら消えていった。

(取材・文 矢内由美子)

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