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[選手権予選]夏冬連続日本一へ難関突破!インハイ全国決勝の再戦は市立船橋が制す!!:千葉

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[11.17 全国高校選手権千葉県予選決勝 市立船橋1-0流通経済大柏 ゼットエーオリプリスタジアム]

 第92回全国高校サッカー選手権千葉県予選は17日、市原市のゼットエーオリプリスタジアムで決勝を行い、今夏の全国高校総体優勝の市立船橋と同準優勝の流通経済大柏が激突。夏の日本一決定戦と同カードとなった一戦は、DF柴戸海(3年)の決勝ゴールによって市立船橋が1-0で勝ち、2年ぶり19回目の全国大会出場を決めた。全国大会の組み合わせ抽選会は18日に行われる。

 最大のライバル・流経大柏にこれで今季3戦全勝。高校年代最高峰のリーグ戦である高円宮杯プレミアリーグEASTでJクラブユース勢を抑えて首位を走り、“最強世代”とも評されていた流経大柏を三度打ち倒して市立船橋が頂点に立った。昨年の千葉県予選では準決勝で流経大柏にPK戦敗退。それだけに市立船橋の朝岡隆蔵監督は「去年悔しい思いをしたので、そこからこの新チームは動いてきて順調に1年間成長してくれた。内容だけじゃなくて結果も取れたのは凄く大きいし、今年前評判の高かった流経さんに3回勝てたというのは、ある意味、歴史も変えた。(市立船橋と流経大柏、八千代が3年ごとに優勝している)3年周期のジンクスということもチラホラ聞きましたけれど、そんなものも全部越えてくれた。感動しました」とライバルを打ち倒した選手たちを讃えていた。

 また京都サンガF.C.加入内定のFW石田雅俊(3年)は「最初インハイ予選(決勝で)やる時に3回やって3回勝とうと。その時、流経が前評判高くて、だからこそ『3回勝つ』とずっと言っていた。でも本当に達成できるとは思っていなかったです。(きょうは)相手を気持ちで上回った。個々のポテンシャルでは相手の方が上回ったかもしれないですけど、ウチは謙虚さだったり、真面目にやる姿勢は絶対にどこにも負けない。それは向こうよりは上だったと思う」と胸を張った。

 大一番へ向けて動きを見せたのは、今季ライバルに2戦2敗でもう負ける訳にはいかない流経大柏の方だった。試合が始まると、アルビレックス新潟内定のMF小泉慶(3年)が市船のエース・石田、U-18日本代表候補DF石田和希主将(3年)が司令塔のMF室伏航(3年)のマンマークにつく。本田裕一郎監督は「(決勝)前の3試合がダメだった。これで負けたなという試合が続いたので、今までと違ったこと(マンマークをつけた守備)へスパっと変えました。(市船との対戦成績が)1勝1敗だったら、(これまでのパススタイルを)やり通したと思うけれど2連敗していた。本当はやりたくないですけど。(内容的には)上出来だったと思います」と説明したが、本来のパススタイルを封印し、一発勝負の白星を自らに引き寄せるための策をとった。

 その中でやるべきことを徹底した流経大柏イレブンは期待に応えるパフォーマンスを見せる。相手のキープレーヤーに対して小泉がボールに触ることも許さないような激しいディフェンスを見せれば、石田主将も非常に気の利いた守りでチャンスに絡ませない。そして攻撃面ではU-18日本代表候補MF青木亮太(3年)がキレのあるドリブル突破を見せれば、13分、23分にはセットプレーからFW星野秀平(3年)がヘディングシュート。立ち上がりは雪辱に燃える流経大柏の気迫が市立船橋を上回っているように映った。

