[自衛隊サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.27 全国自衛隊大会3位決定戦 空自3補 1-0 海自下総]

　思い切りの良さが、チームの武器になっていた。航空自衛隊入間基地第3補給処(空自3補)は丁寧なパスをつないでボールを支配する一方で序盤はなかなかシュートまで持ち込めなかったが、左MF七戸翔太郎(士長・関東一高出身)のカットインシュートで攻撃の口火を切った。「カットインは、チームの戦術の一つとして、常に意識している。10本中、1本入れば良いというぐらいの気持ちで思い切りやっている」(七戸)という積極性が、パスサッカーの中でアクセントとなっている。元々、関東一高ではタッチ数の少ないパスサッカーがチームカラーだったため、ドリブルシュートのイメージは持っていなかったという。しかし、スペインのアスレティック・ビルバオを理想とする選手兼任監督の熊谷哲平(2曹・大東文化大出身)から「お前は、ムニアインになれ」と映像を見ることを勧められ、チームの突破役としての役割を深めていった。

　七戸は、熊谷監督の期待に応える若手の一人だ。今年はチームの副キャプテンを任された。「若手が引っ張るようになって、チームを活性化させないといけない」と責任も感じている。この日は得点こそなかったものの、積極的なプレーで決勝弾となる先制点の起点になった。スコアレスで迎えた後半12分、中盤でFW真木基希(士長・米子北高出身)がこぼれ球を拾うと、七戸は、すかさず左サイドを駆け上がってパスを受けた。そのまま高速ドリブルで前方へ運ぶと、相手の視線が集中したところで逆サイドへ斜めのロングパス。パスを受けた熊谷がやや後方へ落とし、右DF春本充(3曹・狭山清陵高出身)のゴールへつながった。熊谷監督は「相手の海自下総は、真っ直ぐ入れたボールに対して跳ね返す力が強かった。だから、ハーフタイムに『後半は斜めのボールを入れていこう』と話した。得点の場面は、良いデザインだったと思うし、若い奴らがやるぞという気持ちを見せてくれていた。翔太郎には『ムニアインになれ、あいつは守備もやるぞ。そこがお前には足りない』と言っているが、2か月半の練習の中で成長してくれたと思う」と若手の活躍を称えた。

　空自3補の今年の成績は3位。来年の全国大会シード権は獲得したが、連覇は逃した。若い力の台頭が、2度目の戴冠への足掛かりとなる。七戸は「今日は、昨日(の準決勝)の悔しい気持ちをぶつけようと思った。応援してくれる人の期待に、何が何でも応えたいと思って臨んだ。連覇はできなかったけど、チームでやりたいサッカーは明確に見えてきている。次は必ず優勝したいと思う」と力強く再挑戦を誓った。

(取材・文　平野貴也=フリーライター)