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[新人戦]広島、中国のライバルたちが強さ認める瀬戸内、FW伊能の劇的V弾でファイナルへ:中国

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[3.20 中国高校新人大会準決勝 瀬戸内高 1-0 広島観音高 呉総合スポーツセンター陸上競技場]

 第8回中国高校サッカー新人大会は20日午後、準決勝を行い、瀬戸内高広島観音高との広島県勢対決は試合終了間際に交代出場FW伊能玲生(2年)が決めた決勝点によって1-0で瀬戸内が勝った。瀬戸内は21日の決勝で広島皆実高と戦う。

 今回の中国新人戦で各強豪校の指導者や選手が「強い」と口を揃え、その名を挙げていたチームが瀬戸内だ。瀬戸内は10年から総体広島県予選4連覇。また13年にはプリンスリーグ中国を制しているが、激戦区・広島を突破して選手権出場を果たしたことはまだ一度もない。だが、今年はサンフレッチェ広島ジュニアユース出身組のCB梁賢虎(2年)やMF中間俊亘(2年)、またエースFW安部裕葵(2年)やMF浅野嵩人(2年)ら関東からの進学組も集まってレベルを向上させてきた期待の世代。「今年の子はボールを持てる子が多い。動きを使いながら剥がしていく」(安藤正晴監督)というチームは後方からボールを繋いで、サイドの突破力や前線の連動性を活かしてゴールを連発するなど、ライバルたちから警戒される存在となっている。

 だが、午前中の準々決勝に続き、1日2試合目となった準決勝の前半は動きが明らかに重く、安部を負傷で欠くチームは広島観音に押し込まれてしまう。広島観音は159cmの小さなドリブラー、左MF吉形淳之介(2年)と狭いエリアでも巧みにボールを運ぶ10番MF森重輝(2年)、得点力も光るFW神車凱海(2年)の2列目やMF永江優介主将(2年)、MF和泉亘(2年)のダブルボランチが前向きにボールを受けると、その仕掛けで局面を破って押し込み、チャンスをつくり出していった。1分にSB玉井玲央(2年)の左クロスがFW沼田和真(2年)へ決定的な形で通ると、5分には右CKからCB松長潤(2年)がクロスバー直撃のヘディングシュート。13分には左サイドのゴールライン手前でボールを奪い返した神車が切り返しでDFを外して右足シュートを打ち込む。

 瀬戸内も中間や浅野がボールを運び、またロングボールからスピードのある前線を活かそうとするが、押し込まれてしまった分ゴールまでが遠く、逆に間延びした中盤を活用されるなど、なかなかチャンスを作り出すことができない。34分には左中間を崩してMF岡田誉(2年)にいい形でボールが入ったが、DF2人がかりで止めに来た広島観音にシュートをブロックされてしまった。

 それでも後半は瀬戸内が立て直す。安藤監督が「(ハーフタイムに)走れ、と言ったんですよ。走りこむことで動かせば、厚みのある攻撃ができると言って、ちょっとワイドが高い位置に潜り込めるようになった」と説明したように、運動量を増やした瀬戸内は特に左サイドの岡田がターンを交えて繰り返し仕掛けてサイドに穴を開けていく。また、中央でボールを受ける回数を増やした浅野の存在感が増し、押し込んだ中でサポートする選手が攻撃にいい形で絡むなど、終盤は狙いとする攻撃で広島観音ゴールを脅かした。

 広島観音もサイドまではボールを運ぶものの、内田仁監督が「サイドの選手がもっと切れ込んで短いクロスを出して欲しいけれど、長いクロスになってしまってシュートまで行けなかった」と振り返ったように、クロスを梁やCB滝沢康平(2年)に跳ね返されて得点に結びつけることができない。一方の瀬戸内も最後の局面での精度を欠いてしまっていた。

 決勝点が生まれたのは後半アディショナルタイム突入から4分後の39分だった。左サイドから攻めた瀬戸内は、岡田からのパスをエンドライン付近で受けた浅野が巧みにDFを外してラストパス。右サイドから走りこんでいた伊能が右足で合わせると、シュートはGKの右側を抜けて劇的な決勝点となった。「最近決め出した感じです。(下のカテゴリーである)アドバンスリーグでやっていて、その遠征で決めて正月過ぎくらいからトップに加わるようになった」という伊能は殊勲のゴールについて「その前のプレーまで自分は全然何もやっていなかったんですけど、最後の最後にクロスが自分の下にこぼれてきて決めようという気持ちで行きました。途中出場だったので流れを変えたいと思っていましたし、とても嬉しかった」と喜んだ。

 瀬戸内にとって、内容は決して満足のいくものではなかった。浅野は「押し上げが遅かったのがあって単発になって、受けたサイドで攻撃することしかできなかった。厚みを加えるために全体で押し上げないといけない」と反省したが、県内の強敵からの1勝はチームにとっても大きい。安藤監督は「(県内でも)8でずっと止まっていたから、新人戦ベスト4に入って、きょうも結果が出て自信になったと思う。観音にも3年ぶりくらいに勝ったんじゃないですか。こういうところを自信にして。粘って粘って最後結果が出たので最後(のミーティング)はちょっと褒めて終わろうと思います」

 中国大会優勝に王手を懸けた瀬戸内。ライバルたちから注目される中で結果を残し続けることができるか。中間は「いい意味で意識されているのでボクらが受け身にならずに、襲い掛かってくる相手に対して、プレッシャーに着ているところを剥がして常にやっていくかが課題です」と語り、浅野は「周りからそういう風に見られている分、プレッシャーに感じる選手もいるんじゃないかと思う。だからといって引くんじゃくてチャレンジャーとしてやっていきたい」。まずは目の前の中国新人大会タイトル。プレッシャーを乗り越えて、決勝を制す。

[写真]後半アディショナルタイム、瀬戸内はFW伊能が決勝点

(取材・文 吉田太郎)

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