 ただ市立船橋は揺るがない。朝岡監督が「(マンマークに来たことで)これで難しいゲームになるなと思いました。1点ゲームになるなと思いましたし、石田があれだけ潰されちゃうと、ウチの良さは少し消えちゃう部分もありますし。でも逆に言えば、小泉クンが攻撃的に出てきたほうがウチは嫌だと思ったので、石田と相殺してゼロだな、10対10だなと思いました」と語った市立船橋は、相手の奇策に対して冷静に対処。立ち上がりこそやや押し込まれたが、FWジャーメイン良(3年)と星野目掛けて縦に速い攻撃を仕掛けてくる相手の攻撃を京都サンガF.C.内定の日本高校選抜DF磐瀬剛主将(3年)、柴戸、DF田代圭亮(3年)の3バックが跳ね返すと、MF成田悠冴(3年)らがセカンドボールをおさめ、攻撃面でも徐々に力を発揮していく。カウンター、サイド攻撃から右MF篠原良介と左MF山之内裕太(ともに3年)の両翼がスペースをつき、クロスまで持ち込んだ。21分にはタイミング良くボールを受けた石田のスルーパスから室伏が抜け出したほか、中央でのパスワークで相手DFを剥がすシーンも。前半、スコアは動かなかったが、互いが致命的なミスを犯さず、集中力の高いハイレベルな攻防戦を繰り広げた。

 0-0で折り返した後半、流経大柏は市立船橋FW横前裕大(3年)の飛び出しを封じるために本来CBのDF時田和輝(3年)を中盤に投入。より相手の良さを消しにかかった流経大柏は、攻めても後半5分にビッグチャンスを迎える。カウンターから右アーリークロスが逆サイドのジャーメインへ届く。一気にジャーメインがPAへ侵入したが、飛び出した市立船橋のU-18日本代表候補GK志村滉(2年)がビッグセーブ。流経大柏は11分にも右サイドから仕掛けた石田が左足シュートへ持ち込み、12分にも青木がドリブルでPAへ飛び込んだが、市立船橋は柴戸が好カバーでシュートを打たせない。市立船橋は成田やMF打越大樹(2年)が豊富な運動量で走り回って危険を回避すると、成田や室伏が逆を取る動きと正確なパスで相手の前線からプレッシャーを外してボールを前へ進めていく。そして獲得したセットプレーから流経大柏ゴールへ迫った。

 24分、流経大柏は緩急をつけたドリブルでDFをかわした青木が右足シュートを放ったが、これはGK正面。その直後、勝敗を分けるゴールが決まった。25分、市立船橋は石田が左CKを蹴りこむと、競り合いから浮いたボールを中央の田代が打点の高いヘッドで右前方へつなぐ。これをフリーでコントロールした柴戸が渾身の右足シュートでゴールへ叩き込んだ。全国へ大きく前進する一撃。「気持ちでしたね」と振り返った柴戸を先頭とした市船イレブンがスタンドへ駆け寄り、大興奮の控え部員たちの祝福にハイタッチで応えていた。

 ただ、心が折れた様子を全く見せない流経大柏は29分に青木、MF秋山陽介(3年)の仕掛けからジャーメインが決定的な左足シュートを放つ。だがこれはGK志村に抑えられ、全国総体得点王のMF立花歩夢(3年)投入後の31分には左CKをニアサイドで流し、中央のCB今津佑太(3年)が決定的な形で頭で合わせたが、シュートは枠の上へ外れた。流経大柏は終盤、ロングボールを次々とPAへ放り込んだが、市立船橋の青い壁を崩すことはできず試合終了の笛。青いユニフォームが拳を空へ突き上げ、歓喜の抱擁を繰り返した。
 
 市立船橋は現3年生が入学する前の年の10年度に流経大柏に4連敗を喫していた。磐瀬は「そこから市船よりも流経の方が強いということになっていたと思うので、変えられて良かった。自分たちの自信にもなります」とライバル対決を3連勝で終えたことを素直に喜んだ。全国大会での目標はもちろん、磐瀬が1年時にレギュラーとして経験した優勝だけだ。「日本一だけですね。目標は。全国出ても、優勝できなければ、負けと一緒なので、最後まで勝ち続けたいと思います」。夏の全国王者が県決勝で「最強」の証明。市立船橋が夏冬連続日本一、6度目の選手権制覇へ難関を突破した。

(取材・文 吉田太郎)
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