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[選手権予選]今年茨城2冠の水戸商、エース投入から怒涛の7発で健闘・東洋大牛久をねじ伏せる

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[10.29 全国高校選手権茨城県予選3回戦 水戸商高 7-0 東洋大牛久高 ツインフィールド]

 第93回全国高校サッカー選手権茨城県予選3回戦が29日に行われ、今年新人戦と関東大会予選2冠の水戸商高は、後半の7得点によって東洋大牛久高に7-0で快勝した。水戸商は11月2日の準々決勝で水戸桜ノ牧高と戦う。

 スコアは7-0だったものの、決して簡単な試合ではなかった。腰に不安を持つエースFW尾亦力哉(3年)がベンチスタートだった水戸商は、存在感放つ司令塔・MF矢幡拓也(3年)を軸としたポゼッション。ボールを握って左右から揺さぶりをかけるが、なかなか前線で起点をつくることができない。左SB宮嶋明仁主将(3年)や矢幡がミドルシュートを放ったが、CB松井一真(3年)中心に守る東洋大牛久から先制点を奪うことができない。逆に、開始4分にポストを叩くシュートを放たれると、東洋大牛久の司令塔・三塚祐希(2年)の絶妙な配球や、左サイドで抜群のドリブルスキルを発揮したSB田村慧(3年)の突破に苦戦を強いられた。CB鈴木蓮(3年)の好カバーや実力派GK永山道紀(3年)の好セーブなどで無得点に封じていたが、前半29分には自陣でインターセプトされてFW若槙亮介(2年)に決定的なシュートを放たれるなどピンチがあった。

 さらに後半立ち上がりは東洋大牛久がラッシュ。2分、三塚が中央からの華麗なドリブルで2、3人とかわし、独力でシュートまで持ち込む。立ち上がりのビッグプレーで勢いづいた東洋大牛久は、その後も立て続けにシュートシーンをつくり出すと、8分にはカウンターから左サイドを突いたMF米沢壮志(2年)のアーリークロスが逆サイドの田村へ届く。そして切り返しから決定的な左足を放ったが、ここは水戸商DFが必死のブロックで得点を許さない。

 流れの悪い時間帯が続いていた水戸商だったが、10分に尾亦と左MF岡野将也(2年)を同時投入すると、劇的に展開が変わる。11分、右中間からPAへ走りこんだ尾亦のクロスはクリアされたものの、こぼれ球に反応した尾亦が豪快な右足シュートを叩き込んでついに先制。すると、13分には右サイドを縦に突いた尾亦のラストパスをFW菊池優汰(3年)がスライディングシュートで押し込んで2-0とする。畳みかける水戸商は14分にも尾亦のスルーパスで抜け出した菊池が右足シュートを決めて3点目。尾亦投入からわずか4分間で3点をもぎ取ってしまった。

 1点奪われていればどう転んでいたか分からない展開だった試合は、あっという間に茨城を代表する名門校へと傾いた。水戸商は19分にもMF谷田部晶(1年)の右クロスをファーサイドで頭で合わせた菊池がハットトリックを達成。23分には中央から菊池、尾亦とつなぐと、尾亦のラストパスでDFと入れ替わるように抜け出したMF奥山航(3年)が右足シュートを決めた。そして28分には右サイドから尾亦がPAへ切れ込むと、これをサポートした奥山が右足シュートを決めて6点目。直後には左サイドを縦に仕掛けた尾亦が深い切り返しでDFを外して右足シュートを畳み込む。菊池は「前半凄いディフェンスが耐えてくれた。ボール回して相手を疲れさせて、後半選手交代で一気に前へという自分たちのプランがあって、そこが上手くハマったと言う感じです」。耐えたディフェンス陣と当たった戦略、そして「空気が変わったのは、アイツが何か持っていると思う」と佐藤誠一郎監督が讃えたエース尾亦の存在。後半、2冠獲得の実力を十分に示した水戸商が健闘・東洋大牛久をねじ伏せた。

 課題もある。後半10分過ぎからの大量7ゴールによって快勝したものの、佐藤監督は「シンプルにショートカウンターじゃないけれど、その中で点数を獲れるのは自分たちの形なのでそれは良かったです。揃えば自分たちのサッカーになるんだなと思いましたけれど、最初のメンバーでも行きたかった」と前半から得点を重ねられなかった点を指摘した。水戸桜ノ牧との準々決勝ではゴール前の崩しなどより向上させなければならない。ただ、2冠獲得後の総体予選準々決勝で鹿島学園高に敗れている選手たちに油断はない。尾亦は「新人戦、関東ってチャンピオン取ってきたのに、インターハイでベスト8で負けてしまった。選手権ではチャレンジする心を持って取り組んでいる。インターハイでは慢心があったと思ったので、選手権ではチャレンジする気持ちが強い」と説明し、菊池は「自分たちの持ち味であるランニングから1.5列目を使ったり、サイドを使ったりというショートからワイドへの攻撃。ランニングを活かして貪欲にゴールを狙っていく。(今年は)5冠目指してやってきたけれど、インターハイで全国を逃して、目標は選手権全国に切り替わっている。何としても全国行きたいです」。優勝争いの本命と目されながらも苦杯を喫した夏の悔しさは、優勝して必ず晴らす。

[写真]後半11分、水戸商は尾亦が先制の右足シュートを叩き込む

(取材・文 吉田太郎)
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