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[選手権予選]「本来、秋商がいなければいけないところへ」名門・秋田商、延長戦制して全国王手!:秋田

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[10.24 全国高校選手権秋田県予選準決勝 西目2-3(延長)秋田商 八橋陸上競技場]

 第92回全国高校サッカー選手権秋田県予選は24日、準決勝を行い、全国大会出場39回の名門・秋田商と3連覇を目指した西目との一戦は延長戦の末、秋田商が3-2で競り勝った。秋田商は3年ぶりの優勝を懸けて26日の決勝で秋田南と対戦する。

 今春、9年間努めた部長から監督に就任した鎌田修明監督は「本来、秋商がいなければいけないところへ戻さなければいけない、という気持ちで今年監督に代わってやっている。いろいろなことを要求されるかと思いますが、秋商は全国に立ってスタートライン。自分はOBですし、何とかそこへ辿り着くために3月からやっている。それだけです」と静かに力を込めた。

 全国高校選手権優勝2回、準優勝1回。全国高校総体も制した実績を持つ東北を代表する伝統校だが、選手権も全国総体も過去2年は出場なし。プリンスリーグ東北からも降格して今年は秋田県1部リーグで戦ってきた。その名門を「いなければいけない場所=全国」へ戻すために取り組んできた新指揮官と選手たち。まず優勝を目標に掲げていた秋田県1部リーグを13勝1敗の成績で制した秋田商は今大会、全国復帰だけを考えて戦っている。

 その準決勝で迎えたライバル・西目との戦いは壮絶なものとなった。秋田商は2年時からエースナンバー「17」を背負い、「伝統の番号なので、このチームで一番頑張るのは自分という気持ちでやっています」というFW安田海斗主将(3年)を中心に、シャドー気味の位置から鋭い飛び出しを見せる1年生FW青山和樹と右MF荒木竜也(3年)、左MF小玉裕翔(2年)のトリオが技術と打開力を発揮。チャンスをつくり出すと21分、1年生MF山本隼の左FKを10番MF岩澤勇也(3年)が左足ダイレクトで合わせて先制する。

 その後も主導権を握っていたのは「今年は去年とか一昨年と比べて、パスを回せるチームだと思う」(安田)という秋田商。27分には荒木が個でDFを切り崩して左足シュートを放ち、37分には山本のループパスを受けた安田が切り返しから右足を振りぬくなどゴールヘ迫り続ける。ただ38分に左サイドの安田から右中間でフリーの荒木に決定的なラストパスが入るも、西目GK佐々木健弥(3年)のビッグセーブに阻まれると、後半16分には青山の決定的なシュートが再び佐々木健に止められ、こぼれ球を青山が狙った左足シュートもクロスバーを叩いてしまう。

 対人で強さを発揮する伊藤和樹(3年)と石川巧(1年)の両CBや左SB佐々木嵩(3年)の好守の前に決定機をつくることができなかった西目だが、後半半ばから反撃の勢いを増す。2列目に位置する左MF佐々木勇人(3年)、右MF高橋遼(2年)、そしてMF佐藤勇矢(2年)を軸にチャンスをつくると、25分にはPAでターンした10番MF三浦俊吾(2年)が左足シュート。29分にゴール正面から高橋が放った右足FKは枠を捉えられなかったが、31分だ。佐々木健のキックで抜け出した佐々木勇が左中間から左足一閃。これがゴール右隅に決まり、西目が同点に追いついた。

 細かい雨が降り出す中、延長戦へ突入した試合は、後半半ば頃から相手の逆を取るドリブルが冴え渡っていた秋田商・小玉が存在感を発揮。延長前半7分、その小玉が左サイドでDFをかわしてPAへ侵入すると、西目DFがファウルで止めてしまい、秋田商にPKが与えられる。これを安田が右足で決めて秋田商が勝ち越したが、意地を見せる西目は同10分に後方からのFKの競り合いでPKを奪い返し、佐々木勇の左足シュートで再び同点に追いついた。

 2度のリードを追いつかれた秋田商。それでも、1年生FWの決勝点によって西目の連覇をストップする。延長後半4分、小玉のスルーパスで左サイドを抜け出した佐々木のクロスを青山が頭でゴールヘ沈めて劇的な決勝点。鎌田監督は「(試合前)子どもたちには『頑張れ、ってことばで何を想像する?』という話をしました。日本人の『頑張れ』っていうのはその人の思いとか蓄積が出ると思う。3年生だったら3年分の頑張り、1、2年生だったら1年間、2年間、自分が挑戦してきたことが多分、自分の中でパッと出てくる。それをたくさん『オレはこれも頑張る、これも頑張る』って出てくるヤツがいろいろ挑戦してきて、いろいろなことに頑張ってきたヤツなんじゃないかなと。だから、きょうはとにかく『頑張れ』って言われた時に、後を考えないで思い描いたことをすべてやろうと伝えました」と振り返ったが、ひとりひとりの『頑張り』が結集して生まれた決勝点が粘りを見せる西目を最後の最後で振り切った。

 主将の安田は「自分が目立つとかじゃなくて、チームのためにどれだけ頑張るか。一人ひとり頑張りの意味が違う中で、その頑張りがチームとしてまとまれば勝利につながる。決勝もチーム全員で全力出して、走り勝って、気持ちも勝って、全員で戦って勝ちたい。前の監督の長谷川大先生に『最後の国立にオマエらが出ないといけない』と言われていますし、そういう思いがある。恩返しとして全国の舞台で自分たちがやっているところを見せたい」。全国復帰まであと1勝。東北屈指の伝統校が必ず「自分たちの場所」へ舞い戻る。

[写真]延長前半7分、勝ち越しPKを決めた秋田商FW安田主将(右)が渾身のガッツポーズ

(取材・文 吉田太郎)
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