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[選手権]日大藤沢高FW田場ディエゴは指揮官へ「見捨てないでくれてありがとう」

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[1.10 全国高校選手権準決勝 日大藤沢高 0-3 星稜高 埼スタ]

 準決勝で敗れた日大藤沢高の佐藤輝勝監督は試合後、FW田場ディエゴ(3年)の顔を見ると、「もう一度あいつのプレーをここで見たい」と強く思ったという。これまで「やさしい言葉をひとつもかけたことがない」という指揮官だったが「あいつは大学やプロなど、こういう大きな舞台でできる可能性も持っている選手。また埼玉スタジアムのようなところでプレーしている姿をみせてほしい」と微笑んだ。

 今大会3得点の活躍でチームを牽引してきた田場だが、この日は不発。キャプテンマークを巻き、3本のシュートを放ったがゴールネットを揺らすことはできなかった。試合後、田場は「悔しい。悔しい……悔しいっす」とつぶやいた。

「今大会は結果だけを見ると、出来ているようにみえるが、これで満足してはいけない。もっと向上心をもってやっていきたい」と大会を振り返り、「(全国でも)思った以上にできるんだと感じたが、『できるんだ』じゃなく、『もっとできないといけないんだ』と思った」と語った。

 かつては精神的に未熟な部分があったが、それを鍛え直したのが佐藤監督だった。夏には約1か月もノートでやり取りをし、メンタル面を強化した。さらにチームで“強化期間”として設けた真夏の6日間。走力を上げるための厳しいトレーニングを繰り返すなか、田場だけは昼夜の休み時間もつかって“特別メニュー”に取り組んだ。指揮官への反発を抱えながらも、がむしゃらに練習メニューを消化した。

 このトレーニングの甲斐もあり、徐々に頭角を現した田場だったが、選手権・神奈川県予選では1試合も先発せず。指揮官はその経緯について「県予選でも『良くなってきたな』と声をかけたくなったけど、それをぐっと我慢して。県予選でも一度も先発させなかったことが、12月の全国大会で爆発したことにつながるかなと改めて思う」と明かす。

「選手には厳しさと優しさの幅を持ってぶつかっていってあげないと。ダメなものはダメで、途中で『いいよ』なんて言ってしまったら、伸び率がなくなる。まだできるなら要求してあげないと。本当にこぼれ落ちそうな最後のときだけ、手を差し伸べてあげればいいんじゃないかなと改めて感じた」

 そして、全国大会で“覚醒”したストライカーは、3得点を挙げる活躍で今大会の主役の一人となった。惜しくも決勝進出を逃した田場だったが試合後、指揮官へ伝えたいことはと問われると「見捨てないでくれてありがとう。と言いたいです」と恥ずかしそうに話していた。今後も大学でサッカーへ取り組む日大藤沢育ちのストライカー。再び埼玉スタジアムのピッチでプレーするときが来たら……指揮官は「チケットの1枚でも俺にくれよ」と心待ちにしている。

(取材・文 片岡涼)
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