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[選手権予選]全国総体後に3年生は3人残して引退も…秋田南が劇的勝利で決勝進出!:秋田

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[10.24 全国高校選手権秋田県予選準決勝 秋田南1-1(PK4-3)新屋 八橋陸上競技場]

 第92回全国高校サッカー選手権秋田県予選は24日、準決勝を行い、今夏の全国高校総体に出場した秋田南が1-1で突入したPK戦の末、新屋に4-3で勝利。全国選手権初出場に王手をかけた。
 
 全国総体後に3年生が右SB船木千裕ら3人を残して引退。全国総体先発メンバーで残ったのは2年生の司令塔・飯澤玲央を含めて3人だけと全く新しいチームとなった夏の王者だが、劣勢を劇的ゴールで跳ね返し、PK戦の末に決勝へ駒を進めた。就任1年目で全国選手権出場まであと1勝とした石崎庸介監督は「ビハインドの展開であっても、最後の笛がなるまでやるようにずっと言ってきましたし、ギリギリで追いついてPKで逆転勝ちというのはたくさんあった。相手の足が止まった中でも一生懸命走ってやってくれたのでとっても良かった」と選手たちに感謝していた。

 試合を支配していたのは長身の左利きアンカー、MF伊藤優主将(3年)と2シャドーに構えたMF伊藤翼とMF中村千裕(ともに3年)らポテンシャルの高い選手が並ぶ新屋だった。3分に左MF安田祥太(3年)が個人技で左サイドを破ってPAへ侵入すると、9分にはスルーパスで抜け出したMF目黒貴大(2年)がGKと1対1になり、16分には伊藤翼が胸トラップから左足シュートを放つなど秋田南ゴールへ襲いかかる。

 新屋は三浦昴久(3年)、伊藤直也(2年)のCBコンビも高さと強さがあり、秋田南はなかなかPAへ近づくことができない。秋田南が前半に放ったシュートはロングスローのこぼれ球に反応した飯澤が放った左足ミドルのみ。FW藤田裕宇やMF鎌田和之(ともに3年)がカウンターから持ち上がり、39分には藤田のスルーパスで左サイドを抜け出したMF早坂幹太(2年)が中央へ惜しいクロスを入れるシーンもあったが、劣勢のまま前半を終える。

 後半8分には新屋の右SB谷川和哉(3年)がフリーでPAへ飛び込み、9分にはゴール至近距離から三浦が決定的なヘッド、そして13分には左クロスから目黒が再び至近距離から決定的なヘッドと危険なシーンが続いたが、秋田南はGK佐々木瞭(2年)がビッグセーブを連発。加えて前線、中盤の選手が運動量多く、献身的に挟み込みを続けて無失点で試合を進めた。それでも13分だ。新屋は右CKがファーサイドに流れたところを拾った安田がクロスボールを放り込むと、ファーサイドの伊藤優が打点の高いヘディングシュート。これがGKの頭上を越えてゆっくりとゴールヘ吸い込まれた。

 攻め続けてようやく先制した新屋は、個でクロスやラストパスまで持ち込んでくる伊藤翼を中心にダメ押しゴールを狙ってくる。ただ、リードされても秋田南の集中力は非常に高く、決定的なボールを絶対に中央へ入れさせない。そして後半半ばを過ぎると、新屋の運動量が激減。秋田南は相手がやや大味なサッカーとなる中、飯澤とMF寺田広大(1年)のダブルボランチにボールを集め、繋いでPAへ迫る回数を増やしていった。新屋に傾いていた流れを徐々に引き寄せていった秋田南は試合終了間際の後半39分、左CKをファーサイドのCB高橋昌壱(2年)が頭で合わせる。これは相手DFの好守によってクリアされたが、直後の右CKで劇的なゴールが生まれた。

 寺田の右CKをファーサイドのCB木内駿佑(2年)が「ボールが上がった瞬間、『来た』と思った。あれでまだ続けられると思いました」と頭で合わせると、起死回生の一撃が逆サイドのゴールネットを揺らした。土壇場で決まった千金弾に大興奮の秋田南イレブン。指揮官が「ずっとCKの練習しかしてこなかった。日が落ちるのが早くて効果的なトレーニングがなかなかできないので、セットプレーの練習を必ず入れてきた」という練習の成果がチームを同点へ導いた。

 1-1で突入した延長戦で新屋はシュートゼロに終わり、好守から飯澤が惜しいシュートを放っていた秋田南が流れを維持したままPK戦を迎えた。ここで西目の2人目、谷川のシュートをGK佐々木が右へ跳んでストップ。そして4人連続成功した秋田南に対し、新屋は5人目・三浦のシュートが左ポストを叩き、熱戦にピリオドが打たれた。

 石崎監督が「インターハイからは明らかに別のチーム。1回やっているサッカーをリセットした」という秋田南は総体全国切符を掴んだ縦への速い攻撃から、現在の選手たちの特長を活かしたつなぐスタイルへ変化。そしてチームの強さである集中力の高さと、走力、あきらめない心が試合終盤に流れを掴ませて同点ゴールを生み、PK戦での勝利をもたらした。秋田商との決勝(26日)へ向けて石崎監督は「胸借りるくらいの気持ちで競りにいったり、戦ったりしてほしい」と期待。メンバーは夏からほぼ入れ替わったが、総体予選決勝で先輩たちが勝利したように、新生・秋田南は自分たちも優勝で続く。

(取材・文 吉田太郎)
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