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[総体]我慢強く、粘り強く。昨年8強の“山陰の雄”米子北が横浜創英をPK戦で撃破

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[7.28 全国高校総体2回戦 横浜創英高 1-1(PK4-5)米子北高 広島広域公園第一球技場]

 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(男子)は28日、広島県内で2回戦を行った。昨年8強の米子北高(鳥取)と横浜創英高(神奈川1)との一戦は1-1で突入したPK戦の末、5-4で米子北が勝利。米子北は29日の3回戦で星稜高(石川)と戦う。

 3回戦への切符を懸けたPK戦は互いに譲らず、4-4で5人目へ。先攻・横浜創英は最前線まで飛び出してボールを追うなど攻守において奮闘光ったMF住田智樹(3年)が右隅を狙ったが、これを米子北GK中原創太(3年)が読み切ってストップする。そして選手権直後の手術から復活したFW崎山誉斗(3年)が右足でゴール右隅を射抜くと、白と紺のユニフォームが歓喜に舞った。

 米子北は09年の全国高校総体で鳥取県勢として初となる準優勝。翌10年や昨年も8強入りしている山陰の雄だ。昨年はプリンスリーグ中国で初優勝し、今年も首位で激戦区の前半戦を終えている。DFライン総入れ替えとなった今年は当初安定感を欠き、城市徳之総監督が「春はどうなることかと思いました」というほど。実際に今年のプリンスリーグの失点数はリーグで5番目に多い。それでも、経験を重ねながら徐々に身につきつつある伝統の力。「ウチのチームは力がないということで我慢させている」(城市総監督)という米子北は試合会場でもよく徹底されていた挨拶、そして学校生活、練習から日々当たり前のことをしっかりとやりぬくことで磨いてきた我慢強さ、粘り強さでこの日は神奈川王者を撃破した。

 前半は横浜創英のペース。10m、20mのショートパスを徹底して繋ぐトレーニングをしている神奈川の新鋭が、主導権を握って攻め続ける。献身的なプレスバック含めて攻守で存在感のあったMF稲積真樹(3年)やMF中山陸(3年)、注目CB市原亮太主将(3年)を中心に正確にボールを動かして米子北に圧力をかけていく。そして市原の決定的なヘディングシュートなどでゴールを襲った横浜創英は28分、ゴール正面右寄りの位置でFKを獲得し、左SB福田崚太(3年)が右足シュート。壁に当たった跳ね返りを福田が右足で撃ち抜くと、DFの間を抜けた一撃はGKの手を弾いてゴールへ突き刺さった。

 1-0で前半を終えた横浜創英の宮澤崇史監督は「前半は主導権を握っていたので、『1本のロングパスに気をつけて前半通りにやれ』と」選手に伝えたという。だが、指揮官ももっと厳しく徹底するべきだったと反省していたように、後半3分に主軸FW崎山を投入して4-3-3から4-4-2へスイッチした米子北のプレスを前半に比べていなせなくなり、相手2トップのパワー、スピードの前に反撃を許してしまう。

 7分、MF木澤海智(2年)とのコンビネーションからMF栗原迅平(3年)の放った右足シュートが枠左へ僅かに外れると、逆に前半に比べて増えだしたスペースを米子北に突かれてしまった。正確なパスを配球する10番MF山室昂輝(3年)と豊富な運動量でチームを牽引するMF田中宏旺(3年)が良い流れをもたらし、左MF小橋亮介(3年)の縦突破などからチャンスをつくった米子北は15分、崎山が右中間のスペースへパス。これに走りこんだFW伊藤龍生(3年)がDFのタイミングを外してから右足シュートを放つ。強烈な一撃はファーサイドのポストを叩いてからゴールネットに吸い込まれた。

 前半を我慢した米子北がもぎ取った同点ゴール。逆転するまでには至らなかったものの、持ち味を発揮した米子北が3回戦進出を決めた。中原は「歴代の先輩に比べたら堅守はできていない」と語り、伊藤も「今年は粘り強さは全然ないチームというのは分かっているんですけど、その粘り強さは米子北高校はやらないといけないもの。だけど、先輩たちに比べたらまだまだない」と厳しい。試合後には田中から「きょうの試合じゃダメだ」という声も飛んでいた。「今年は個性が強い」(城市総監督)集団だが、自分たちを戒めながら少しでも伝統の強さを身につけようとしているイレブン。14年度選手権優勝校の星稜との注目対決も粘り強く、我慢強く突破する。

[写真]PK戦の末、16強入りを決めた米子北。(写真協力=高校サッカー年鑑)

(取材・文 吉田太郎)
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