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[全国自衛隊大会MOM]海自厚木マーカスFW坂倉光雄2曹_窮地を救った信頼の男

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[自衛隊サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.26 全国自衛隊大会準決勝 海自厚木マーカス2-2(PK5-4)海自下総]

 王者の窮地を救ったのは、主将の坂倉光雄(2曹・安房高出身)だった。海自下総との準決勝は2度リードされる苦しい展開になったが、坂倉の2発で追いついた。2年前に山崎裕貴監督が就任して以来、主将としてチームを束ねている。ボランチが本職だが、前線の選手が負傷や任務で離脱中のため、今大会ではユーティリティー性を評価されて1トップで起用されている。ゴール前でも落ち着きを失わないのは、強みだ。大会中に風邪を患い、コンディションは良くないが、山崎監督が最大の信頼を置く男は、それでもきっちりと役目を果たした。

 坂倉は「1点目は、川手(龍之介=士長・流通経済大出身)が右から高めのボールを入れてくれて、相手がかぶったところで合わせられた。ボールが良くて、決めるだけだった。2点目は、須田(浩章=3曹・神奈川大出身)の落としから。須田は教育隊に行っていて平日が参加できなかったので、週末まで勝ち進めて貴重な戦力が戻って来たのが良かった」と主将らしく、自身のゴールを喜ぶよりもチームメートを称えることを優先した。

 海自厚木マーカスは、世代交代が進みつつある。今大会では、前回大会のチームメート数名が、OBチームの海自厚木A.N.F.C.に移っており、ここ数年で新たに入部した選手の活躍が目立つようになっている。その中で、坂倉は「ベテランが抜けていく中で、自衛隊チームとして歴史のあるマーカスの立ち位置を伝えていかなければいけない。それがなくなってしまえば、ただのクラブになってしまう。全自(大会の通称)を通じて、伝えていくことができれば良い。若手で上手い選手が入って来ているので、しっかりと伝えることができれば、このチームはもっと強くなれる」とプライドを伝える責務を意識している。

 海自厚木マーカスとは、いかなるチームか。主戦場となる関東リーグ2部で、自衛隊チームの意地を見せることは重要だが、そもそも「自衛隊最強」の看板を背負い続ける宿命こそが、最大のアイデンティティーだ。王座奪還まであと一歩。歩みを止める気は、毛頭ない。全自出場11回目となった坂倉は「連戦で疲労が溜まってきていると思うけど、それは相手も一緒。上を目指すだけ。最後は、気持ち」と強い決意を示した。プライドを取り戻す戦い。その最前線に坂倉の背中がある。

(取材・文 平野貴也=フリーライター)

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